挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
蜘蛛ですが、なにか? 作者:馬場翁
213/487

164 選り好みする救世主

 称号いっぱい。
 まあ、そんだけの数の人たちを治療してきたわけだ。
 なんかもう街の住人だけじゃなくて、近隣の街とかからも私の噂聞きつけてやってくる人たちとかいるっぽい。

 けど、そうなってくるとやっぱりと言うか、いけ好かないやつも中にはいるわけ。
 傲慢な態度で治療しろとか言う奴とかね。
 あ、言葉は未だにわからんよ。
 ただ、なんとなく雰囲気でだいたい言いたいことが分かったってだけで。

 そういう上から目線のやつにはもちろん治療なんか施してやらない。
 誰が好き好んでそんな苛立つ奴の治療なんかせにゃならんのだ。
 こちとらなんか知らんうちに治療屋やり始めちゃっただけで、好きで治療してるわけじゃないしね。
 もう称号もこれ以上は手に入らないだろうし、はっきり言えば私のメリットがない。
 救世主の称号持ってるけど、中身は俗物なんよ私。

 ちゃんと私に敬意を払って接してくるやつならまあ、相手にしてやってもいい。
 ちやほやされるって経験が前世含めてないから、悪い気はしない。
 ふふふ。
 もっと褒めて褒めて。

 けど、私と対等かそれ以上のつもりで接してくるやつはノーサンキュー。
 あんたらわかってんのかね?
 私の気分次第で皆殺しも簡単なのよ?
 なんで上から目線で話せるわけ?
 バカじゃねーの?

 まあ、そういうのがいるときはさっさとホームの中に引っ込むか、転移で別の場所に行くかしちゃう。
 関わるのもやだし。
 関わるだけで怒りゲージが貯まりそうだもんよ。
 もうサクッと殺っちゃいたい。
 けど、今のこの崇めたて祀り状態も捨てがたい。

 というわけで、寛大な私は無視するだけにとどめてあげているのだ。
 私超優しい。

 だというのに、中にはすんごいしつこい奴もいる。
 1週間無視し続けたのにまだ性懲りもなくやってきて居丈高に何事か私に語りかけてくるおっさん。
 正直ウザイ。
 大抵の奴は私に無視されたあと、どうも街の中で冷ややかな目で見られているらしく、次の日には来なくなるか態度を改めるかするんだけど、こういうしつこい奴もいるから困る。

 そういう奴に限って権力者とか大金持ちだったりするんだよねー。
 周りの人達もすんごい迷惑そうにしながらも、誰も文句を言えないでいる。
 言ったらどうなるかわからんしね。

 つっても、権力も金もついでに暴力でさえも、私からしてみればあってないようなもん。
 権力?
 それ人間にしか効果無いじゃん。
 私蜘蛛だもんよ。
 金?
 食べられるのそれ?
 食べられないものならいらんがな。
 暴力?
 私に勝てると思うのか?
 少なくとも竜クラスの人間が100人単位でいなけりゃ、私は倒せないよ?

 今日もなんか喚き散らしてるおっさんを無視してホームの中に退避。
 人間の力じゃ、どう頑張っても私の今のホームを破壊することなんかできない。
 ただし、火、オメーはダメだ。
 あんまりしつこいとホントにプチっとやってしまいたくなっちゃうわ。

 周りの人達もいい迷惑だろうなー。
 ああいうのがいる限り私はすぐ引っ込んじゃうからね。
 治療をホントに待ち望んでる人がいたら、あのおっさんのせいで治療受けられずにいるわけだし。
 まあ、私の知ったことじゃないけどね。
 悪いのは私じゃなくて私を苛立たせるような奴。
 タダで治してあげてるんだから、これくらいの我儘言っても許されるっしょ。

 千里眼でその後のおっさんの様子を確認する。
 顔を真っ赤にして地団駄踏んで、お付の人になにか叫んで当たり散らしてる。
 わお。
 いい大人がみっともない。
 周りの人の冷めた視線がわからんのかねー?

 ああ、やだやだ。
 ああいう大人にはなりたくないね。
 ていうか、私って今子供って言えるのかな?
 生後2年も経ってないと思うけど、中身は一応元高校生だしなー。
 ていうか、蜘蛛の魔物ってどのくらいの年齢が大人なんだ?
 わからん。
 そもそも寿命もあるのかどうかすらわからんからなー。
 不死持ってるし。

 そんな感じでおっさんのことを頭の中から追い出す。
 ダンディなおっさんならいいけど、小汚い小太りの脂ぎったおっさんに興味はない。



 夜。
 音もなく忍び寄る複数の人。
 相当訓練されているのか、音も臭いもしない。
 まあ、それでも私の探知を掻い潜ることはできてないけどね。

 そいつらは全身黒づくめ。
 ちょっと違うけど忍者を彷彿とさせる。
 その忍者集団が素早く私のホームの中に入り込む。
 糸を道具を使ってちょっとずらし、隙間を作ってそこから入ってきたのだ。

 バカだねー。
 そんなことしたら、せっかくここまで隠密作業をしてきても、糸に触れればその主には異変が伝わるっていうのに。
 こいつらは優秀なんだろうけど、蜘蛛との戦いは初なんだろうな。

 戦い。
 そう、忍者は戦うつもりなんだろうね。
 この私と。
 昼間のおっさんの刺客か?
 ちょっと私のこと痛めつけて、言うこと聞かせようって魂胆?
 それとも、捕獲して調教するつもりとか?
 まあ、どうでもいいか。

 私は本来救世主なんて優しいもんじゃない。
 そっちがそのつもりなら、容赦はしない。

 ホームの中を慎重に進む忍者たち。
 総勢8人。
 こっちの姿には気づいてない。
 不意打ちでサクッと殺ることもできるけど、向こうから手を出してくるのを待つ。
 そのほうが正当防衛を主張できるしね。

 というわけで、堂々と姿を見せる。
 普段は切ってある暴君だとかのスキルを発動させながら。

 おうおう。
 ビビってるビビってる。
 ん?
 リーダーらしき男がなんか話しかけてきた。
 けど、私言葉わかんないんだって。

 首を傾げる。
 その仕草が相手にどう伝わったのかわかんないけど、忍者どもは臨戦態勢になる。
 4人がこっちに向かってくる。
 残った4人が魔法の準備中。
 へえ、4人で1つの魔法構築してる。
 合体魔法?
 こんな魔法の発動の仕方があったのか。
 私が普段並列意思使って深淵魔法発動してるやり方にちょっと似てるな。

 まあ、家の中でそんなもん撃たせないけどね。

 魔法の準備をしてた4人が土の槍に貫かれる。
 私もアラバに散々苦しめられたけど、土系統の魔法が使える相手の場合、地面すべてが凶器だと思って行動しなくちゃ。
 そんな立ち止まって魔法の準備なんかしてたら、格好の的だよ。

 え?
 こっちに向かってきた残り4人?
 そんなもん、見えないように目の前に張り巡らせておいた斬糸に突っ込んで自爆してるよ。
 忍者死すべし。
 慈悲はない。
 なーんてね。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ