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27話「争奪戦」

今日はアルバイトが無い。

大学が終わると直行でクタビレ荘に帰り、普段やらない洗濯物を取り入れる。ガラにもなく学校帰りの妹を単車で迎えに行き、阿修羅商店街のコロッケ屋の前で間様と結衣さんと出会うと皆でコロッケを買って食べた。

こーやって『ほのぼの』とした1日を過ごす。そう!俺はコレを望んでいたんだ。

何のトラブルもなく、毎日を楽しく静かに……暮らしたいのに何で来るかな恥芽くん!!

「お、にい……ちゃん助けてぇ」


バタッ!


ボロボロの体を引きずり、俺に助けを求めて来た恥芽は俺の目の前で倒れた。


「恥芽!大丈夫か!?」

俺は倒れた恥芽を抱き起こす。

「おは……ぎ」


ガクッ!


おはぎ?

恥芽が‘最後’に言った言葉『おはぎ』とは……いったい?


「間様、結衣さん。恥芽をお願いします」

「あぁ」

「任せておけ完助殿」

俺は202号室へと向かった。

「終羽里も間様達と一緒にいろ!」



……俺のバカ、『こんな時は男の俺が』と意気込んでしまった。

保険として妹を連れていけばよかった……と、落ち込んでも遅い。

「でぇぇぇい!」


勢いよく202号室の扉を開ける。


筋トレ道具以外は素朴な一撃家の部屋中に響く友蔵の声。


「勘当じゃ〜!!」


パリン!

ガシャ〜ン!


周りの食器や窓が割れる。

声だけで食器とか割るとは、相当怒ってるな友蔵のヤツ。

もはや現実離れしたことを、いちいちツッコんでいられない状況だ。

友蔵、光太郎さん、そして拳使郎の3人が輪になって闘志を燃やし今にも殴り合いそうである。

「ちょ、待て待て!こんなことになった理由を説明しろ!」


しかし、その理由は部屋の中央に置かれてある円卓の上を見て理解した。


お・は・ぎ!


丸いテーブルの上に丸い『おはぎ』が1つ置かれていた。

なるほど、恥芽が言っていたのはコレか……。

「ワシの『おはぎ』は絶対にやらんぞ!」

「だから父さんのじゃなくて、それは僕が商店街で買ってきた『おはぎ』なんですよ……だからソレは僕のです!」

「ぜってぇぇにジジィには渡さねぇぞ……オヤジにもだ!」


3人とも、どーしようもなくガキだな。


見兼ねた俺は口を開いた。

「あと2つ買えば収まるだろ?ついでに恥芽の分も買えば……」


「嫌だ(じゃ)!めんどくさい!」


3人がハモった。

仲良く買いに行けばいいのに。

「こうなったら決闘じゃ!行くぞ光太郎!拳使郎!ぬりゃあああ!」


「望むところだクソジジィィィ!」


マズい!戦いが始まる!

またアパート壊すんじゃないだろうな?


5回目は勘弁だぞオイ。


ドカッ!

バキッ!

ガシャ〜ン!


え〜、こちら実況を伝えるのは私……此似手完助です。

ついに始まってしまいました『親子おはぎ争奪戦』、場所はとんぼ町クタビレ荘202号室。

1つの『おはぎ』を巡って繰り広げられる今回の死闘、すでに台所が破壊されております。

おっと!ここで光太郎さんのラリアットが友蔵にヒット!


しかし友蔵、体勢を崩しながら光太郎さんの胸倉を掴んで一本背負い!


お見事!


雄叫びを上げる友蔵のチ〇コに拳使郎の右ストレートが!


おやおや、さっそくの反則。しかも下ネタですね〜。

立ち上がった光太郎さんに拳使郎は透かさずアッパーを繰り出した!

しかし軽快に避ける光太郎さんは拳使郎の後ろに回り込み首を絞める。

息子の首を絞めるとは、もはやコレは虐待だ〜!

抵抗する拳使郎。


そこで〇ンコの痛さのあまり、もがいていた友蔵が立ち上がり構えた!


「ぐはっはっはっ!血湧き肉踊るわぃ!」

友蔵の拳が光った〜。

二人とも巻き込んで殴るつもりだ、ついに出るぞ!友蔵の必殺技だぁぁ!!


「森羅万象!!」




ガチャ


「ただいま戻りました〜、商店街で『おはぎ』が安かったので買ってきましたよ」

帰って来た愛子さん、その手には『おはぎ』の入った袋が……。

「あ、愛子!?」

驚く光太郎さん、同時に額から汗を流した。

友蔵の手も止まり、辺りを見回す。

原形を留めていないテレビ、倒れたタンス、穴だらけの壁。


愛子さんは怒りをこみ上げた、笑顔で腕をパキポキ鳴らす愛子さん。


「お父様、光太郎さん……拳ちゃん。ついでに完助君」


えっ!?俺もですか?

「覚悟してくださいね」


「きゃあああああああああ!!(4人ともハモる)」



こうして『親子おはぎ争奪戦』は愛子さんの乱入で無効になり……結局、愛子さんが買ってきた『おはぎ』を追加して解決した。


もちろん恥芽の分もある。


痛い思いをした俺も少し『おはぎ』を頂いて、終羽里と一緒に食べた。

アパートが崩壊しなかったのが何よりだった。

今日もヒドい1日だったな。

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