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蜘蛛ですが、なにか? 作者:馬場翁
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24 弱い

 はー。
 ゲジ怖い。
 マジで何なのあれ?
 数の暴力の恐ろしさを身に染みて感じたわー。
 あー、疲れた。
 瞬発力を表す黄色ゲージがつきても走り続けたせいか、足がガクガクする。
 今日のところはもう休もう。

 もう一度背後を振り返って、ゲジ軍団が追ってきていないか確認する。
 よし、いないな。
 糸を張り巡らせて、簡易ホームを作成する。
 網の防壁ができて安心した瞬間、体の力が抜けてヘタっとへたれた。

 あー、これは軽くトラウマもんですわ。
 いくら1匹1匹が弱くても、あんだけの数がいたらそりゃ脅威ですわ。
 あんな数のゲジに波状攻撃されたら、為す術もない。
 しかもあいつらは麻痺持ち。
 一回噛まれたら、麻痺の餌食になるだろうね。
 あとはズルズルと全身を噛み砕かれるのをただ待つだけ。
 考えるだけで恐ろしい。

 もうちょっとあのエリアにゲジがいっぱいいる理由を考えておくべきだった。
 いや、むしろゲジがいっぱいいた理由よりも、他の魔物がいなかった理由を考えたほうが良かったかな?
 なんせゲジは単体だと弱い。
 こんな美味しい餌がいるのに、他の捕食者である魔物がいなかったのは、今考えるとおかしいよね。
 麻痺があって食べるのをためらってた、って言う理由も考えられなくはないけど、毒持ちが溢れてるこのダンジョンで、それは理由としては薄い気がする。

 他の魔物は、ゲジが群れているのを知ってたか、知らずに踏み込んで餌食になったか、そのどっちかなんだろうね。
 私のスピードでギリギリ逃げられるってレベルだから、他の魔物じゃ、逃げ切るのも難しそうだし。
 逃げようにも追いつかれて噛み付かれて、麻痺したところに大量のゲジがまとわりついて…。
 恐ろしや恐ろしや。

 弱い魔物も、弱いなりに対策を持ってるってことだね。
 私も純粋な戦闘能力だけ見たら弱いけど、巣を作って罠張れば格上の魔物にすら勝てるし。
 弱いからって油断はしちゃいけないってことだね。
 今回のことはその勉強になったと思っておこう。
 なんだかんだこうして無事に生き残ることもできたし、ゲジ相手においしい思いをしたのも事実だしね。
 おかげで大分楽にレベルとか稼ぐことができた。

 あ、それで思い出した。
 そういえばゲジ軍団を一気に鑑定したせいで、鑑定のレベルが上がってた。
 怪我の功名っていうのかな?
 とりあえず、常時開示してある自分の鑑定結果を改めて見直してみる。
 ゲジに追われてた時はそんなの確認してる暇なかったしね。

『スモールレッサータラテクト LV7 名前 なし
 ステータス 弱い               』

 なんだ「ステータス 弱い」って!?
 大雑把過ぎるでしょう!
 しかも、弱いって、いや、知ってたけどさー。
 もうちょっとオブラートに包むことはできんのかって話よ。
 弱いって鑑定結果が出るってことは、世界基準で見て私が弱いって証明されたってことじゃないですかー。
 はー。
 萎えるわー。

 いや、さっき弱い相手でも油断できないって思ったばっかじゃないか。
 私にはこの糸がある。
 本体が弱かろうと、この糸がある限り私に敗北の二文字はないこともなかったりあったり。
 実際、総合的に見て私って弱いとは言えないんじゃないかな?
 かなり偏りがあるけど、ハマれば強いタイプってところかな?
 蜘蛛糸によるトラップ、奇襲による先手必勝、そんでもって動けなくなったところへの毒牙。
 うん。
 我ながらかなりえげつない。
 これが真正面から正々堂々ってなると、一気に弱体化するんだからおもしろい。

 要は、どれだけ自分のフィールドで戦えるかってことよね。
 相手にペースを握らせないで、自分の強みだけを押し付ける。
 まあ、それがいつでもできれば苦労はないんだけどねー。
 はー、疲れたし寝よ。





 目が覚めた。
 まだ疲れが抜け切ったわけじゃない。
 それなのにふと目が覚めた。
 なんだろう、この感覚?
 よくわかんないけど、やばい予感がする。

 急いで起き上がって、簡易ホームにさらに糸を追加していく。
 そこで、やばい予感の正体に気づいた。

『エルローバラドラード LV9 ステータスの鑑定に失敗しました』

 でかい蛇だ。
 胴体の太さは人を丸呑みに出来そうだし、長さも10メートル以上ありそうだ。
 見るからに強い。
 しかも、LV9。
 初めて自分よりレベルが高い魔物に遭遇した。
 今まで魔物のレベルは高くても4が最高だった。
 それが、一気に跳ね上がって9。

 種族的にも明らかに格上。
 レベル的にも向こうの方が上。
 まともにやりあったら勝ち目はない。
 内心冷や汗が止まらない。

 蛇に睨まれた蛙、じゃなくて蜘蛛。
 私は緊張で硬くなった体を、なんとか動かす。
 ジリジリと後退して蛇から距離を取る。

 蛇はそれを許さなかった。

 網が間にあるのもお構いなしに突っ込んでくる!
 当然その体は網に引っかかる。
 けど、蛇はのたうち回って強引に糸を引きちぎる!
 私は反転して脱兎のごとく逃げる。
 網の脱出口から簡易ホームの外側に逃げるのと、蛇が一つ目の網を突破して、今しがた私が抜けた網に突撃するのはほぼ同時だった。

 本能が逃げろと警告する。
 けど、私は逃げなかった。
 私は見た。
 蛇は網に絡まっている。
 糸を引きちぎることはできるけど、完全にそれを取り除くことは出来ていなかった。
 今、蛇の体にはいまだ健在な網と、強引に突破して体に引っ付いてしまった網とが、複雑に絡み合っている。

 いける!
 これこそが私のフィールド。

 私はのたうち回る蛇の体に取り付く。
 すぐさま噛み付くと同時に、お尻から追加の糸を吐き出し続ける。
 硬い鱗をなんとか突破して、その体に毒牙を打ち込む!

 蛇は毒を打ち込まれる苦しさに動きを激しくする。
 糸に拘束されてなおも激しく暴れまわる。
 私の体も何度も地面や壁に叩きつけられるけど、気合と根性でしがみつく!

 黄色のスタミナゲージが減っていく。
 体が打ち付けられるたびに緑の体力ゲージも減っていく。
 それに加え、糸を出すたびに赤の総スタミナゲージも減っていく。
 赤のゲージが尽きたら多分もう糸を出すことはできない。
 そうなったら拘束を引きちぎられるのは時間の問題。
 その前にこの蛇を倒さないとならない。

 私は無心で噛み付き続け、糸を吐き出し続けた。
 徐々に蛇の抵抗が弱々しくなっていく。
 黄色ゲージがとっくになくなり、赤ゲージが残り1割を切った頃、蛇はついに動かなくなった。

 弱いからって、油断するからこうなるんだよ!
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