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蜘蛛ですが、なにか? 作者:馬場翁
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18 宿屋に泊まれば全快するのはゲームだけ

《熟練度が一定に達しました。スキル『酸耐性LV2』が『酸耐性LV3』になりました》

 スキルレベルがアップした。
 これで次に蛙と戦う時はもう少し楽になるはず。
 実際、耐性がなかったらダメージが許容量をオーバーしてた可能性は高い。

 危なかった。
 既に体はボロボロ。
 唾液攻撃を2発、舌による攻撃を1発、それだけで瀕死の重傷だわ。
 特に舌の攻撃はやばい。
 直撃を受けた胴体は見事に凹んでるし、衝撃だけで足が何本かイカれた。

 油断してたわけじゃない。
 他の魔物と蜘蛛の巣を使わないで真正面から戦えば、勝率は低いだろうとは予想してた。
 それでも心のどこかで、なんとかなるだろう、という甘い考えがあったんだと思う。
 正直予想以上にしんどい。

 とにかく、この大怪我じゃ、もうまともに動くことはできそうにない。
 しばらくはこの場所に簡易ホームを作って、傷を癒すのに専念しないと。

 止めを刺した蛙を放置して、巣を張る。
 くぅ。
 動くたびに体が激痛に襲われる。

《熟練度が一定に達しました。スキル『苦痛耐性LV1』を獲得しました》

 おお?
 新しいスキルか?
 うん、心なしか痛みが引いた気がする。
 それでもめっちゃ痛いけど。
 でも、これはあれば便利そうなスキルだわ。
 この先生き残り続ければ、自然にスキルレベルも上がっていくだろうし、お世話になります。

 ふう。
 ようやく簡易ホーム完成。
 これで一息つける。
 こんな状態で違う魔物にでも襲われたら、イチコロだしね。

 あー。
 とりあえず、せっかく苦労して仕留めた獲物なんだし、いただきます。

 初の戦闘は辛勝。
 え?
 兄弟との一戦?
 あんなもん戦いとは呼べんでしょ。
 ノーカンノーカン。
 でだ、改めて初めての戦闘を経験してみてわかった。
 私Yoeeee!

 うん。
 これは私個人が弱いっていうより、私含むスモールレッサータラテクト種全体が弱いんだと思う。
 まあ、なんせ劣化種だしねぇ。
 攻撃力も貧弱だし、防御力も脆い。
 唯一スピードだけはそれなりのものが出せるけど、それも初見の蛙の唾液連打は避けきれないレベル。
 基礎能力値ではレベルの低い蛙にさえ劣る。

 今まで私が苦労せずに魔物を倒せてきた理由は、蜘蛛糸による巣というトラップがあってこそだった。
 真正面から戦えば、このザマだ。
 いかにマイホームの力に頼りきっていたかがよくわかる。

 なんにしても、これではっきりした。
 私に正攻法の戦闘はムリだ。
 私が真正面から敵と戦う場合、いかにして相手を糸で拘束するか、それに全てがかかってるといってもいい。
 一応毒牙でそのまま噛み付くっていう手段もあるにはあるけど、この貧弱なステータスでは、正面切って噛み付く前にやられちゃう。

 スピードで相手を翻弄しつつ、隙を突く、もしくは今回みたいに罠を設置して、糸で拘束する。
 それが私の基本戦術になりそう。
 もしくはあらかじめ罠を設置してそこに誘導するか。

 そう考えると、蛙って実は私と相性が悪かったかもしれない。
 遠距離から一方的に狙撃してくる固定砲台タイプだったからね。
 無駄に動かないから、罠に飛び込んできてくれない。
 私に遠距離の攻撃手段がないのも痛い。
 糸を飛ばすってこともできなくはないけど、射程は短いし、何より切り札の糸を無駄に警戒させちゃうかもしれない。
 なるべくならこの方法は温存したい。
 遠距離攻撃に関してはなるべく早めに対策を考えないとなー。

 ハア。
 課題はいっぱい。
 私の弱点は見えた、というか弱点だらけだった。
 けど、だからってここで折れるわけにはいかない。
 ただ生きるだけなら新しいマイホーム作ればそれで事足りる。
 けど、それじゃダメなんだ。
 誇り高く生きると決めた以上、ここでその逃げ道にすがるわけにはいかない。

 けど、今はとりあえず休ませてー。
 この怪我、全治どんくらいだろ?
 というか治るのかこれ?
 あー、ひと晩寝れば全回復するゲームのキャラが羨ましい。

 とにかく寝よう。
 今日は色々あって疲れた。
 体を回復させるためにも寝て鋭気を養うんだ。
 というわけで、おやすみなさい。





 zzz。
 ううん?
 あー、よく寝た。
 寝たっていうか、気絶してたみたいな気分。
 うぐ、体はまだ痛い。
 そりゃ、あんな大怪我ひと晩で治るはずもないし。
 ふあー。
 あだだだだ!
 いつもの癖で伸びをしたら、折れ曲がった足に激痛が走った。
 くう、特に酷い右の中2本足が痛い。
 下手するともげるんじゃないか、これ?
 本当にこの怪我治るのか不安になってくる。

 ちょんちょん。

 ん?
 なんか糸から振動が、って、うわ、簡易ホームの巣に魔物引っかかってら。
 いつもなら引っかかった瞬間の振動で目が覚めるのに、思った以上に熟睡してたみたい。
 それもこれも、体のダメージがでかすぎたせいだろうけどね。

『エルローバジリスク LV4』

 うわ。
 石化蜥蜴じゃん。
 また厄介な奴が引っかかったもんだ。
 どうするかなー。
 あいつ、石化の魔眼持ちだから、糸に引っかかってても、視線が合うだけで石化攻撃できるんだよねー。
 今の大怪我に加えて、石化攻撃食らうのはちょっとまずくない?
 けど、せっかく引っかかった獲物を逃すのもなー。

 キョロ。

 あ、やべ、目があった。
 んげ!
 足の先が石化してきた!
 ああ、もう!
 こうなったら仕方ない。

 ガブッ!

 石化耐性を持ってるおかげで石化する速度はかなり遅い。
 けど、無事な前足が使えなくなるのは非常にまずい。
 下手すると歩行も困難になりかねない。
 頼むから足が動く間に倒れてくれ!

 クタ。

 私の祈りが届いたのかどうか、足が半分石化したところでバジリスクは力尽きた。
 うむむ、歩けなくはなさそうだけど、きついなこれ。

《経験値が一定に達しました。個体、スモールレッサータラテクトがLV5からLV6になりました》

 お?
 おお!
 神タイミングキター!

《各種基礎能力値が上昇しました》
《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》
《熟練度が一定に達しました。スキル『毒牙LV4』が『毒牙LV5』になりました》
《熟練度が一定に達しました。スキル『石化耐性LV1』が『石化耐性LV2』になりました》
《スキルポイントを入手しました》

 OKOK。
 スキルが2個レベルアップしたのは嬉しい。
 けど、今はそれ以上に嬉しいことがある!

 私の体から、皮がごそっと取れる。
 脱皮だ。
 レベルアップの恩恵の一つ、脱皮による全回復!
 凹んだ胴体の傷は治るか不安だったけど、そこも完璧に完治してる。
 イヤッハー!
 バジリスクよ、ありがとう!
 そしていただきます!

 宿屋でひと晩寝ても全快しないけど、レベルアップで私は全快した。
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