3話「回覧板・立花家編」
なるほど……このアパートは容易な考えで生きていけそうになさそうだ。
すでに101号室でアレだからな……
まだ回覧板も何故か俺が持ってるし、
「なんとかなるよ」
と妹に励まされるし。
102号室
立花家
ピンポーン……
「は、はい!」
戸を開けて現れたのは普通の女の子。
髪を二つに括り、右目に眼帯……料理をしてたのかエプロン姿で制服、たぶん女子高生だな。
そして恥ずかしがり屋なのだろう、モジモジしながら俺を見ている。
「どちら様ですか?」
「あ……え〜と今日から201号室に住むことになった此似手完助と妹の此似手終羽里です」
「よろしくお願いします……私は立花恵理華です」
いや〜可愛らしい女の子だな〜。
それも二人も……
……二人??
立花恵理華が二人いる!後ろに!立花恵理華の後ろで刀持って鬼のような形相で俺を見ている……
あ〜よく見れば眼帯は左目に付けているけど。
もしかして双子姉妹ってヤツなのかな?
「ストーカーね?」
「え?」
「あなた恵理華のストーカーですわね」
「……はい?」
彼女は刀をゆっくりと抜き始めた。
「ちょ……姉さん違うの!この人は空き部屋だった201号室の」
刀女は恵理華ちゃんを押し退けて俺の方に向かってきた。
「黙りなさい恵理華、ちょうど通販で購入した私の102本目の名刀『藻紋牙』の試し斬りがしたかったところですわ」
刀も通販で買える時代ですか!?
「やめて!麗華姉さん!」
すでに麗華は恵理華の声など聞こえちゃいない。
「チャールズとかいう男に101号室を取られてイライラしていたところでしたの……ストーカーさん、この子(刀)に血を吸う快感を味あわせてくださいな……」
刀からオーラが見える!そして麗華が悪魔のような笑みを浮かべた……その瞬間!
「チェェェェストーー!!」
「うがぁぁぁぁぁ!」
気持ち悪いくらいブサイクな避け方で避けた俺は尻餅をついた。
「あわわわわ……」
「よく避けましたわね……しかし!」
再び麗華は刀を振りかざした。
「立花流奥義!怒羅魂・土裸射舞!!(ドラゴン・ドライブ)」
結局は俺に刀を振り下ろすだけで技でもなんでもない!
「う……うわぁぁぁ!」
俺は死を悟って体を丸くした……もうダメだ!
「…………?」
あれ?俺死んでないぞ?
上を見上げた俺が目にしたものは!
妹が片手の指二本で刀を止めている姿だった!
この場でも見せた妹の人間離れした身体能力!
刀はピクリとも動かない!
「は、離しなさい!」
「離したら兄さんが死ぬから無理」
「生意気な!ググググ……」
麗華が更に力を加えたその瞬間!
……ベキッ!!
見事に藻紋牙が折れた。
「私の藻紋牙ぁぁぁぁぁぁぁ!!」
放心状態になった麗華を抱き上げて恵理華ちゃんは俺達にお辞儀をして家の中へ入っていった。
また回覧板渡しそこねた……
☆プロフィール
102号室
立花麗華
年齢……16歳
※双子の姉。左目に眼帯。刀好き。何故か101号室の座を狙う。
立花恵理華
年齢……16歳
※双子の妹。右目に眼帯。姉の世話で大忙しな少女。