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蜘蛛ですが、なにか? 作者:馬場翁
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人魔大戦裏

「魔族の侵攻は止められませんでしたか」
「致し方ない。今代の魔王は近頃では珍しいくらい魔王らしい魔王だ。我らとしては好ましくないことにな」
「それで、両軍被害はどれほどになりました?」
「甚大だな。人族は勇者を失ったのが一番大きい。魔族も無理な侵攻で全体的に深く損耗している」
「これも、管理者の思惑、ですか」
「ああ。まさかクイーンタラテクトを投入するとは思わなかった。あれは魔王の切り札の一つだったはずなんだがな」
「アーグナー将軍を消すために投入したんでしょうか?」
「わからん。我々とアーグナーの関係を察知されていたのか、あるいは単純にクソリオン砦ごと人魔もろとも潰そうとしただけか」
「いずれにせよ、私たちは協力者の一人を失ったということですね」
「そうだな。だが、投入されたクイーンタラテクトもだいぶ傷ついた。しばらくあれは使い物にならないだろう」
「魔王を討つなら、今が最良だと?」
「いや。あれが使えなくとも、魔王は強い。一つ戦力が減って行動に制限がかかる、程度に見ておいたほうがよかろう」
「それほどですか」
「白とかいう魔王の尖兵もかなりの強さだ。まさかあの勇者に勝ってしまうとはな」
「今代の勇者は弱かったんですか?」
「弱くはなかった。強いとも言い難かったが。勇者としては平均的といったところか」
「そうですか。シュンくんは悲しむでしょうね」
「その悲しみを終わらせるために我らは動いているのだ。それを忘れるな」
「わかっていますよ。ところで、新しい勇者は?」
「まだわからんな。だが、どこかで生まれているはずだ。魔王や他の厄介な勢力に見つかる前に、我らで発見せねばな」
「私のスキルが称号にも適用できれば良かったんですけどね」
「致し方あるまい。スキルとて万能ではない」
「本当は、スキルなんてものに頼りたくはないんですけどね。この力を使うたびに、自分が汚されるような嫌悪感が湧き上がります」
「スキルはあくまでただの力だ。管理者の思惑はどうあれ、ただの力に嫌悪する必要はない」
「わかってはいるんですけどね。心情の問題です」
「一応忠告しておくが、いくら嫌悪しようとも、この前のような無茶はするなよ?」
「はい。もうしません」
「だといいのだがな。君は生徒のこととなると平気で無茶をやらかす」
「先生ですから」
「ふ。まあいい。オカ、君は引き続きレストンと連携して行動してくれ」
「わかりましたぁー」
「私の前で、その気味の悪い口調はやめたまえ」



*************************


「あれを投入する必要があったのか?」
「あれって?何かなー?あれだけじゃ私わかんなーい」
「クイーンタラテクトだ」
「ああ、あのでっかい蜘蛛さんねー。すごい偶然だよねー。戦場にいきなり転移してくるなんてさー」
「惚けるな」
「黒ちゃん、こわーい。白ちゃんたすけてー!」
「…」
「白ちゃん、せめて反応くらいは返して欲しいって、お姉さん思うなー」
「話を逸らすな」
「いいじゃん、別にー。あんなの大したことないっしょ?」
「あれで大したことがないだと?」
「そうだよ。何?まさか黒ちゃん、あの程度のことで怒ってるの?」
「あれでどれほどの犠牲者が出た?」
「知らんがな」
「貴様、知らないで済ませていい問題だと思うのか?」
「黒ちゃん、それさ、私に言う台詞かな?」
「どういう意味だ?」
「知らないで済ませていい問題ってさ、こんなちっちゃいもので言う台詞かな?」
「何の話だ?」
「あんたは知ってるはずでしょ?世界が忘れ去った真実を。それを忘れ去ってのうのうとしている連中のことを」
「それは…」
「黒ちゃん、いいや、管理者ギュリエディストディエス。管理者たるあんたがそんな調子だから、私が代わりに魔王なんてくっそメンドくさいことしてんでしょ?あんたに私の行動をとやかく言う権利はない」
「だが」
「だが何?今更だよ。人族も魔族もこそこそ動き回ってるエルフも、みーんな同罪。今まで溜めに溜めたつけを支払ってもらうだけなんだからさー。この程度のことでギャースカ言ってるようじゃ、この先どうすんの?」
「まだ、これだけでは足りないと?」
「足りん足りん。全然足りん。そのためにはもっと戦火を広げないといけない。もっと世界に絶望してもらわなきゃいけない。そうでもしないと全然釣り合わない」
「これ以上世界を絶望させてなんになる?」
「なんにもならんけど、強いて言えば、私の憂さ晴らし?」
「貴様…」
「何?黒ちゃん敵対する?私は一向に構わんよ?」
「わかっているのか?いくら貴様でも、私には勝てぬということを」
「わからない訳無いじゃん。その上で言ってるんだよ。敵対するなら好きにすればいい」
「どういうつもりだ?」
「それを言葉にしないとわかんないかなー?ねえ、底抜けの優しさってさ、底抜けの間抜けと紙一重だって思わない?」
「思わんな」
「あっそ。けどこれだけは覚えておいたほうがいいんじゃない?優しさだけで救われるものなんて、タカが知れてるんだよ」
「私はその優しさに救われた。そして、それは我らをも否定することになるぞ?」
「そうだね。だからこそこうしてあんたと私は反目し合ってるわけだ」
「引く気はないのだな?」
「ないね」
「…わかった。今しばらくは付き合おう」
「さすが黒ちゃん!話がわっかるー!」
「だが、どうしても納得できなくなったときは、容赦しない」
「あいよー。できればその時が来ないことを願うぜ」
人魔対戦編終結。次回から本編に戻ります
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