19話「尾行」
俺にはすご〜く気になることが3つある!
間様の年齢、アパート住民の収入源(特に立花家)
そして東野さんのプライベート。
「すいませ〜ん」
小鳥の囀りとともに東野さんの声がアパート中に響き渡った。
天候は曇、どーやら台風が近づいているようだ。
俺は2階から下を見下ろすと、東野さんは103号室の前に立っていた。
手に持っているのは鳥かご。
「待っていたぞ東野殿」
間様は小鳥の入ったかごを手にして笑みを浮かべている、俺は間様に聞いた。
「なんの鳥ですか?」
「海外から取り寄せたロビンという小鳥での、鳴き声が美しいのじゃ」
間様は最近小鳥の絵を描くことにハマっているようで、いつも庭に出て空をみている。
ついに購入までしたようだ。
東野さんが間様に礼をして帰ろうとした。
「待ってください東野さん!聞きたいことがあるんです」
「なんですか?」
俺は東野さんに歩み寄り聞いた。
「東野さんってプライベートは何をしてるんですか?」
東野さんは一滴の汗を垂らし空を指差して言った。
「あっ!あんなところにみんな大好きア〇パンマンが!」
「なにっ!!」
……シュタタ!
俺が空に目を奪われた隙に東野さんは走ってアパートから離れた。
「しまった!別にア〇パンマン好きじゃないのに〜」
「哀れじゃぞ完助殿」
くっ!ますます知りたい東野さんのプライベート!
俺はすぐに東野さんを追いかけた、間様は笑顔で俺に手を振っている。
サンダルを履いてきてしまった、走りにくいが後悔しても遅い。
もう少しで東野さんに手が届きそうになった時、死角になっていた横道から自転車に乗った女性とぶつかった。
……ガシャーン!
「どわっ!」
自転車の前輪に足が挟まり倒れた。
「イタタタタッ!」
「いきなりビックリするやんか〜」
おや?この声は?
「あれ?晶子ちゃん?」
「あ〜!完助君やんか、何してんの?学校は?」
「晶子ちゃんこそ?」
「ウチの学校は創立記念日で今日は休みやねん」
ガムを噛みながら晶子ちゃんは自転車を降り、俺に手を差し伸べてくれた。
俺はその手をつかんで起き上がり、ズボンを叩きながら東野さんを確認する。
まだ追いつける範囲だな。
「……で、何してんの完助君?」
「いや〜それが」
東野さんの日常生活が知りたくて追いかけてるなんて言えないかも。
バカバカしい話だし。
「説明しよウ!」
ドコからともなく現れた二人の軍人チャールズと鈴木。
「完助ボーイは東野ボーイのプライベートが知りたくて尾行しているのダ!」
「テメェがなんでソレを!?」
「間嬢に聞いたからサ!」
チャールズは俺に向かってウィンクをした。
気持ち悪いわ!
「ふ〜ん、オモシロそうやな〜」
あまり関心することじゃないと思うんだけどね晶子ちゃん。
「オモシロそうやけど、今からたこ焼き買いに行こう思ってたしな〜」
「いやいや、たこ焼き優先してよ」
俺は晶子ちゃんの肩を軽く叩いて誘導した。
「わかった……ほな、あんまり無理したらアカンで」
心遣いありがとう晶子ちゃん。
自転車に乗って去っていく晶子ちゃんに手を振る俺、敬礼する二人の軍人。
「……で、お前らは付いてくるのか?」
「当然ダ、それが間嬢からの命令なのでナ」
「よろしくッス兄貴!」
間様も東野さんのことを知りたかったのだろうが、何故この二人なんだ?
結衣さんでいいじゃないか?
「まかせロ、尾行は得意ダ」
……だろうな。
とりあえず俺たち3人は東野さんが向かったと思われる方向へ走り出した。
電柱などに隠れながら進むチャールズと鈴木。
周りの歩行者にジロジロ見られて恥ずかしい。
「おいおい、完全に見失ったぜ」
「そんな時は鈴木の鼻が頼りダ」
「了解ですチャールズ軍曹!」
クンクンと辺りを嗅ぎまくる鈴木。
犬かよ!
「あっちです!」
鈴木が指差す方に走り続けること10分。
東野さんが研究所のような家に入るのが見えた、ちゃっかりスゴいぞ鈴木。
「よシ、フォーメーションBで突入すル」
なにそれ?
鈴木はピストル、チャールズはショットガンを手に取り東野さんの家らしき扉を蹴破った。
……ドン!
そこまでするか普通!?
二人は家の中へ入っていった、後を追う俺が見たものは機械や様々の商品が散乱している光景だった。
「なんだコレ?なんの店だ?」
そーいえば玄関に
「蒼い空豆」
と書かれた看板があったような?
一応お店のようだが、なんでも売ってるのかな?
DDT(使用禁止にされている強力な殺虫剤)もあるし、つーか以前我が家に黒い悪魔が出た時にコレ欲しかったな。
……ウィーン
「完助ボーイ!何者かが接近中ダ!」
目を凝らして見てみると東野さんが歩いてきた、しかし様子がおかしいぞ?
まるでロボットみたいな動きだ?
ウィーン……ガチャ!
「東野さん?」
「侵入者ヲ排除シマス」
……ドキューン
手を伸ばした東野さんの指が俺目掛けて飛んできた!
「ミサイル攻撃ダ完助ボーイ!」
「ぎゃああ!」
ドカーン!
「撃て鈴木二等兵!」
「ハッ!チャールズ軍曹!」
ズドドド!
チャールズと鈴木も銃を乱射!
この世にロボットは実在したのか?しかも東野さんがロボットだったなんて……。
東野さんの目からビーム、口から火炎放射!
戦場と化した
「蒼い空豆」
……ポチッ
しばらくして東野さんの攻撃が止んだ。
東野さんの背中にあるスイッチらしきものを押した身長約2……3メートル!の男。
「いやぁ〜すまない、うっかり暴走警備モードにしてしまったよ」
「誰?」
「私はこの店の店長で空豆店長と言います、東野の生みの親ですな」
「や、やっぱり東野さんはロボットなんだ?」
「いかにも!私の自信作ですよ」
尾行して得したような損したような、不思議な気分だ。
「どーやラ、任務完了のようだナ」
「はい!遂行してやりましたよ軍曹!」
二人の軍人は涙を流して抱き合った。
前代未聞のオチだったな……。
☆プロフィール
なんでも屋
「蒼い空豆」
空豆店長
年齢……42歳
※蒼い空豆の店長。東野さんの生みの親。笑顔がステキな巨人。
東野さん
年齢……?
※普段は普通の人間として『やりすぎ宅急便』宅配員(空豆店長と二人だけで働いてます)。背中のスイッチを押すと空豆店長自慢のロボットになるのだ!