6話「買い物へ」
クタビレ荘で一夜を過ごし、妹は学校へ……。
隣町のため少しばかり距離が遠くなり、妹は普段よりも早めに家を出た。
一学期も今日で終わり、いよいよ夏休みが始まる。
間様は一人で外出……。
「あれ?結衣さんは?」
結衣さんは庭にいた。
「結衣さん何してるんですか?間様どっか行っちゃいますよ?」
「あぁ……間様は絵を描きに出かける時だけは一人になりたいそうだ」
「絵……?風景画ですか?」
「いや……抽象画とかいうやつだ、俺は絵のことはわからん」
「へぇ〜不思議なお方ですね」
「謎多きお方だ……ところで完助」
「はい?」
「修行に……付き合え」
結衣さんの右手にはクナイが握りしめられていた。
「遠慮しときます」
《昼過ぎ》
家具などを揃えるために買い物に出かけることにした。
金は昨晩、母が伝書鳩で送ってきた……母も十分意味不明キャラである。
つーかよく届いたものだな……
途中、仲良く歩く双子の女子高生を発見。
「やぁ!麗華ちゃん恵理華ちゃん学校からの帰りかい?」
「はい……姉さんと今から買い物に」
「俺もだよ」
「言っときますけど妹に何かしたら承知しませんわよ」
「ま、まだ何もしてないじゃんか!」
「じゃあ、これからするんですの?ストーカーとか?」
麗華ちゃんは睨みながら腰に差した刀を手をする。
「コレクションNO.67『黒矢薙鉄子』は切れ味が最高ですわよ」
か……勘弁してくれ。
にしても、どーして101号室の変人も含めて銃刀法違反で捕まらないのだろうか?
麗華ちゃんをなだめていると、恵理華ちゃんが俺の肩を軽く叩いて言った。
「完助さん……あれ愛子さんじゃないですか?」
恵理華ちゃんが指差す小さな果物屋に一撃家の主婦、愛子さんの姿があった。
「本当だ……」
「一撃家の若妻ですわね」
3人はコッソリと愛子さんに近付く……愛子さんは気づいていない。
果物屋のお婆さんが愛子さんに話しかけた。
「何にするんだい?」
「そ〜ね〜?」
愛子さんはスイカを片手で持ち上げた。
……グシャ!
スイカを握りつぶした!
「ありゃ?」
「ちょっとお客さんなんてことしてくれるんじゃ!」
「ご、ごめんなさい……硬さを確認しただけなんですぅ〜」
愛子さんの恐ろしい握力!
「うがぁぁ!」
怒り狂った果物屋のお婆さんは持っていた杖で愛子さんに殴り掛かった。
……ベキッ!
容赦なく杖を握りつぶす愛子さん。
「ストップ!」
俺が後ろから愛子さんに抱きついて止める。
「あら?完助君どーしたの?」
「愛子さん……とりあえずココは謝りましょう」
4人で果物屋のお婆さんに謝り、その場を凌いだ。
《家具屋前》
愛子さんも加わって家具屋へ。
愛子さんはニコニコしながら俺達の先頭を歩く。
ちゃんと反省してるのだろうか?
「悪魔みたいな女ですわ……」
麗華ちゃんはボソッと呟いた。
麗華ちゃん……あんたも十分悪魔ですよ。
「麗華ちゃん……ちょっと」
俺は麗華ちゃんを手招きし、耳元で言った。
「悪気はないのだろうけど、また愛子さんが止まらなくなったらお願いできる?」
「仕方ありませんわね」
「姉さん頑張って」
家具屋に入り愛子さんは辺りを見回して言った。
「私にまかせて、安くて丈夫な品を見つけてくるわ」
愛子さんは笑顔で指をポキポキ鳴らした。
さっそくきた!
「麗華ちゃん!」
麗華ちゃんは素早く刀を抜いて愛子さんに斬り掛かった!
「若妻成敗!立花流奥義!蛇留魔斬り!(だるまぎり)」
行け!ただの横斬り!
……パキーン!
折れた。
殺気を感じて振り向いた愛子さんの手刀でアッサリと鉄子は折れた。
2日連続で麗華ちゃんの名刀コレクションが折れた。
ショボいぞ!
ショックでその場に倒れる麗華ちゃん。
「姉さん!しっかり!」
駆け寄る恵理華ちゃん。
腰を抜かす俺。
……この日、家具屋の家具は壊滅状態になった。