僕と彼女とアルマゲドン(16/25)縦書き表示RDF


僕と彼女とアルマゲドン
作:太郎鉄



アルマゲドンが終わるまで 5 そして、終局は近付き


僕は美佳に両脇を抱えられながら空を飛ぶ。

「ねぇ、隼太。これからどうするの?」

どうしよう。

「うん、そうなんだよね。やっぱりどちらにせよ、護身銃は取り戻さないといけないな」

「それじゃ、光の大元へ行く?」

僕はそれについて考える。美佳が一緒なら、あるいは誰も傷付けずに護身銃を奪い返すのも、そこまで困難ではないだろう。けど、単に奪い返すだけだったら根本的な解決には繋がらないんだよな…。

かといって、あのマイケルという兵隊さんを見る限り、どう考えても話し合いが通用する次元じゃないし…。

「ねぇ、どうするの隼太?」

実を言うと、何をするにも、その前に、僕にはしたい事がある。

父さんと母さんを探すのだ。多分無事だと思うけど、母さんの体調も大分悪かったし、どうしても気にかかってしまう。

とはいえ、美佳のおばさんが与えてくれた2日間の猶予をそれに費やす訳にもいかないし、それに、美佳の気持ちも察しないといけない。

美佳は家族を捨てて、僕を選んだのだ。その僕が、今ここで家族の安否を気遣うのは少しばかりアンフェアだと思う。

無性に名無しに会いたくなった。名無しなら、何か適切なアドバイスをしてくれる気がする。

「ねぇ、ちょっと聞いてるの隼太?」

「ごめんごめん。色々考えてたんだ。美佳ちょっと疲れない?よかったら、一度下に降りようよ」

「私は別に平気だけど、隼太が言うなら」

美佳と僕は着地した。

ここはどこだろう?僕が地理に弱い事を別にしても、ちょっとばかり荒れ過ぎていた。

元々は森だったんだと思う。折れた木々の残骸が何とかそれを思い起こさせるのだけど…。

木が折れすぎて、森特有の、ある種の匿名性みたいなものが失われていた。

つまり、木々に隠れて、ひっそりと生きている生物の面影みたいなものが、綺麗さっぱり損なわれている。

だから太陽の光が遮られる事もなく、ガンガンに日を照らしつける事によって、地面もカラカラにひび割れているのだ。

僕と美佳は大きな切り株(折れ株?)に、背中合わせで腰を下ろした。

「酷いね。これも護身銃の影響かな?」

何気なく、美佳にそう尋ねてみる。

「多分。降りる前、南の方向の大きな鏡がこっちに向いて立ってたのが見えたから」

僕は溜め息をつく。

鬼達が隠れられないようにこんな事をしたんだろうか?

「やれやれ」

「隼太って、やれやれって台詞がやたら似合うよね」

僕は心の中でやれやれと呟く。

「で、どうする?休憩したら、行くの?」

行くのか行かないかと言えば、行くべきだよね、やっぱり。

問題はどうやって、停戦を促すかなんだ。

「隼太が何を迷ってるのかよく解らないけど、私はずっと一緒なんだから、どれをしたって大丈夫だよ」

僕はドキリとする。背中合わせなので、美佳の表情は見えない。僕のドキリもバレてない。

ずっと一緒なんだから…?

そうなんだよね。ずっと一緒なんだ。でもずっと一緒だという事は、僕があれほど躊躇していた結婚をするって事で、でも結婚をするには法律的な手続きがいる訳で、法律的な手続きをするには、僕と美佳はあまりに世界の敵に過ぎる。

そういえば、僕も美佳も、もうどこにも属してないんだ。人間と鬼達の中間で、どちらからも疎まれている。

この世界に、僕らの居場所はもうないんだ。

泣きそうになる。それでも涙は出てこない。

『おめぇはもう、おめぇが決めるしかねぇんだ。どんなに寂しくったって、どんなに悲しくったって、どんなに自分が許せなくったって…』

こういう時、僕は必ず名無しの言葉を思い出す。名無しの言葉は、いつも僕の未来を言い当てる。

解ってるさ。大丈夫だよ名無し。世界は必ず救ってみせる。

「美佳」

「何?」

「全部終わったらさ、2人でどこか遠くへ行こうか」

「何々、新婚旅行?」

浮かれてる美佳の顔が、見えなくたって僕には見える。

「悪くないね、新婚旅行も」

「絶対、行こうね」

「うん、約束するよ」

背中から、美佳の体温が伝わってくる。

僕の中で、美佳の体温が勇気へと変換されていく。

いいさ、何とかしてやるよ。これまでだって行き当たりばったりで何とかやってきたんだから。今回も行き当たりばったりで、世界を救うまでの事さ。

「隼太のパパとママにもキチンと挨拶しなきゃいけないね」

美佳に、僕の悩みはバレていたらしい。美佳は僕の思っている以上に、僕の事を理解しているようだ。

「ありがとう」

と僕は言う。

「気にしないで」

と美佳が言う。

父さんと母さんにするのはきっと、別れの挨拶になるだろうけど、それでも、ここまで僕を育ててくれた両親に、何も言わずに消えるのはよくない。

顔を見ないで話し合うと、普段できない会話が成立するって事を初めて知った。

美佳の体温が名残惜しいけど、僕は重い腰を立ち上げる。

「行こうか」

僕は美佳に振り返る。

「どこまでだって、一緒にね」

美佳は僕に振り返る。

いつもの笑顔。そこにあるのが当たり前の笑顔。

美佳は僕を抱えて空を飛ぶ。


途中、護身銃の光が何発も僕らにとんでくる。

「しっかり捕まって!」

美佳は高速でジグザグに光を避けまくった。頭がガンガンする。

「ていうか、何で連射が出来んのさ?」

「充電の仕方によっては、10発まで撃てる仕組みになってるの!」

当時の僕も、それを知ってれば楽だったのに…。

「いくわよ隼太!」

「オッケー美佳!かっ飛ばしてくれ!」

あまりの速さに視界から色が消えていく。というか普通、生身の人間が耐えられるスピードじゃないでしょうに。

北極で美佳のおじさんが、僕の《体温を保った》ように、鬼の一族には、何かそういうものをコートするチカラがあるみたい。

あっという間に日本へ到着。護身銃の光はもう襲ってくる事はない。

彼方に、巨大な鏡のラッパ?というかメガホンが見える。

あれが地球防衛軍のキャンプなのか。

何もかもが、上手くいきますように。作戦は何もないけれど。

僕は神様に祈る。

もっとも、世界中の大体における神様がそうであるように、やっぱり僕が祈った神様も、願いを聞いてくれる事は無かった。

それから、空で《真っ黒》の気配を感じた。今回は姿が見えなかったけど、確かに空の奥で僕達を見ている。名無しと話したあの闇の中に行って以来、僕はそういう気配に敏感になっているようだ。

どうやら、終わりは近付いている。そんな予感がしていた。












ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




BACK | TOP | NEXT


小説家になろう