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1話「クタビレ荘へいらっしゃい!」

俺の名前は此似手完助これにて・かんすけ

警察署長の父と一流ファションデザイナーの母をもつ19歳。

将来の夢なんてコレっぽっちも無い大学生だ。

両親が金持ちなだけあって俺と12歳の妹、此似手終羽里(これにて・おわり)は裕福に暮らしていた。

しかし……仕事で忙しい両親は家に居ることはまず無い。

休みになると家に顔も出さずに海外旅行へLet’GOである。

痺れを切らした俺と妹は家を飛び出した。

これじゃ駄目なんだ……自分に厳しくなれ!今思うと働くということが何なのかもよくわからない。


バイトをしよう!自分で稼ぎ自分で授業料も払い俺が妹を食わしていくんだ!

……と、勢いだけで隣町まで来たものの……。

「道に迷ってしまった……」

すでに妹は白い目で俺を見ている。

「おかしいな……とんぼ町の阿修羅商店街はこの近くのハズなのだが」

何日か前に見つけた激安売り物件のチラシを頼りに地図を見るが……クソッ!暑い!汗が目に染みる!これほどメガネが邪魔だと思ったことはない!

そーいえばもうすぐ夏休みの時期だったな……。

炎天下の中で地図を持ち続けるのも限界に近づいてきた。

とりあえず二人分のジュースを自販機で買って日陰に休み、これから先のことを考えることにした。


しかし普段おとなしい性格な妹もついに口を開いた。

「兄さん……」

「ん?」

「ヘチョい……」

ガーーーン!

「男をみせろ……」

カガーーーン!

「休憩終わりじゃ!妹よ!!」

俺は気合いを入れ直し妹の手を掴んで走り出した。

ガムシャラに走る俺に後悔などない。

「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!」

もう誰にも俺を止めることなど……

「兄さんストップ……」

キキーーー!

ガシャーーーン!!

あっさり妹に止められてしまった。

急に手を離した妹のせいで俺はパチンコ店に並ぶ自転車に頭から突っ込みドミノ倒し。

「ぐおっ!しまった!」

俺は急いで自転車を元に戻す。

「見つけた……」

終羽里が指差す方には阿修羅商店街の西口と書かれた看板があった。

「見つけた!西口」

俺は叫んだ!

西口の辺りを見回すと小さなアパートを見つけた。

「あった!あったぞ妹よ!クタビレ荘だ!」

外れかけの表札!

2階へ上がるための階段の手すりは無く何カ所か木材の壁に穴が空いている……まさにボロアパート。

妹と同時に声がもれる。

「くたびれそう……」

すると車椅子に乗った女性と金髪ショートヘア+タバコ+黒スーツのガラの悪そうな女性がアパートの前に立っていた。

「はじめまして……103号室に住む管理人の(あいだ)じゃ」

澄んだような瞳で車椅子の女性が言った。

「はぁ……どうも」

俺は手を差し出した。

「きさまぁぁ!」

金髪の女性の迷いのない蹴りが俺の顔面にめり込んだ。

ドスッ!!

「ぎゃぁぁぁぁ!」

「お止め!結衣!」

車椅子の女性が止めに入る。

「しかし間様!こやつ間様に触れようと」

「触れるくらいよい、何事も警戒しすぎじゃ結衣」

「も……申し訳ありません」

結衣という女性も彼女には頭が上がらないといった様子だ。

「私から謝ろう完助殿……彼女は私の付き人で忍者の星崎結衣(ほしざき・ゆい)じゃ」

「忍者?ってか何で俺の名前を?」

「お主のお父上から連絡は受けておる」


何者だ!ウチのオヤジは?家でコッソリ物件チラシを見ているのを見られたのかな?

「完助殿!」

「はい?」

「ようこそクタビレ荘へ」

「はぁ……」

まだ正式に入居すると決めてないけど。

ま……いいか。

「完助殿と終羽里殿の部屋は201号室じゃ」

そう言って間様は俺に部屋の鍵と回覧版を渡した。

「回覧版?」

「今週のゴミ出しの日にちが変わったから連絡ついでに住人に挨拶してくるとよい」

間様は笑顔で言った。

「は……はい」

こうして俺とクタビレ荘の人々との生活がはじまった。

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