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蜘蛛ですが、なにか? 作者:馬場翁
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エルフの里③

 案内されたのは大きな食堂のようになっている木の家だった。

「ここは見た通り食堂ね。基本朝昼夜と3食ここでみんなで食べるの」

 へえ、と食堂の中を見回す。
 なんだか中学校の時に行った林間学校なんかを思い出す。

 食堂の奥、厨房部分では、4人の元生徒だと思われる少年少女が料理をしていた。
 その手が俺たちの姿を見て止まる。

「工藤さん、誰?」

 怪訝な声を出す少年。
 まあ、俺とカティアは武装しているし、いきなり見知らぬ人間が現れたら警戒するよな。

「山田俊輔だ」
「大島叶多」

 なので、手っ取り早く名前を言う。
 それで通じるはずだ。

「え!?俊に、叶多!?」

 少年の声に、他の3人も視線を俺たちに向ける。
 特にカティアの方に。

「なあ、もしかしなくても性別変わってるのって俺だけ?」
「そうね。ここにいる中で性別が変わった子はいないわね」

 工藤さんの言葉に愕然とするカティア。
 まあ、その、なんだ。
 頑張れ。

「おいおい。超久しぶりじゃん!」

 初めに声をかけてきた少年がかぶっていた帽子を取りながら近づいて来る。
 姿形は変わっているが、その笑顔に既視感を覚える。

「オギか?」
「おう。よくわかったな」
「そんな暑苦しい笑顔するやつはお前くらいしかいないだろ」

 軽く笑い合う。
 荻原健一(オギワラ ケンイチ)
 元サッカー部所属の友人だ。
 ちなみに、下の方の名前ではなく、苗字をもじってオギと呼ぶのには、ユーゴーの前世である夏目健吾と呼び方がかぶるからだという理由がある。

「しかし、オギが料理係なのか?お前ならもっと外の体力が要る作業のほうが性にあってそうだけどな」
「あー。それな」

 サッカー部に所属していたオギは運動神経が良かった。
 だったら外の農作業などの方が向いているのではないかと思ったんだが。

「最初の方はローテイションで担当を変えてたんだけど、そのうち得意不得意がわかってきたから担当を固定したのよ。オギ君はなんでも器用にこなせてたんだけど、人数の少なかった料理当番に回ってもらったわけ」
「いや、俺もこっちの世界で初めて料理なんかしたんだけど、己の才能にびっくりだよ」

 ドヤ顔で胸をそらすオギ。
 そこに、調子に乗るなと工藤さんの突っ込みが入る。

「実際、この人数の料理を作るとなると結構な重労働だから、体力のあるオギ君には助かってる」
「味の方はそこそこ止まりだけどな」

 照れながら謙遜するオギ。
 作業があるということで、オギは厨房に戻っていった。

 俺たちは改めて席に座り、お互いに情報交換を行った。
 俺たちの方からはユーゴーが攻め込んでくること。
 その背景。
 そして、世界の情勢なんかだ。

 工藤さんからはここでの生活を教えてもらった。
 ここにいる転生者は14人。
 昔先生に聞いた話だと、12人だったから2人増えている。
 全員の名前も教えてもらった。

 ここでの生活はさっき工藤さんが言っていたように、自給自足の生活らしい。
 自分たちで育てた野菜や家畜を食べ、どうしても調達できないようなものはエルフに貰う。
 日用品も出来る限り自分たちで都合しなければならず、エルフが与えてくれるものは本当に自分たちではどうしようもないものばかりだという。

「ここにある机とか椅子も自分たちの手で作ったからね」

 工藤さんの言葉に思わず自分の座る椅子を見てしまった。
 木を切って作られた簡素な椅子だ。

 また、工藤さんは自分たちがエルフの里で暮らすようになった経緯も教えてくれた。
 工藤さんはまだ言葉もろくに話せないような幼い頃にこの里に連れてこられたそうだ。
 その際、親は泣きながら工藤さんを手放したという。
 工藤さんは、自分は金で買われたんだろうと言っていた。

「私の生まれた家はものすごく貧乏なようだったからね。話せはしなかったけど、会話の内容は理解できたわ。普通に奴隷で売られるよりもだいぶ高いお金で売れたそうよ」

 自嘲気味に苦笑する工藤さん。
 他のみんなも似たり寄ったりだそうだが、中には冒険者として暮らそうとしたところで、ほぼ拉致されるようにここに連れてこられたやつもいるらしい。
 ほとんどは幼い時に。

 赤ん坊とほぼ変わらないような幼い時は流石にエルフも世話を焼いてくれたそうだ。
 その後1人でも働けるくらいになると、エルフの補助付きで畑や家畜の世話などをさせられるようになり、大きくなるとエルフの補助はなくなった。

 最初の頃は困難ばかりだったそうだ。
 幼い体では畑作業も牧畜も重労働。
 毎日それだけで精一杯だった。
 余裕が出来てきたのはつい最近だという。
 体も大人と変わらないくらいに成長し、ある程度のノウハウも身につけ、作業が効率的になった。
 そのおかげで、少しだけ余裕が生まれたという。

「その空いた時間で何をするかが問題なんだけどね」
「どういうこと?」
「エルフは私たちにスキルを身につけて欲しくないようなの。そのための監視とこの暮らしでしょうね」

 生きるのに精一杯だったせいもあって、ここにいる転生者はあまりスキルが伸びていない。
 2人を除いて。

 後からここに連れてこられた2人は冒険者として生活していたようだ。
 各地を転々としていたおかげでエルフに捕まるのが遅れたのではないかと言われている。
 その2人は冒険者をしていたこともあり、スキルが高い。

「私たちには選択肢がある。エルフの目を盗んでスキルを鍛える道。今まで通りこの鳥籠で過ごす道」

 どっちにせよ、まだ考える時間が欲しい。
 けれど、ユーゴーが近々攻めて来るかもしれない。
 その情報に、工藤さんは頭を抱えた。

 その後、俺たちは転生者のみんなと食事を共にした。
 久々の再会に話が弾んだ。
 ほぼ1日食堂の中で代わる代わる再会を祝して話し込んだ。

 けど、その中に京也の姿はなかった。
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