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蜘蛛ですが、なにか? 作者:馬場翁
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141 蜘蛛VS地龍アラバ④

S編はちょっとお休みです
 お互いに死力を尽くした戦い。
 けど、お互い決め手がない状況が続く。

 高い防御力と回復力を突破できない私。
 高い回避力で全ての攻撃を躱され続けるアラバ。

 お互い決め手がないわけじゃない。
 私の決め手は糸。
 糸に捕われれば、アラバといえども脱出に時間がかかる。
 その間に、しこたま魔法を撃ち込んでやれば、勝てる。

 けど、ここまでの戦いでアラバは糸をかなり警戒している。
 それだけは食らってはならないと、理解している。
 だから、糸を絡めた攻撃には慎重に対応して向かってくる。
 完全な守りの姿勢に入ったアラバに、糸を当てるのは困難だった。

 対するアラバの決め手は、最大規模のブレス攻撃。
 アラバが全力で放つブレスは、かつて私のホームを崩壊させた一撃以上の威力を誇る。
 そんなもの食らえば、いくら私でも消し飛ぶ。
 忍耐が発動しても、一度食らってしまえば、そのままブレスを浴びせ続けられ、そのうち力尽きてしまう。

 けど、アラバはそれを撃てない。
 アラバは既に2度もブレス攻撃で逆に私の反撃を受けている。
 そのせいで、アラバは持続の長いブレスは撃てずにいる。
 アラバは2度同じ手を食らってからは、徹底して単発のブレスのみを使っている。
 単発のブレスも悪くはない。
 けど、どうしても攻撃範囲は狭くなるし、威力も落ちる。
 私には全て回避されるし、たとえ当たっても致命傷には程遠い。

 お互い決め手になりうる手を持ちながらも、それを有効に活用できない。

 そうなってくると、戦いは自然と長引いた。
 お互いに牽制とたまに本気の攻撃を織り交ぜ、相手にペースを握らせないようにしつつ、機を窺い続ける。

 戦況は、微不利。
 こっちの攻撃は完全に効いてない。
 当たってはいる。
 けど、ダメージは残らない。
 ダメージを与えてもすぐに回復してしまう。
 何発か連続で当てることに成功しても、アラバはその度に一旦距離をとったり、逆に攻めてきて私の攻撃の手を止めさせたりと、回復の為の時間を稼いでしまう。
 結局のところ、これだけ戦ったというのに、ダメージは0。

 それどころか、耐性が増えた。
 最初はレベル4だったアラバの闇耐性が、レベル5に上がった。
 このまま続けていると、今でも少ないダメージの量が、さらに少なくなる。

 対するアラバの攻撃は、当たれば私に通ってしまう。
 一発貰った程度じゃ、私のHPとMPをすべて吹き飛ばすことはできない。
 けど、アラバの一撃は強力だ。
 そんな一撃を食らえば、私の小さな体なんて、簡単に吹き飛んでしまう。
 そんなことにでもなれば、さらなる追撃を食らってしまう可能性だって十分あり得る。
 そうなったらアウトだ。

 ワンチャンの差が大きすぎる。
 回避特化の私は、事故ったら最後、そのまま一気に逆転されかねない。
 もちろんそんな安安とやられるつもりはない。
 ないけど、ありえなくはない。

 自然と私の緊張感は増していく。
 研ぎ澄まされる神経。
 予見の映像を見逃さないように集中する。
 思考加速のスローモーションの世界の中、僅かな情報も見逃さないように、感覚を尖らせる。

《熟練度が一定に達しました。スキル『思考加速LV9』が『思考加速LV10』になりました》
《条件を満たしました。スキル『思考加速LV10』がスキル『思考超加速LV1』に進化しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『予見LV9』が『予見LV10』になりました》
《条件を満たしました。スキル『予見LV10』がスキル『未来視LV1』に進化しました》

 このタイミングでの、スキルの進化。
 ありがたい。
 スローだった世界の動きが、さらに遅くなる。
 散発的にしか見えなかった予見の映像が、常時見えるようになる。

 見える。
 アラバが次に何をしようとしているのかが。
 さらに、その動きの先まで思考超加速の停滞した世界の中で予測する。
 詰将棋のように。

 必殺のつもりで放っただろう、爪と牙、尻尾による流れるようなコンボ攻撃を、余裕で躱しきる。
 スゲーな私。
 今の私に攻撃当てようと思ったら、私の知覚できないレベルの速度を出すしかないんじゃないか?
 こりゃ、いいや。
 いいね。
 ドンドン来いや。
 今ならどんな攻撃も当たる気がしない。

 避ける。
 避ける。
 避ける。
 躱す。
 躱す。
 躱す。
 さらに、その合間にカウンターを叩き込み続ける。
 わずかに減り出すアラバのHP。

 ここに来ての私のその回避力の上昇に、アラバが焦りを感じ始める。
 その感情すら思考超加速の最中だと手に取るようにわかる。
 そして、その心の隙を見逃してやるほど、私は優しくない。

 外道魔法幻痛。
 幻の痛みを与える外道なる魔法。
 アラバが驚愕する。
 そりゃそうでしょ。
 痛覚大軽減を高レベルで持つアラバにとって、久しく感じたことがないだろう激痛だからね。

 外道魔法による幻の痛みは、痛覚軽減では和らげることができない。
 それは探知に苦しめられた私がこの身をもって体験している。
 どうよ?
 久しぶりに感じる痛みは?

 苦痛に歯を食い縛るアラバ。
 外道魔法は心に隙ができると抵抗を抜きやすい。
 アラバくらいの精神力を持つ魔物なら、すぐに魔法の効果を振り切ってしまうだろう。

 けど、一瞬でも十分。

 アラバの意識が痛みに向いた瞬間、糸がその体にまとわりつく。
 振りほどこうとするアラバの体に、次々と糸が絡まっていく。
 アラバの体は何重にも糸が巻き付き、その動きを止めていく。

 やった!
 毒が効く前に、決着がつきそうだ。
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