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#七 出せない答え
「さて、どうします?」
 牛丼屋を出て直ぐに俺が訊いた。
「じゃあ、室内遊園地でジェットコースターに乗らない?」
「あれか…」
 俺は道を挟んだ向かいのショッピングモールの壁から突き出ているジェットコースターのレールを見上げた…。
 このショッピングモールに内にある室内遊園地。ここの名物アトラクションがこのジェットコースター。しかもそれは室内だけに留まらず、壁を突き破って屋外へと出ている!しかも一ヶ所だけではなく何ヶ所もそれがある。俺はこれに乗ったことは無いが、乗ったことのある豊曰く、『壁に突っ込む時の恐怖感は日本一』らしい…。
 言い訳ではないが、このテの絶叫マシーンは苦手ではない!苦手ではないが、乗らずに済むなら乗らないにこした事はないという主義…。
 しばらくして俺たちは長蛇の列の最後尾に並んだ。
「すっげー並んでる…さすが一番人気のアトラクション…」
「二〇分待ちだって…」
「・・・・・・・・」
 どっかのテーマパークじゃなくてただのショッピングモールの乗り物に二〇分も並ぶことになるとは・・・。
 そんなこんなで列に並んでから一〇分程が経った時。
「柊!?」
 列の外から名前を呼ばれた!
 声がした方を見ると何とそこに居たのは!!
「じゅっ純子先生!!」
 咄嗟に俺は叫んでしまった!俺の声に反応した朝倉と先生の目が合った!
「朝倉ぁ〜!?」
 先生はかなり驚いている。
 俺たちは半分くらいまで並んでいた列を外れ、純子先生の所に行った。どうやら先生もデート中の様で、先生の後ろには気まずそうにしている男の人が立っていた。
「ふ〜ん、あなたたちが付き合ってたなんてねぇ〜。担任のあたしですら気付かなかったわ」
 先生は品定めでもしているかの様に、俺と朝倉を交互に見ながら言った。
「あ、あの…」
「付き合ってません!!」
 俺が言おうとしたのを遮る形で朝倉が否定した!
 普段おとなしい朝倉が突然声を張り上げたので先生は驚いる。
「またぁ、大丈夫よ。誰にも言わないわよ。ほらっあたしたちもデート中だから、おアイコよ」
 先生は笑いながら言った。
「すいません…」
 沈んだトーンで朝倉は謝った。
「いいのいいの、お楽しみ中に声を掛けてゴメンね。じゃっ」
 言って先生は彼氏の手を引いて歩いていった。
「朝倉…」
「・・・・・・・・」
「気にしなくていいよ。純子先生怒ってないよ」
「・・・・・・・・」
「行こっ」
 俺は朝倉の手を取ってもう一度ジェットコースターの列に並び直した。そういえばこれが初めて俺から彼女の手を取った瞬間だった。



 周囲はすっかりオレンジ色になっている…俺たちは川原に居る。
 あれからジェットコースターに乗り、ペットショップで犬とじゃれたり、ショッピングをして、帰り道にこの川原に着いた。
 先生の事を気にしていた朝倉だったが、途中からはすっかりいつもの彼女に戻っていた。
「なんか、今日は色々あったな〜」
 夕焼け空を見上げながら朝倉が言った。
「そうだな〜。けっこう疲れた」
「ねぇ…もう少し話をしていかない?」
 朝倉が問う。
「いいよ」
 俺たちは川原の遊歩道の脇に腰掛けてしばらく今日観た映画の話しをした。
「朝倉がこんなに映画好きだったとはなぁ…」
「でも、家で良くDVDは観るけど、映画館にはあまり行かないの」
「そうなの?映画館の大画面と迫力の音響で観るのが気持ちいいのに」
「そうだけど…家でもそれなりの物があるから…」
「それってホームシアターってやつ?」
「うん…」
 一度朝倉の家に行った時(って言っても門の前だが)にかなりデカイ家だと驚いた。それなりの設備があってもなんら驚くことはないか…。
「そうだ、私の家に来ない?」
「え!良いの?」
「もちろんよ。なんなら今からでも」
「いや、今からは…迷惑だろ…」
 それにまだ彼女の両親に会うのは気まずい…。
「全然迷惑じゃないわよ。あっ、もしかして、親の心配とかしてる?」
 ギクッ!!
「あっそうか、まだ言ってなかったわ。私の両親は二人とも今海外に行ってて家には居ないのよ」
「え!じゃあ朝倉ってあの家に一人暮らし?」
「ううん。妹がいるの。それに今はお姉ちゃん夫婦が一緒に住んでるの」
 それで告白された日にいきなり家に誘ったのか。いくらなんでもあのタイミングで即に家に招待はしないよな…。
「お姉ちゃんは放任主義だから、帰りがめちゃくちゃ遅くならない限り大丈夫だし」
 それはそれで問題がある気がする…。
「もし良かったら…」
 正直迷った…今日のデートが終わるまでに“答え”を出すと決めているのだから…。
「う〜ん……、今日はやめとくよ。また誘って」
「わかった…ごめんなさい…強引に…」
「気にすんなって、必ず約束するから」
「ありがとう」
 彼女がそう言った瞬間。
『ポツリッ』
 一粒の雨粒が朝倉の眼鏡を濡らした。それを拭こうと彼女が眼鏡を外した…素顔の朝倉を初めて観た…。
「!」
(似てる…!)
 あの春の日に窓から見た一年生に!
「どうしたの?」
 朝倉が呆然としていた俺に不思議そうに問いかけた。
「いや、べつに…」
 朝倉の言葉で俺は我に返った。
「雨が降りそうだから、そろそろ帰りましょうか?」
 朝倉は笑顔でそう言った。
「あ、あぁ…」
 思いもしなかった光景で結局“答え”は出せなかった…。今日のデートが終わるまでに出そうとしていたものを・・・。



 こうして朝倉との初デートは終わった…。
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