24話「危険な来訪者リターンズ
秋の真っ直中。
俺は何故か嫌な予感がしていた……。
《クタビレ荘庭》
間様と結衣さん、そして紫色の髪をした少女が何かを話していた。
初めて見る子だぞ、終羽里くらいの年齢かな?
メチャクチャ大きな槍を軽々と持っている。
「おや?完助殿」
「ど〜も間様……この子、迷子ですか?」
少女はムッとした顔になった。
「いやいや、私が『星の姫』に居た時の仲間じゃ」
「えっ!こんな子供が!?」
俺は驚いた。
まさか、こんな子供まで世界の平和を守るために戦っていたとは。
少女は呟くように言った。
「私は今年で27だ」
え?
この子、今なんと?
27歳、俺より年上?
「ははは、紹介しよう完助殿……この子の名前はシュバリエ。星の姫を辞めて今は世界防衛指揮官をしておる、正真正銘の27歳じゃ」
「ま……まじッスか?」
「7年前に悪魔との契約に失敗して1年に1歳、若返ってしまう呪いにかかってしまったがの」
「え、え〜と……つまり」
「20歳の時に呪いにかかったから、肉体は13歳じゃな」
間様の仲間って、こんな人達ばっかりかも。
「フェノ、お前が呪いを解いてくれれば解決することなんだよ。まだ解く気にならんのか?」
「ははっ、もう少ししたら解いてやろう」
たぶん解く気ないな間様、面白いから。
「ところでシュバリエさん何スか、そのデカい槍は?」
「コレか?これは『天守閃幻』、私の相棒だ」
デカい相棒だこと……。
「……ん、話の続きだがシュバリエ。この前アパートにキングが来たぞ、サジタリアスの敵討ちとか言ってな。迷惑じゃたぞ、サジタリアスをボコボコにしたのはお主であろう?」
「確かに昔ボコボコにしたな、恋人になってくれって言うもんだから……しつこく」
「ほう……サジタリアスがお主のことをの」
「だから私は言ったのだ『弱いくせに私に惚れたお前が悪い』とな」
キツい!男がヘコむセリフワード3に入るくらいの言葉だな。
俺も加わって平和的に4人でお喋りしているかと思いきや3人は突然、恐い顔になった。
空が急に暗くなり、二度と見たくなかった黒いフードが空から降ってきた。
「フフフッ、復讐鬼は何度でも蘇るのだ!」
『月の王』のリーダーキングの登場である。
嫌な予感が当たってしまった。
「イムサ島は楽しかったかキング?」
「フン!生温いわフェノクロス、あの程度で俺が凍え死ぬとでも思ったか!」
黒いコートから少しだけ『ホカホカ貼るカイロ』が見えてるぞキング、意地を張るなよ。
するとドコからともなく現れるチャールズ。
「侵入者ダ!厳戒態勢準備にかかレ〜!」
「却下ですわ」
ドスッ
「ぎゃふっ!」
刀の柄の部分でチャールズの脇腹を突く麗華ちゃん。
チャールズはその場に倒れた。
麗華ちゃんの左手には咲夜華が握りしめられている。
「手を貸しますわよ」
「いやいや、私達の問題じゃから麗華殿は刀を収めてくだされ」
戦いたくてウズウズしていたのに残念そうな麗華ちゃん。
ならば!と、ピョン太が現れた。
「なら僕にお任せ下さいピョン!こんなヤツ僕の召喚でイチコロだピョン。ヘルハウンドにグレムリン、ガーゴイルにア〇ス。なんでもOKだピョン」
だから間様だけで十分だっつーの。
それに召喚ならピョン太より終羽里の方が役に立つし。
「フッ!前回の油断した俺だと思うなよ……今度こそキサマらを殺してやる!」
キングは叫んだ、今回は本気のようだ。
「偉そうなことを言うようになったなキング」
シュバリエさんが槍を構える。
「お下がりください間様、俺の力は間様を奉仕するための力です」
クナイを構える結衣さん。
俺は大きく息を飲んだ。
シュバリエさんは羽が生えたかのように空に飛び上がり轟き叫んだ。
「堕ちろ!閃幻落鷹刃!」
空からキング目掛けて槍を疾風の如く投げた。
うおっ!めちゃくちゃカッコイイ技だ!
「スカーレットブレイク!」
紅いバリアのような防御魔法でキングはシュバリエさんの槍を防いだ。
言うだけあってなかなかやるなキング!
ピョン太は口を開けたまま放心状態、あまりに自分とのレベルの違いに驚きを隠せないようだ。
「そんなに驚くほどでもないぞピョン太殿、あの程度の魔法なら終羽里殿が楽々使ってたぞ……な、終羽里殿」
間様の隣に、いつの間にか立っていた終羽里。
「……たしか、ピョン太さんが難しいからって私にくれた本に書いてあったから1時間で会得したわね」
「ガ〜ン!!」
ピョン太はショックのあまり泣き崩れてた。
別に妹はピョン太の弟子じゃないけど、青は藍より出でて藍より青し……みたいな。
魔法の才能無さ過ぎだぞピョン太。
「次は俺だ!」
勇ましく結衣さんが前に出る。
しかし間様が割って入り、結衣さんの腹部を軽くポンっと叩いた。
「結衣、お前の気持ちもわかるがココは私が……」
「しかし!」
「案ずるな結衣」
間様は両手を前に突き出した。
「神無!」
キングの腹の部分に赤い星形のマークが浮かんできた。
「同じ手は喰らわんぞフェノクロス!」
「泡!」
ガキィン!
「なにっ!?」
地面から現れた無数の鎖によって手足を縛られるキング。
なんか前回と状況が変わらないような。
「十六夜!」
指をパチンと鳴らす間様。
「うおぉぉぉぉぉぉぉ!」
キングがうめく。
すると、みるみる小さくなるキング。もはや間様の技は何でも有りだな。
「まったく、いつもオイシいところばかり持って行くな……フェノは」
「そう言うなシュバリエ」
間様はキングをビンの中に入れた、間様ってビン好きだな。
「くそ〜出しやがれ!」
ビンの中で暴れ出すキング、ついでに間様は魔力も奪ったようだ。
「長い物には巻かれろってな、キングよ……」
間様はそう言ってキングが入ったビンを庭の花と一緒に並べた。
キングにとって、これほど屈辱なことは無い。アパート住民の観賞用になってしまったのだ。
こーして再び間様によってアパートの平和は守られた……みたいです。