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28話「〇鍋パーティ」

寒い季節、なにやら間様が上機嫌だ。

俺は間様に声をかけた。

「なんか良いことでもあったんですか間様?」

「……ん、あぁ完助殿はクタビレ荘の冬を知らんからな」


笑いながら間様は103号室へ戻っていった。

なんのことだろ?


《その夜》

201号室にゾロゾロとスーパーの袋やガス焜炉を持って来るクタビレ荘メンバー。

いや、シュバリエさんや晶子ちゃんもいるぞ。

わざわざ間様も結衣さんの力を借りて2階に来るなんて、いったい何が始まるんだ?


ドン!


テーブルの真ん中に鍋を置く友蔵。


パァン!

パァ〜ン!


みんなは持っていたクラッカーを一斉に鳴らした。


「お待ちかねの鍋パーティじゃ!」

間様の一言で部屋中が盛り上がった。

ポカ〜ンと口を開けたまま突っ立っている俺と終羽里。

「鍋パーティ?」


「そういうことじゃ完助殿、今年の会場は201号室!しかも!」

「闇鍋だ」


結衣さんが仁王立ちでクールに言った。



なぜに……なぜに闇鍋?普通に鍋でいいじゃないか。

「わ〜い鍋ぱ〜てぃです〜」


黙れ寿!

テメェはどうせ食えん!

しかし、恵理華ちゃんや愛子さんが持ってきたスーパーの袋には肉や野菜が入っているぞ。

変な物を持ってきているヤツは…………まぁ、麗華ちゃんの刀は仕方ないか。


すでに終羽里は大人しく座って鍋が出来上がるの待ってるし、一撃家の子供達も素直に正座。

この三人は何を食っても腹を壊しそうに無いがな。


「アパートの住民では無いのだぞ私は」


ブツブツと文句を言っているのはシュバリエさん。

「細かいことを気にするなシュバリエ、どうせヒマだったのじゃろ?」

シュバリエさんの肩に手をまわす間様。


「仕事はヒマだが、悪魔を手に入れるために奮闘中よ」

「まだ諦めておらんのか?」

「契約に失敗したのは何かの手違いだ、必ず私の物にしてみせる」

「懲りんのぉ……」


一方、辺りを見回して光太郎さんが気付いた。

「父さん、空豆さんと東野さんが来ていませんが」

「そーいえばそうじゃな、どうする間君?」


友蔵が間様に尋ねた、しかし答えたのは人数が多すぎる上に狭い部屋を居心地悪そうにしている一匹のウサギだった。


「どうせ仕事が忙しいんだピョン」

「そうだ!ピョン太の言うとおり、先に食っちまおうぜ!」


スーパーの袋に手を入れる拳使郎に注意したのは意外にもチャールズだった。


「いけません拳使郎ボーイ、男は我慢というのが大切で〜ス」

と、真面目に注意してるかと思いきや……右手にはリボルバーを構えて脅してたりする。

もちろん一撃家メンバー総出でボコボコにされるチャールズ。


《10後》


「軍曹……」

「す、鈴木二等兵。私の遺骨はアラビア海にでも流してくれないカ?」

「必ず!」


ガクッ!


「軍曹〜!!」


アラビア海が迷惑だよ。

バカ二人は置いといて、確かに遅いな東野さん達。

「事故とかにあってないでしょうか?」


心配そうに恵理華ちゃんが言った。

「来ーへんなら前もって連絡するやろ?」

「できない状況かもしれませんわね」


怖いこと言うのは禁止だよ麗華ちゃん。


「いやいや〜、お待たせしました皆さん」

む?東野さんの声はするが姿は見えず!


上か!?

下か!?


ガシャ〜ン!!


窓からか〜い!

「迷惑だバカやろう!弁償しろ!」

「まぁまぁ完助君、今日は楽しい日なのだ気にするな」

「気にするわバカ空豆!」

酒臭い空豆店長……かなり飲んでるな、東野さんが酔っ払った空豆店長を連れてくるのに時間がかかったのだろう。


《終羽里の魔法で窓を修復》


グツグツ……


いつの間にか鍋の中に肉や野菜を入れる愛子さん。

「そろそろかしら?」

愛子さんと眼が合った間様は頷いた。


「では皆の者、鍋に好きな物を入れるがよい」


ボチャーン

ボチャーン


ドボーン!


俺は次々と鍋に入る材料を確認した、恵理華ちゃんはコロッケ。恥芽が入れたのはバナナ、友蔵は……プロテイン!!


マズい!このへんから狂いだすぞ!


ああっ!

今、ピョン太がカエルを入れたぞ!儀式か何かと勘違いしてないかオイ!


餃子!納豆!刺身マグロ!オレンジジュース!?


うおっ!光太郎さん、バニラアイスは無理があるよ!

さらに無理があるのは麗華ちゃんだ。


もちろん入れようとしているのはコレクションである刀、また『鍋に入れるとダシが出る刀』とか言い出すんじゃないだろうな?


くっ……すでに食えそうにないぞコレ。


カエル生きてるし、バニラ色の野菜が浮いてるし。肉と仲良く手榴弾が浮いてる光景なんて、まず無いだろう。


そして、この鍋パーティに終止符を打ったのは白い翼を生やした悪魔。此似手終羽里……神の過ちにより生まれた人間兵器である。

台所から包丁を取り出し、片手でピョン太の耳を掴んだ。


「ピョン?」


「……やっぱり鍋はウサギ鍋」


「うわぁぁ!やめろ終羽里!!」


グチャ

グチュ

ブシュ!



ドボーン!


鍋の中がモザイクになった。

へぇ〜、モザイクってこうしてできるんだ。


「さぁ食え完助」


無茶を言わないでください結衣さん!


「……いただきます」

手を合わせて食べ始めたのは終羽里だけだった。

俺達はソレを見ることしかできなかった。間様の笑い声だけが部屋中に響いている。

5分後……完食した。

201号室から一匹の男が姿を消した。


今回ばかりは帰ってこないのではないだろうか?

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