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#八 予期せぬ再会
 朝倉との初デート…その時に全てに決着を着けよう!そう心に決めていた。…でも、結果は何も出来なかった。
 帰り道のあの川原に着くまでは決まっていた。決めていた…。
 朝倉の素顔を観るまでは…。
 一層強くなった葛藤と、朝倉への罪悪感を抱えたまま一学期が終わろうとしている…。
 朝倉とはあれからも何度か会っている。デートと呼べる様な会い方ではないが、一緒に下校したり、途中で軽い食事をしたりはしている。こんなどっちつかずのスタンスでいつづけている俺みたいな奴の前でも彼女は嬉しそうにしてくれる…。



キ〜ンコ〜ン カ〜ンコ〜ン 〜〜〜
 一学期の期末テストの終わりを告げるチャイムが鳴った。
「よ〜し!!学園生活最後の夏休みだ〜!!」
 教室の後ろの方から奇声が聴こえた。その奇声の主はツカツカと背後から俺に近付く…。
「なぁ柊。最後の夏休みを有意義に過ごそうぜ!!」
 奇声の主、佐久野豊がありえないテンションで俺に話し掛けてきた!俺とは正反対に能天気な奴…。
「…何するんだ?」
「決まってんだろ、夏といえば!」
 わざとトーンを落として返事したが、豊には効果が無かった…。
「…夏といえば?」
 俺は諦めて、豊に問い返した。
「キャンプだろぉー!!」
 大声で叫ぶ豊!恥かしくないのか?
「なになに?キャンプに行くの?」
 再び豊が発した奇声に近くに居たクラスの女子、月島つきしま由実ゆみが反応した。
 月島は我校の女子陸上部の俊足エース。ショートカットが良く似合っている。
「あなたたち、キャンプに行くの?」
 月島は豊と仲が良いので、気さくに話し掛けてきた。
「そのつもりだけど…」
 豊が答えると、
「じゃー、女子のメンバーは私に任せて!男だけじゃ味気ないでしょ?」
「って、月島も参加するのか?」
「なによ!私が参加したら何か不都合でも?」
「いや、そうじゃないけど。部活は?インハイ出るんだろ?」
 月島と豊のやりとりを見ていると、何だか元気付けられる気がした。
「8月の頭以外なら大丈夫よ。それよりちゃんと男子の都合つけといてよ。あ、そろそろ行かなきゃ!」
 そう言って月島は嵐の様に去って行った。
「おいっ聞いたか?楽しいキャンプになりそうだなぁ!テンション上がってきた〜!」
「ははは…」
 俺は愛想笑いした。月島は女子の人望が篤いから、実現すれば相当なメンバーになりそうだ。
「お前、行くよな?」
 豊が訊ねた。
「あ、あぁ…」
「よーし!もっと声掛けねぇと。こうしちゃいられねぇ!」
 そう言って豊も教室から出て行ってしまった。
 たしかに、学園最後の夏休みだ、こういうイベントに参加しないともったいない。
(そうだ!)
 朝倉にも声を掛けてみるか。
 試験が終わった開放感からか?僅か数分の間で教室に残っている生徒はあと数人になっていた。俺も帰り支度を済ませ廊下に出て朝倉の携帯に電話した。数回コール音が響き、それが切れた瞬間、
「もしもし?朝倉、一緒に帰らないか?」
 間髪いれず俺が話し掛けた。
『うん、じゃあ、いつもの所で待ってるね』
「OK」
 いつもの所とは、学校を出て直ぐの所にある公園。
 電話を切った俺は急ぎ足で廊下を移動した。
 階段を下りて下駄箱に着いた。
“ドンッ”
「キャッ」
 突然、背後から衝撃を受けたと同時に、女性の声がした!
 俺は背後を気にしながら、振り向いた。
「!!!」
 なんと俺の眼前に立っているのはあの一年生だった!
 あの春に窓から見たあの子だった。あの時遠くからはっきりと顔を見ていないが、今、目の前に居るこの子で間違いない!そう瞬時に判断できた。
「すいません、私、携帯を見ていて…ごめんなさい」
 俺はただ茫然としていた。
「あの…大丈夫ですか?」
 その声で俺は我に返った!
「ん?あぁ大丈夫…」
「本当にすいません」
 その子は心底申し訳なさそうに何度も頭を下げている。
「いや、いいよ。気にしなくて」
「そうですか?すいませんでした」
 俺が右手を軽く挙げて応えると、その子は最後に深々と一礼して早々と去ってしまった。
「あっ!!」
 俺は何も言えなかった…。
 間違いなくあの日見たあの一年生だ…。時間が経つと同時に俺の鼓動が激しくなっていく…あの時以上に…。
 しばらくその場に立ち尽くして落着くのを待ちたかったが、朝倉を待たせてはいけないという思いがそうさせてくれなかった。
 靴を履いて校舎を出た瞬間、今度は激しい後悔に襲われた!何故もっと話しをしなかったのか!という後悔の念。その後悔と葛藤しながら朝倉の待っている公園に着いた。
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