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10話「プール」

奇跡の塊……それがクタビレ荘。

前回、クーラー爆弾によってアパートが崩壊。

しか〜し!

間様の謎の権力によって24時間で

「クタビレ荘4号」

が建てられた。

住民は無傷、まず有り得ない……。

そして過去に2回崩壊していた事実。

間様に聞くと……1回目は愛子さんが料理中、不注意によるガス爆発。

2回目はピョン太が誤ってドラゴンを召喚して崩壊。

間様が言うに

「楽しければ崩壊を許可する」

らしい。

住民が住民なら管理人も管理人だな……。



……そして今回の舞台は市民プール。


夏休みも残り数日、アパートの住民があまり外出しないのを見兼ねて、間様の提案でプールに行くことになったのだ。



「冗談じゃありませんわ!海へ行くと思ってお気に入りのビキニを持ってきたのに庶民プールだなんて……庶民の分際で私のビキニ姿を見るなど汚らわしい」

「市民よ姉さん」

「キサマも歴とした庶民だバカ」

「な……今なんて言いまして?結衣!」


「庶民」


「キィーー!こんなことならピョン太と一緒にアパートに残るべきでしたわ!」


ピョン太は大学の都合上で部屋で実験に明け暮れているので欠席である。

《一撃家のグループ》


「いいか恥芽!俺と水泳で25メートル競争だ!負けたら腕立て百回だ!」

「無理だよ〜僕泳げないし、まず足が付かないもん」

「言い訳するな!」


拳使郎は恥芽をプールに突き落とした。


…ドボーン!

「うがばったす……助けばっ!」

何故か水着の代わりにフンドシを巻いている友蔵はソレを見て笑う。

「はっはっはっ、精進せいよ恥芽!」

そー言って毎度お馴染みの家訓が書いてある紙を溺れる恥芽に見せる。

今日の家訓は‘粒々辛苦’

意味は、コツコツと苦労を重ねて励むこと。

無茶があるな……。


父の光太郎さんは息子に見向きもせずに素晴らしいクロールでプールに来たお客の注目の的。

母の愛子さんはプールに来たお客さんとお喋り。


どーしようもない家族である。

プールに沈む恥芽を終羽里が助けた。

「お……女!俺達の修行の邪魔をするな!」

モジモジして恥ずかしがりながら拳使郎は終羽里に言った。


咳き込む恥芽の背中をさすりながら終羽里は言い返した。

「死んだら修行にならないわ、まずは泳げるようになるための修行をするのね……」

ごもっともだ妹よ!


「くっ……」

しばらく拳使郎と終羽里の睨み合いが続いた。

《チャールズのグループ》

チャールズと鈴木は水中でホフク前進をしていた……。

バカだコイツら。

声をかけにくいのでパス。


《立花姉妹のグループ》

プールサイドで立っていた恵理華ちゃんに話しかけようとした瞬間……麗華ちゃんの刀が俺の両肩に乗る。

「このまま首を跳ねてもよろしくて?」


「今日は二刀流ですか?麗華ちゃん?」


「プールなどの肌をさらけだす場所は妹に色目を使ってくる男が多いのよね」


確かに何故かスクール水着の恵理華ちゃんに目がいくのは当然だ。

「いい加減にして姉さん……」

呆れる恵理華ちゃん。

「あなたのことを思ってですわ恵理華!耐水効果のあるコレクションNO.55『真墜飛出騎まついひでき』とNO.18『荒威具魔あらいぐま』を手に入れるのにどれだけ苦労したと思ってるの!特に真墜飛出騎なんて……」


……と麗華ちゃんと恵理華ちゃんが言い争っている間に両肩の刀を退けて俺は二人から離れた。


《間様のグループ》


プールで泳ぐ人々を遠くから眺めている間様に近寄ると彼女の方から声をかけてきた。

「完助殿は泳がんのか?」

「泳ぐ気がしなくて……」

とても泳げる状況じゃない。

「皆をプールに連れてきて正解じゃな、私も足さえ動けば泳げるのにな」

少し俯く間様は寂しそうだった。

「そーいえば結衣さんは泳がないんスか?」

すると急に間様は笑顔になって言った。


「よくぞ聞いた完助殿!実は結衣はカナヅッ……」

とっさに結衣さんは間様の口を塞いだ。


「間様……いくら間様でも私の弱点を完助に言えば承知しませんよ」

すでに自分で弱点って言っちゃってるし……。

「結衣さんカナヅチなんですか?」

「修行をすればすぐに泳げるようになる」

結衣さんは少しばかり照れながら言った。

立花姉妹と愛子さんの水着姿も良かったけど、この二人の水着姿も見たかったな〜。

悲しきかな男の性。


「きゃあああ!」

恵理華ちゃんの叫び声!

俺はすぐに駆けつけた。

「どーしたんだ恵理華ちゃん?」

「プールにサメが……」

そんなバカな?

俺はプールを見渡すと確かにサメの背鰭が見えた、アナウンスでお客に全員プールから出るように指示がでる。

「どーしてサメが?終羽里、知ってるか?」

「友蔵さんが修行のためにプールに放したの……」

「バカじゃねぇ〜かテメェ!迷惑考えろや!つーか何処から持ってきた!」

「当然海に決まっとるじゃろ?」

バケモノかよジジィ……電車とかだと、すぐに警察に捕まるからコッソリと海からココまで己の力だけで持って来やがるとは……。

今までバレなかったのが奇跡だな。


続々と集まるクタビレ荘メンバー。

「間様、暗殺の許可を」

……と、結衣さん。


「何枚に下ろしましょうか?」

……と、麗華ちゃん。

「一撃で倒せるかしら?」

……と、愛子さん。


「おいしそう……」


……と、妹。

間様はひたすら笑い、ちゃっかり恵理華ちゃんも姉の応援。


女性陣が怖い。

男性陣は誰がサメを仕留めるか、賭を始めだした……その中にジジィの姿もあった。

責任とれやジジィ!


……ピーポーピーポー。

警察が来た。

ホッ……これで安心だな。

「君かね?サメをプールに放した犯人は?」

俺に問いかけてきた警察官。

「……え?」

すでに俺以外のクタビレ荘メンバーの姿は無かった。

あ〜い〜つ〜ら〜!


《警察署》

詳しく事情を話して、俺の疑いは何とか晴れた。

ざまーみろジジィ!


しかしアパートに帰るのが怖い。

バケモノ達の巣には帰りたくない。

「どーした?帰らないのか?」

「すいませんが今日1日だけココに泊めてもらえませんか?」

「よくわからんが若いのに苦労してるんだな」

「すみません……」


俺は生まれて初めて警察署で一夜を過ごした。

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