4話「回覧板・一撃家編」
俺はこのアパートに来て数分で二度死にかけた。
そして妹をこれほど頼りに思ったことはない。
次も頼むぞ妹よ!
202号室
一撃家
情けない話、すでに姓でビビる俺。
……ピンポーン
バァァン!
チャイムを押したらドアが飛ぶ……
それが当たり前のように。
ドアは飛んで遥か後ろでボコッと鈍い音がした、確認したいが後ろを振り返るのが恐ろしい。
「門下生が来よったーー!」
甚平を着たヒゲ長ジジィが俺に抱きついてきた!
ボキボキボキ……
「ぎゃぁぁ!」
ありとあらゆる俺の骨が砕けた。
そのままジジィは俺を離さない。
「本当ですかお父さん」
シブい声で逞しい体、そして何よりメガネが似合ってない男性と……とても若くみえ、束ねた髪が魅力的な女性が現れた。
どー見ても夫とその妻である。
「お、お願いですから離して下さい……俺は隣に引っ越してきた此似手という者です」
「あの〜お父様、このお方はお隣さんのようですが」
「なにぃ!」
ようやく俺は地獄の抱擁から解放された。
「門下生ではないのか?」
「そのようですね、お父さん」
「う〜む、ワシの夢はいつになったら実現するのじゃ」
「……夢?」
「うむ……我が抹殺真拳一家の夢はカメ〇メ波を覚えることじゃ!」
あぁ〜このジジィ無駄な人生歩んでるな。
「もう少しで夢が叶うハズなんじゃ!」
「なんか根拠でもあるんですか?」
「うむ……すでにエネ〇ギー波は習得しとるよ」
前言撤回!コイツすげぇ!
それにこの家族に、もはや門下生は必要ない……と思うのは俺だけか?
「とりあえずワシは君をいつでも我が抹殺真拳の入門を歓迎するよ」
俺よりも優れた門下生が背後に立っていることは黙っておくことにしよう……
「ではワシらの家族を紹介しよう」
いきなり急展開……
「ワシの名前は一撃友蔵202号室の主じゃ!趣味は一日家訓!」
「家訓?」
「そうじゃ!見よ!今日の我が家の家訓じゃ!」
友蔵が取り出したのは‘弱肉強食’と書いた紙だった。
弱肉強食とは……弱者が強者の餌食、犠牲となり強者が栄えること。
このジジィが書きそうな家訓だな……
とりあえず俺と妹は拍手をしておいた。
「え〜私はその息子の光太郎です」
「光太郎さんの妻で愛子です」
さらに二人の男の子が家から出てきた。
「ワシの孫で長男の拳使郎と次男の恥芽じゃ」
恥芽は愛子さんの後ろに隠れてお辞儀した。
長男の拳使郎はと言うと……
「ドキーーン!」
いきなり妹を見て叫んだ。
そして顔を赤くして妹を指差し言った。
「お、お、俺が一目惚れなんてダサいことするかバーカ!修行に行くぞ恥芽!」
「ま、待ってよ兄ちゃん」
わかりやすい……そしてバカだ。
階段を降りて兄弟は走り去った。
ジリリリリリ……
一撃家から目覚ましがなる。
「ぬ……光太郎!愛子さん!修行の時間じゃぞ!」
「オッス!」
そして三人も家の中へ……
正直この家族が隣に住んでいると思うとこれから疲れそうだ。
「ゴミ共ばかりね……」
それは言い過ぎだぞ妹。
ところで玄関のドア……直さないのかな?
それにだ……門下生の入門=カメ〇メ波習得できるとか全然意味わからんわ!
しっかりしろ!一撃家!
☆プロフィール
202号室
一撃友蔵
年齢……63歳
※抹殺真拳一家の祖父。家訓好き。得意スタイル→柔道。
一撃光太郎
年齢……35歳
※一撃家の父。得意スタイル→プロレス。
一撃愛子
年齢……34歳
※一撃家の母。得意スタイル→空手。
一撃拳使郎
年齢……14歳
※一撃家の長男。戦闘の才能あり。終羽里に惚れる。得意スタイル→ボクシング。
一撃恥芽
年齢……10歳
※一撃家の次男。戦闘の才能なし。得意スタイル→特になし。