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12話「花火大会〜後編〜」

賑やかな夜更け。

空を見上げると綺麗な月が俺達を優しく見守ってくれているように見えた。

祭りは続く、花火も今は少し休憩しているようだ。

出店を転々とする俺達。

眠たいのか、妹は目を擦りながら俺達の後ろを付いてくる。


「終羽里……間様達の所に戻ったらどうだ?」

「……大丈夫」

人間離れな妹とは言え‘一応’子供だからな、普通に可愛いとこもあるもんだ。


絵理華ちゃんが気がつき、終羽里の手をつないで歩く。

《金魚すくい》

晶子ちゃんが次々と金魚をすくうのを隣で見る俺達。

「結局出店に来ちゃったね麗華ちゃん」


「絵理華や晶子がどーしても行きたいって言うもんだから仕方ないですわ」

髪を掻き分ける麗華ちゃん。

うっ……普段恐ろしい子も可愛く見える仕草。

妖艶な真紅の浴衣、麗華ちゃんが着ると貫禄もあるけど……。

一方の絵理華ちゃんはピンク色の可愛らしい浴衣。

さすが美人姉妹、雑誌の表紙を飾ってもおかしくない。

「あの……完助さん、あまり見つめられると恥ずかしいです」

上目遣いで絵理華ちゃんが聞いてきた。


「え?あ〜ゴメン、あまりに可愛らしっ……!」

明らかに感じる殺気に言葉が出なくなった。

俺の背後にピッタリくっつく麗華ちゃん。

「あら……?私の誕生日プレゼントは完助かしら?」

鞘から刀を抜く音が微かに聞こえた。

「完助君どないしたん?スゴい汗やで?」

金魚すくいを終えた晶子ちゃんが聞いてきた。

あのね晶子ちゃん、今俺はこの場で首と体がお別れして周りで祭りを心の底から楽しんでいる子供達に赤い血をぶちまけちゃうかもしれない状況にいるんだよ……。

情けないが救いを求めてチラッと妹を見る。

妹は絵理華ちゃんと手をつないだまま、歩きながら寝ていた。

お〜い!



……ドン!

「痛っ!」

晶子ちゃんの肩にぶつかる長身の男、そして走り出した。

「なんやねん!ムカつくな〜」

そー言って浴衣の袖に手を入れる晶子ちゃん。

「あ〜!ウチのサイフがない!」

叫ぶ晶子ちゃん。

「さっきぶつかったヤツに盗まれたんや!お気に入りやったのに……」

「行きますわよ絵理華!」

麗華ちゃんと絵理華ちゃんは走って男を追いかけた。

絵理華ちゃんが手を離しても終羽里は立ちながら寝ていた。


晶子ちゃんに終羽里を任せて姉妹を追いかける俺、やはりココは女性に任せる訳にはいかないだろ!俺がサイフ泥棒の男を捕まえてやる!

「誕生日プレゼントのターゲット変更ですわ!」

すぐに男に追いつき高くジャンプする麗華ちゃん。

「絵理華!スタンバイ!」

すると絵理華ちゃんは袖に手を入れて桜の花びらを取り出して撒き散らし、麗華ちゃんが叫んだ。

「立花流コンビ奥義!裂倉腐武器さくらふぶき!」


ドスッ!

見事な峰打ちが首に命中して男は倒れた。

ただ桜の花びらを撒く担当の麗華ちゃんは少し恥ずかしそうである……たぶん麗華ちゃんに無理矢理やらされたんだな。


しかも相当リハーサルをしたのだろう、桜の花びらと麗華ちゃんが素晴らしいくらいマッチしている。

周りからは拍手。

俺は何も役に立たなかった。

刀を鞘に収めた麗華ちゃんに駆け寄る。


「やっぱり麗華ちゃん、殺さないって信じてたよ」

「チィ……間違えましたわ」

……はい?聞き間違えかな?聞き間違えであってほしいな……。

「ありがと〜麗華!さっすがやな〜!」


麗華ちゃんは男からサイフを取り上げて晶子ちゃんに渡した。



「安いよ安いよ〜!」

遠くから聞き慣れた声、俺は声の聞こえる方を見た。

なんでも売る運び屋の東野さんが普通に出店で本物の車を売っていた。

「あ!完助さん見ていってくださいよ……安いですよ!」

ツッコミを入れたら負けだ……無視だ、久しぶりの登場だが悪いな東野さん。

祭りで車を売る神経がわからん。

さすがに一般のお父さん方も引くわ……。

一獲千金を狙ったのだろうが明らかに失敗である、つーか車を用意するのに金使って逆に自滅している可能性が高いぞ……。

気付け!東野さん!


東野さんをスルーして、射的をしていた光太郎さんと息子二人に合流した。

恥芽の顔には包帯が巻き付かれていた、愛子さんに治療してもらったのだろうがなんとも痛々しい。


そして花火の休憩も終わる頃だと思い川沿いへ移動した。

川沿いには花火を見ようと人が集まっていた。

「うわぁ〜、これじゃ身動きがとられへんやん」

晶子ちゃんがムッとした顔で言った。

確かに人が多すぎる。

「これじゃ宴会場まで戻れないな」

「心配いりませんわ完助、斬り倒していけばいいだけの話……」

もちろん瞬時に絵理華ちゃんと晶子ちゃんが殺戮マシーンを押さえる。

「コラッ!離しなさい!」

野放しにしたら惨劇を見ることになるから却下。


……ド〜ン!

再び花火が打ち上がり、周りから歓声があがる。

そして動き回る人混みに流されて麗華ちゃん達と離れ離れになってしまった。

「うがぁぁ!」

人とぶつかって拳使郎が転けそうになった。

……ガシッ!

いつの間にか起きていた終羽里が拳使郎の手をつかんだ。

「……大丈夫?」

「お……おうよ!」


トマトのように顔を赤くして声が裏返る拳使郎。

マンガで例えるなら拳使郎の周りには

「ドキーン」

の描き文字が出ているだろう。

そして俺は見た!

妹の底知れぬパワーを……!

拳使郎を起こそうと引っ張った妹。

……ドキューン!

飛ぶ拳使郎!

「ああああああ!」


……ボチャーン!


数メートル飛んで頭から川に落ちた。

「拳使郎!」

「兄ちゃん!」

慌てて追いかける光太郎さんと恥芽。

たぶん妹には悪気はない、普通に起こそうとしただけなのだろう。

「終羽里……手加減と言う言葉を知っているか?」

「私には不要な言葉よ兄さん……」

母さん、立派過ぎる女の子を産んでくれましたね。


「完助殿、終羽里殿」

間様と結衣さんだ。


「他の者はどうしたのじゃ?」

「たぶん宴会場に戻れたと思うんスけど」

ふ〜ん、とした顔で間様は空を見上げた。


「夏が終わるの……」

「そーですね、結局この夏休みの間に両親に会ってないな」


「いいのか?」

「ハハッ、いつの間にか両親もアパート暮らし認めてる感じっスよ……心配もしてないと思います」


「そうか……」

「また来年も皆で花火大会に来たいですね」

「……うむ」


花火も綺麗だが月もスゴく綺麗だった。

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