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蜘蛛ですが、なにか? 作者:馬場翁
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186 アラクネ

 進化が完了した。
 残念ながら進化による追加スキルはなかった。
 それに、クイーンを統合したおかげでかなりスキルは高レベルになっていたので、今までに比べるとスキルのレベルアップも少なかった気がする。
 まあ、これは仕方がない。
 カンストしちゃったスキルも多いし、スキルに関してはもう詰めの段階に入っているしね。

 で、今回の進化は今までで1番姿形が変わった。
 まず、体が一回り大きくなった。
 アークに襲われた時に見た成体のタラテクトに比べるとまだ小さいけど、今までのコンパクトサイズよりかは大きくなってる。

 けど、そんな変化はぶっちゃけどうでもいい。
 1番の変化は、やっぱり頭の上に生えた部分だろう。
 人の上半身がそこには生えていた。

 意識が2つあるような妙な感覚。
 並列意思とはまた似てるようで違う。
 2つの脳みそで同時に物事を考えているかのような、というか、多分そうなんだろうね。

 視界が2つ存在した。
 1つは今までと同じ、体が大きくなった影響で少しだけ高くなった、視界だ。
 もう1つは、それよりも高い位置の視界だ。

 キョロキョロとその視界から周りを見回す。
 すごい。
 今まで首と銅が繋がってたから、周りを見回すのも体ごと転換しなきゃいけなかったのに、首を動かすだけで広い範囲の視界が確保できる。

 視界に映るクイーン。
 だいぶでかくなった。
 おっさん。
 なんで祈ってるのこいつ?
 勇者くん。
 まだ目を覚ましていない。
 覚まされるとややこしくなるからこのまま眠っていて欲しい。

 下を見る。
 胸だねえ。
 どうやら私は雌で間違いなかったらしい。
 雄にこんな膨れた胸は付いていないでしょ。
 というか、私年齢的に2歳とかそこらへんなんだけど、普通に大人だね。

 手を目の前にかざす。
 5本の指がついた、人の手だ。
 軽く握って開く。
 1本1本動かしてみる。
 ちゃんと動く。

 ちょっと屈んで下の方を見てみる。
 腰のあたりで蜘蛛の肉体と繋がっている。
 継ぎ目は蜘蛛の体毛に隠れて見えない。
 ちょっと好奇心に駆られて体毛をどかして見てみる。
 特に面白みもなく、普通に繋がっていた。
 今の私の体はめっちゃ白いから、あんま違和感なく白い蜘蛛の体と合流していた。

 さらに屈んでみる。
 蜘蛛の目と人の目が合った。
 自分と目が合うって鏡もなしに器用なことができるなー。

 蜘蛛の目は相変わらず8個付いてる。
 人の目と合わせれば合計10個。
 まさかの目が減るどころか増えるパターンだった。
 進化前の心配がこれで減った。

 しかし、白いな。
 私の人型の部分はものすごく白い。
 前世でも白かったけど、もう少し健康的な白さだったと思う。
 今の私の白さはどっちかというと石膏みたいな作り物めいた白さだ。
 ご丁寧に髪まで真っ白なもんだから、余計白い。
 ちなみに、髪はかなり長い。

 その中で、目だけが赤い。
 唇も青白いから、その目の赤さが目立つ。
 白い体に赤い目。
 人型だけど、パッと見でもう人間離れしている。

 しかし、これ、あれだ。
 この人型ボディ、前世の私にそっくりだ。
 そっくりであってそのままじゃない。
 色が白いし目も赤いし。
 顔のパーツも若干変わっている。

 なんだろう。
 基本は前世のものがベースになってるけど、どっかで見たことのある面影が混じってる。
 んー?
 あ。
 これ魔王だ。
 魔王の顔、それが前世の私の顔に混じってる感じだ。

 あー。
 考えてみれば私ってあの人の子孫みたいなもんだし、顔が似てても不思議じゃないか。
 子孫っていうよりかはクローンのほうが正しい気もするけど。
 けど、そうなると逆に前世の顔が混じってくるのが謎だね。

 まあ、そこらへんは深く考えたら負けかな。
 私の記憶から再現した顔に遺伝子情報の顔が混ざったとか、そんな科学とオカルトが微妙に混じり合った結果かもしれないし。

「う、美しい」

 おっさんがボソッと呟く。
 あー、はいはい。
 お世辞でも嬉しいよ。

 あ、私今マッパだわ。
 別に見られて減るもんでもないし構いはしないんだけど、このままでは称号露出狂を獲得しちゃうかも。
 そんな称号ないだろうけど。
 まあ、マッパでウロウロするのは女子力的に終わっちゃう感があるからどうにかするか。

 せっかくだから実験の意味も込めて新たにできた人の手に力を込める。
 指先から白い糸が伸びる。
 うん。
 蜘蛛の尻からだけじゃなく、指先からも糸が出せるっぽい。
 というか、神織糸にスキルが進化してから、出そうと思えば全身のどこからでも糸を出すことはできるようになった。
 けど、やっぱり尻から出すほうが消費とかの効率がいい。

 指先から出すのもそういう意味では効率が悪いんだけど、これはなかなか便利だ。
 尻から出したんじゃ、自由自在に動かせるって言っても不便なことも多かったからね。
 指からなら指先の動きとかでさらに自由度の高い動きができそうだし、使い道は多そう。

 とりあえず指先から出した糸で服のようなものを編んでいく。
 今は間に合わせでいいから胸を隠すブラみたいなものを作る。
 うん。
 完成。
 我ながら器用だな。

 ついでに、長い髪を一纏めの三つ編みにして縛る。
 どうも髪も糸扱いらしく、操糸で簡単に操ることができた。
 もしかしたら神織糸にスキルとしては統合されちゃってるけど、斬糸もやろうと思えばできるかもしれない。
 今度実験してみよう。

 さて、いよいよおっさんに話しかけてみよう。
 声はちゃんと出るかな?
 ちょっと軽く発声練習。

「あ、あー」

 うん、でるでる。
 完璧である。
 
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