最終話「そして死に逝く悲しき男」
すでに読者は気づいたかもしれないが、『クタビレ荘の生活』最終話です!
この世界で新年明けてから6話目でまさかの最終話、読者も作者も予想してなかった展開です。
その理由は間様の一言から始まりました。
……
…………
「残念ながら完助殿、お主あと12時間で死ぬぞ」
「え〜と、何の映画の影響ですか?」
「ん?私が冗談を言っていると?」
「間様の体は冗談で出来てますからね」
ズガッ!
俺の心臓目掛けて飛んできた手裏剣を神業のように避ける。
これだけが俺が悲しくも会得してしまった回避能力だ。
「今はまだ死ねないでしょうが結衣さん!」
眼光を鋭くして結衣さんが現れた。
「間様を侮辱するヤツには死を」
正直言うと俺って何回も死んでいると思うのだが……。
しかし、今回の間様はちょっと違う。
目頭に浮かぶ涙……嘘偽りない涙である。
「そうか。ついに死ぬのか完助、送別会でもしてやろうか?」
「コレって、冗談抜きの本当なんでしょうか結衣さん?」
「貴様!間様の涙を見て何とも思わんのか!?」
「いや〜しかし」
怪しまないのはコメディとして失礼だろ。
ドドドドド!
ん?なんだが騒がしくなってきたな?
無数の激しい足音が俺に向かって来るぞ。
「完助君が死ぬなんてイヤや〜!」
都合の良い情報網だな本当に。
どうなれば一瞬にして晶子ちゃんにまで‘俺が死ぬ’ことが知れ渡るんだよ。
「泣かれても仕方ないよ晶子ちゃん、何かの間違いだよ」
「今更言っても意味ないけど……ずっと完助君のこと好きやってんで!」
さすが最終話!ぶっちゃけ過ぎだろ!
「『蒼い空豆』の常連客もとうとうお陀仏か」
「寂しくなりますね店長」
常連客になったつもりないんですけど。それに別に来なくてもよかったんですけどね東野さん、そして空豆店長。
「俺様の敵は1人でも減った方が助かるがな」
まだくだらないことを考えているようだなキング。
「いい加減にしてくれよ、俺が死ぬなんてどうしてわかるんだよ!」
「はわわわ……完助さん‘てれび’見てないんですか?」
寿さんが泣きながら尋ねてきた。
「テレビ?」
俺は201号室へ行きテレビを点けた。
そこに写っていたのは紛れもなく俺の顔だった。
必ず当たる占い師マダム・ポーラの占いの結果、俺は今夜に死ぬらしい。
勝手に人の顔を写しやがって……やっぱり俺って運が無い。
しかしこの占い師、ウソ臭いな。
「さらばだな完助……南無」
「拝まないでくださいシュバリエさん!」
くそ〜足掻いて生きることを乞わないといけない状況なのかもしれないのだが、まったく死ぬ気がしない。
「妹の幸せは俺に任せろ!ハッハッハッ!」
任してたまるか拳使郎!
「もっと完助のお兄ちゃんと遊びたかったな」
そんな悲しい顔しなくても大丈夫だと思うぞ恥芽。
「今まで色々あったわねぇ」
あれ……?もう締めに入ってるんですか愛子さん!
「もっと出番が欲しかった」
俺に言っても仕方ないと思います光太郎さん。
「弟子の死に顔は必ず見るから安心せい!」
もともと弟子じゃないから安心できぬわ友蔵!
こりゃコメディ最終話で定番の全員集合だな、次辺りピョン太か?
「完助君、これを受け取るピョン」
予感は的中した、手の上に不思議の国のア○スを乗せたピョン太が鼻声で言った。
「ア○スが何だよ?」
「あの世でパートナーにしてあげてほしいピョン」
「断る!」
ア○スの主のくせして、あっさりあの世に送ろうとするな。
「鈴木二等兵、完助ボーイに全霊を込めて敬礼ダ!」
「イエッサー軍曹!そして今までありがとうございました兄貴!」
心なしか笑みを浮かべているように見えるのは俺の気のせいか?
「君が死を迎える前に僕の研究を全部報告してあげるピョン」
お前はもう何も言うなウサギ野郎!
「皆さんに愛されて幸せ者ですね完助さん」
おっ……恵理華ちゃん、良いこと言ってくれてるけど違うんだよね。
「まったく、みんな間違っていますわ」
うおお!ナイスだ麗華ちゃん!
君ならわかってくれていると信じていた、皆の誤解を解いてくれ。
「どうせ死ぬなら、その前に殺すのがベスト」
そう言って刀を手に笑い狂う麗華ちゃん、最後の最後まで止める役の恵理華ちゃん。本当にお疲れ様、そして信じた俺がバカでした。
《そんなこんなで此似手完助死亡まで残り1時間》
「コラァ作者!ちょっと待てやぁぁ!」
「……兄さん、誰に叫んでるの?」
「ぬ……スマン終羽里、どうやら兄ちゃん死ぬようだ」
「……兄さん、あの世でも元気でね」
くそ!気まず過ぎるぞ。しかも死に場所(仮)が201号室とは……だんだんマジで死ぬ気がしてきたぞ。
こーいう場合、寿さんと仲良く幽霊コンビをやるべきなのか?
いや……彼女のキャラ位置に降臨するのは嫌なので大人しくあの世へ。
そうと決まれば、いいか……映画や漫画などで世に轟かした作品は感動系が多い、タイタニ○クとかな。
つまり俺もこの際、読者を泣かして散ってやるぞ。
抗いながら死ぬのではなく、あした○ジョーみたいに燃え尽きて散るのもいいな(実際は死んでないけど)
ドラゴ○ボールのクリ○ンみたいに誰かの名前を叫びながら後々残された者がスーパーな気分になれるように散るのも良い。
他には……他には……。
「番組の途中ですがニュースです。先程、詐欺および窃盗の罪により占い師マダム・ポーラ容疑者が逮捕されました。マダム・ポーラ容疑者は数々のインチキ占いで大量の金を騙し取っていた疑いがあり…………」
クタビレ荘の生活。
これにて完!!
『クタビレ荘の生活』完結です。同時に旅に出ます、しばらく勉強したりしてヒョッコリ帰って来ようかと……その時にクタビレ荘2をやるかわかりませんが、とりあえず皆さんに“チラリズム”という名をテキトーに頭の隅っこにでも覚えていてくれれば本望です。たまに短編だけでも書いて載せてるかもしれませんけど(笑)