14話「黒い悪魔」
秋……読書、食欲、いろいろある。
そして俺の目の前にはアイツがいる。
「終羽里……ドコへ行くんだ?」
「……学校の友達と遊びに行くの」
「その前に……お願いが」
「……怖いのゴキブリ?」
「ぐはぁぁ!その名前を言うなバカ!コイツは悪魔だ!黒い悪魔!」
動けない、今朝アレを台所で見てから俺は動けない!
怖い……昔からアレだけは苦手なんだ俺。
せっかくの日曜日なのに朝から気分が悪いぜ。
「ほら……コイツの魂抜くなり魔法をかけるなりして殺してくれ終羽里ちゃん」
「……かわいそうだから無理」
そー言って遊びに出かける妹。
こんな時だけ普通の小学生になるな!
……カサカサ。
「うおっ!冷蔵庫の下に入りやがった!」
助けを呼びに外へ出たいが、素早いアイツが俺の足元まで来るかと思うと怖くて玄関まで行けない……。
……ガチャ。
「失礼すル!」
チャールズ!鈴木!よく来た!
「完助ボーイ、任務のためにトイレットペーパーを分けてもらえるカ?」
何故にトイレットペーパーが必要なのかは今は問うまい!
「はい!いくらでもあげますからコイツなんとかしてください!」
地面を這う悪魔に気づくチャールズ。
「うむ……小さくて素早い敵だナ、明日まで待ってくれれば最新型ライフル銃が手に入ル」
待てるかっちゅーの!
別にライフルじゃなくてもいいじゃないか!
「では失礼すル」
「頑張ってください」
ちゃかりトイレットペーパーを手にして立ち去るチャールズと鈴木。
クソッ!いつの間に……仕事できるタイプだなアイツら。
そして二人も絶対苦手なんだアレが。
このままじゃ埒が明かない……なんとかしなくては。
するとドアの向こうから双子姉妹の声が微かに聞こえた。
「うおぉぉ!麗華ちゃ〜ん!絵理華ちゃ〜ん!」
俺は精一杯に叫んだ。
……ガチャ。
「うるさいですわ完助!」
「どうしたんですか完助さん?」
俺は沈黙のまま床を指差した。
「あら……悪いわね完助、私も絵理華も気味悪い系はアウトですわ」
「そこをなんとか……その刀でズバッと」
「NO.50『衣莉表山音虎(いりおもてやまねこ』はゴキブリを斬ることができない刀ですのよ」
そんな都合のいい刀があるかよ!
「ゴキブリごとき己の力だけでなんとかしなさい!行くわよ絵理華!」
「ごめんなさい完助さん」
……バタン!
ごとき?アレごとき?
己の力で?
……半端じゃない生命力のアレと戦えというのか!
……カサカサ。
「くっ……やってやろうじゃねーか」
俺は足元にあった新聞紙を棒のように丸めて構えた。
【俺の体力……1000】
【アレの生命力……1000】
俺の頭の中でゴングが鳴った。
……カ〜ン!
「先手必勝じゃ〜!うりゃぁぁぁ!」
台所付近を這っていたアレ目掛けて新聞紙を叩きつけた。
……バシッ!
飛ぶアレ!
「ああああ!」
アレは俺の耳元を掠めて窓際に移動。
「はぁはぁ……野郎ぉぉ!」
どーやらアレも戦闘態勢、やる気満々らしい。
「乱れ打ちじゃ〜!」
……バシッ!バシッ!バシッ!
「さらに!見様見真似……立花流奥義!怒羅魂・土裸射舞!」
……バシーン!
「ひゃははは!ざまーみやがれ!」
人間は興奮すると性格が変わります。
……カサカサ。
「何っ!全て避けたのか!」
コイツ戦闘慣れしてやがる……手強い!
【俺の体力……650】
【アレの生命力……700】
なんか作者好みのバトルになってきやがったぜ。
アレの戦闘力も飛躍的すぎる。
「長期戦はマズい……くらえバケモノ!オラァァ!」
……バシッ!
「アタタタタタタタタ!」
……バシッバシッバシッバシッ!!
俺の後ろに回り込んだアレは再び俺目掛けて飛んだ!
空中で叩き落とす俺!
「アチョー!」
【俺の体力……200】
【アレの生命力……200】
「ゼェ……ゼェ……そろそろケリをつけようぜ」
ドラゴ〇ボールの〇空とベ〇ータ並の戦いだったが〇ジータは決して悟〇には勝てない!
そして俺が〇空……キサマがベジー〇だ!
俺は冷蔵庫から栄養ドリンクを取り出し飲み干した。
「プハァー!」
【俺の体力……500】
「卑怯者だと?フン……勝ちゃいいんだよ卑怯でもな」
人間は追い込まれると卑怯者になります。
聞こえないハズのアレの声も聞こえたりします。
「俺は残りの体力を使ってキサマを倒すぞ!黒い悪魔!」
覚悟を決めたのかアレはロケットのように飛んできた!
とっさに俺は窓を開けて新聞紙をフルスイング!
アレと一緒に新聞紙も窓の外へ飛ばした。
……ドキューン!
「地球外まで飛んでいきやがれ!」
【俺の体力……限りなく0】
【アレの生命力……0】
「はぁ……勝った」
戦いは終わった。
完全勝利だ!
「ふぅ〜、シャワーを浴びて汗を流すとするかな」
俺はタオル片手に風呂場へ向かう。
……カサカサ。
再び頭の中でゴングが鳴った。