35話「餅つき」
クタビレ餅つき大会。
今回の企画は一撃家の美しき主婦、愛子さんが計画したものである……。
なんでも学校へ行っている拳使郎達が帰ってくる前に餅を作りたいそうだ。
「異様な光景ですね」
「ごめんなさいね完助君、手伝ってもらっちゃって」
「いや、今まで餅なんて突いたことないんで俺は別にいいんですけどね」
たまに大学を休む、いい加減な主人公な俺。
ペッタン。ペッタン……と、俺は臼に入った真っ白な餅を杵を使ってリズムよく突いていく。
ちなみにパートナーは暇そうだったチャールズだ。
さきほどから読者が気になっているだろうが……そんな俺の目に写る光景とは。
餅つきを張り切り過ぎて腰を痛め、愛子さんにシップを貼ってもらっている友蔵。
同じく張り切り過ぎて10分間フルで餅を突きまくり、体力を限界まで消耗してしまった光太郎さん。
手伝おうとしたが、幽霊である自分の無力さを実感してイジける寿さん。
「はうぅ〜私‘ますこっときゃら’なのに〜」
まだコダわっていたようだ。
その哀れな光景を見て笑う間様(結衣さんは里帰り中)
「あら?何をされているのかしら?」
「あれ?麗華ちゃん学校は?」
「そういうアナタも学校はどうしましたの?」
あ〜なるほど、お互いズル休みか……。
「餅を突いているのでス!風邪も引いていないのに学校を休むようなヤツは首を突っ込まないことで〜ス。まぁバカは風邪は引かないと言いますけどネ」
コラコラ……そんなことを言うと大事なパートナーがバラバラに解体されるじゃないか。
シャキーン
ほ〜ら、人を殺せるような冷たい視線がすぐ隣から……。
グサッグサッグサッグサッ!
「ぐフッ!」
麗華ちゃんの家宝刀『咲夜華』が軍人気取りの男の血で真っ赤に染まる。
「私も昼過ぎから、こんなサスペンス劇場的ことをするのは嫌でしたが。人をズル休みするバカみたいなことを言われると……つい」
その通りじゃないのか?……とツッコミを入れると、この作品の連載が終わる……すなわち俺が死ぬから止めておこう。
ってか死体に話しかけても意味無いよ麗華ちゃん。
「とにかくパートナーが……」
「手が汚れるので私はやりませんわ」
誰のせいで……。
「僕が手伝うピョン!」
その声は!
最近、黒魔術を研究したり大学の教師だったりするのを読者に忘れられていそうな飛美ピョン太!
「餅に是非ともコレを入れたいピョン」
ピョン太の手にはキングが入ったビンが握りしめられていた。
「きっと素晴らしいモンスターが誕生するピョン」
ドラ〇エの配合みたいに言うな。
「んな訳あるかぁ!出しやがれ〜!」
ビンの中で暴れ出すキング。
それを見て間様がポンっと手を叩いた。
「それだけ元気だと凶暴なキングス〇イムが生まれそうじゃな♪」
餅 + キング……間違っていないようで間違っていてほしい!
餅つきが進まないまま、時間だけが過ぎていく。
友蔵にシップを貼っていた愛子さんが歩み寄ってくる。
「お待たせ♪私が突くから替わってくれるかしら完助君」
「いや、愛子さんが突くと杵と臼が何回も壊れますよ」
「あら……それってどういう意味かしら?人を怪力女みたいに」
……おっしゃる通りです。も〜本当にその言葉通り!
「うにゃ!もうすぐ子供達が帰ってくるんじゃないんですか?」
もうそんな時間か……。
寿さんの一言に、倒れていた友蔵が体を引きずりながら俺の足を掴んで言った。
「頼む完助君、ワシは孫達の喜ぶ顔が見たいんじゃ!」
ウチに終羽里がいるの忘れてないか?
アイツがいれば手品のように餅が消えて無くなるぞ。
あれだけ食べて太らないのが不思議だ。
「旅行の時は出番が無くて寂しかった僕からもお願いします……あの子達に美味しい餅を」
余計な感想いらないですよ光太郎さん。
「引き受けた以上は最後までやりますけど、なんか嫌な予感がするんですよね」
ペッタン……ペッタン……ペッタン……ゴスッ!
あれ!?
餅が消えた?
つまりヤツが現れたのだ。
ドコだ!ドコにいる此似手終羽里〜!
「……ただいま兄さん」
「あれ?終羽里、今帰りか?餅は?」
「……餅?」
まさかの展開だ、犯人が終羽里じゃないなら他に誰がこんな早技ができるんだ?
名探偵・此似手完助の推理。
まずチャールズは死んでいるから違うな、復活するのも時間がかかる。
麗華ちゃんや間様だと俺の中でのイメージが下がる、つまり違ってほしいという個人の問題だ。
ピョン太は度胸がないというか無理だな……キャラ的に。
キングはビンの中だし、寿さんは幽霊だ。
それに一撃家の友蔵や光太郎さん、愛子さんと言った達人メンバーも見切れなかったスピードの持ち主。
そして一番疑うべき終羽里ではないと言うと……。
俺が向かった先は202号室。
バン!
俺は勢いよく戸を開けると、部屋にいたのはコソコソと部屋の隅で餅を頬張る一撃拳使郎、そして少ししか貰えなかった恥芽。
「ほぐひふぃはなぎゃんふけ。ほへほゆちゅべきげひゅうほおぎ『ほはえをほのふぁほへはふの』(よく気づいたな完助。これぞ一撃流奥義『お前の物は俺の物』)」
喋るのはいいから、さっさと飲み込め拳使郎。
「う……ぐおっ!」
「兄ちゃ〜ん!」
お約束のように喉を詰まらせる拳使郎。
「いか〜ん!吐き出せ拳使郎!死ぬぞ〜!」
ドスッ!
拳使郎の腹にめり込む終羽里の腕。
「おぐっ!」
拳使郎はその場に倒れ、口から大量の餅が出る。それを確認した俺は急いで拳使郎の側に駆け寄る。
「よくやったぞ終羽里、拳使郎を助けたんだな!」
「……いいえ。トドメをさしただけよ」
「え?」
拳使郎はピクリとも動かない。
読者の皆さん、独り占めはダメですよ。死ぬ可能性がありますから。