表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/38

20話「危険な来訪者」

台風が近づいていることもあって今日は激しい雨と風がクタビレ荘を襲っている。

そして夜、事件は起きた。


ゴロゴロ


ドカ〜ン!!


鼓膜をつんざくかのような雷がアパートに落ちた。

「ふにゃぁぁぁぁ!」

寿さんの叫び声を聞いてアパート住民全員が傘を差して外へ出た。

「うるさいですわバカ幽霊!私の眠りを妨げるんじゃありません!」

麗華ちゃんの怒鳴り声。

空からフラフラと降ってくる寿さんの体は焦げていた。

「大変だ!」

すぐに俺は階段を降りて寿さんを‘受けとめる’


「大丈夫ですか寿さん?」

「はうぅ……私は眠れないから雨さんとお喋りしてただけなのに、いきなり黒い‘ふ〜ど’を被った人に雷をどか〜んって」

雨との会話は無理があるな。


それを聞いたチャールズは叫んだ。

「侵入者ダ!厳戒態勢準備にかかレ〜!」

すると珍しくチャールズに従うアパート住民。

「みんな急いで〜」


愛子さんが光太郎さんや子供達に指示をだし、家から板や釘……かなづちを持ってきてアパートを囲むようにバリケードを張る。

俺も手伝った。


雨が募る中、作業は着々と進む。

チャールズと鈴木はもちろん、一撃家も積極的に板に釘を打っていく。

友蔵なんて驚くほど手慣れた手つきである。

麗華ちゃんも渋々、扉に南京錠をかけながらブツブツ言っている、恵理華ちゃんも麗華ちゃんを励ましながら手伝っている。

あれれ?先に南京錠かけたら俺たち家に入れないような……?


バリケードの外ではロザリオ片手にピョン太がセメントを板に塗り付けている。


バリケードを一層強化するためだろう。


「どうか神さま助けてくださいピョン‘僕だけ’でも助けてくださいピョン」


そしてピョン太は気付いた、自分だけバリケードの中に入れないことを。



「ぎゃぁぁ!呪われろ呪われろ!みんな呪われろピョ〜ン!」


馬鹿ウサギ。


そーいえば間様と結衣さんの姿が見あたらないな?

「間様と結衣さんを知らないか?」

俺は何故かバリケード作業を手伝わない終羽里に聞いたが、終羽里は首を横に振り口を開いた。

「……兄さん」

「なんだ?」

「……寿さんは普段アパートの屋根に住んでいて、屋根の上で黒いフードの人に襲われたのよね」

「……だな」

「……なら黒いフードの人は既にアパート内に居ることになるわね」



みんなの作業がピタッと止まった。


「がっはっはっ!一本とられたの」

大爆笑の友蔵。


「あんたの一言に乗せられた私がバカでしたわ」


ガン!


とりあえず麗華ちゃんはチャールズの頭をかなづちで叩いた。


俺はもしやと思いハシゴを使って屋根に上る。


屋根の上のわずかな平面に間様と結衣さん、そして黒いフードの人が立っていた。

フードのせいで顔はみえない。

「久しぶりだなフェノクロス、まさかこんな所で管理人をしていたとは思わなかったよ」

声からして男のようだ、そして間様のことをフェノクロスと呼んでいるが何者なんだ?

間様は訝しい顔でフードの男に話しかけた。

「お主……まさかキングか?死んだんじゃなかったのか?」


「地獄の底から戻ってきたと言っておこうか」


キングという男が右手を空に掲げると、結衣さんが間様を濡れないようにして持っていた傘が宙に浮き、そのまま空の彼方へ飛んでいった。


超能力か!?

しかし全然話がみえない?俺は結衣さんに尋ねてみた。

「結衣さん、間様と彼の関係ってなんなんですか?」

「俺も詳しく知らないのだが、昔の間様は世界の平和を守る組織『星の姫』のリーダーだったらしいんだ」

世界の平和?星の姫?間様ってなんだかスゴい人のようだが……本当かな?普通に考えると馬鹿げた話だが。


「じゃあフェノクロスって?」

「たぶん間様のコードネームだろう」


コードネーム!?

俺の想像を遥かに超えているぞ。


「私は組織を辞めたのだがな……キング、とりあえず意向を聞こうではないか」


間様はキングに聞いた。


「フッ、無論今は亡き我が同士サジタリアスの敵討ちだ!」


「サジタリアスと戦ったのは私じゃないし、死んでもないぞ」

「えぇ〜い黙れ!キサマらと戦って負けたのなら死んだも同然だ!」


二人の会話を聞きながら、俺は再び結衣さんに尋ねた。

「キングって人は間様になにか因縁でもあるんですか?」


「間様の組織をパクって『月の王』という悪の組織を作ったのがキングだが」

「なんか強そうな組織名ですね、死人とかでたんですよね?」

「いや……『星の姫』の圧勝、間様の組織は死人どころかケガ人もでなかったらしい」

めちゃくちゃ弱いぞ『月の王』!

めちゃくちゃ強いぞ『星の姫』!


「これは私とお主の問題じゃからアパートの者には手をださんでくれんかの?」


「愚問だな、俺はキサマから大切な者を全て奪いにきたのだ!」

要するに間様と戦って勝てないから知人だけでもと言う訳ですか、でもアパートの住民は皆さん十分すぎるくらい強いと思いますよ。


呆れたように間様は大きくため息をしてから指をパチンと鳴らす。

するとキングの黒い服の腹の部分に赤い丸模様が浮かんできた。

結衣さんが驚きながら言う。

「あれは修羅!」

修羅?よくわからんが間様の技っぽいぞ?

「キングや、もう私からは逃れられんぞ」

すると間様は結衣さんに聞いた。

「結衣、世界で一番寒い場所は何処かの?」

「私が知る限りでは、おそらくイムサ島かと」

「よし決まりじゃな」

間様はニコッと笑ってキングを指差した。

「刹那!」

キングが宙に浮いた。

どーやら刹那とは相手を浮かす技のようだ。

「キサマ!何をする!?」

キングは宙に浮いたままジタバタと抵抗している。


「夜行虫!」


……シュン!


宙に浮いていたキングは一瞬にして消えてしまった。

「間様、何したんですか?」

「そう驚くな完助殿、ちょっとイムサ島まで飛ばしただけだ」

平然とした顔で間様は言った。

いつの間にか雨もあがり静かな夜になっていた。


今回わかったことと言えば、間様はゲームでいう最強の反則キャラということだな。


ところでこのバリケードどーしよう……。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ