#六 初デート
朝倉とデートの約束をしてから早3日…日曜の朝をむかえた。
あれから朝倉と直接話しをしていない…。けど、頻繁にメールのやりとりはしている。
もちろん、あの一年生は未だに見付けられてない。実を言うと自分の中で、もうあの子を諦めようかという気になっている。
理由は簡単だ、一度しか見ていない女の事で朝倉には言いようのない位の迷惑を掛けている…。そんな朝倉の為にももう諦めて彼女に応えてあげた方が良いに決まっている。…俺も、朝倉の事が…好きだ。今の様な関係になってまだ数日だが、どんどん彼女に惹かれている。その事は自分自身良く解かっている。朝倉と一緒に居ると心地良い。
(今日のデートで朝倉と別れる前にこの問いに答えを出そう!)
身支度の途中、俺は決心した。
そんな事を考えていると時が過ぎるのは早いもので、あと少しで待ち合わせの時間となっていた!俺は慌てて家を出た。
待ち合わせの時間に少し遅れて待ち合わせの公園に到着した。
が!
公園内を見渡しても朝倉の姿はなった…。
(良かった…間に合ったみたいだ…)
「!!」
と思った瞬間、俺は「ヒィ!」と奇声を発しそうになるのを必死で抑えた!突然、頬を冷たい感覚が襲ったからだ!
「おはよっ」
背後から声がしたので振り返ると、コーラの缶を持った朝倉が立っていた。
「ハイっ。走ってくかと思って買って来たよ」
そう言って彼女はコーラの缶を差し出した。
「ごめん…」
言って、俺はそれを受け取った。
「ううん、気にしないで」
そう言って、朝倉も持っていた自分のコーラの缶を開けた。
「カンパーイ」
朝倉は自分の缶を俺の缶に近付けた。
「どこに行く?」
そう訊ねると、朝倉は笑顔で、
「うふふ…来て」
俺の手を取り、公園を後にした。
辿り着いた先は隣町のショッピングモールだった。
「ねぇ、映画って好き?」
朝倉が訊ねた。
「うん」
社交辞令ではなく、俺は本当に映画が好きだ。
「よかった。一緒に観たいのがあったの。あっ!もしかして観たいのがある?」
「いや、特に無いけど」
とは言ったものの実は気になっているものがあったのだが、今日は彼女の想いに応えると決めているので彼女を尊重する。
俺達はショッピングセンター内の映画館へと向かった。
このショッピングモールは郊外型の大型店で地域最大。大手スーパーマーケットが主体となって、数十店のレストランに映画館、さらには室内遊園地、室内プールまである。特に目的が無くても一日過ごせる場所だ。
「これなんだけど…」
映画館に着くと彼女は一枚のポスターを指差した。そのポスターを見て俺は少し驚いた。それはちょうど気になっていた映画のポスターだった。
「じゃあ、チケット買ってくるからここで待ってて」
俺がチケットを買いに行こうとすると、
「待って!私が払うから」
朝倉がそれを静止した。
「いや、誘ったのは俺だから、俺が出すよ」
しかし彼女もゆずらない!少し言い合ったが、どうしても朝倉はゆずりそうもないのでここは彼女に払ってもらった…。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
2時間半後、劇場を出た。
「昼、どうしようか?」
俺が訊くと、彼女は、
「んー。何食べようかなぁ…」
悩む…。
時刻はもう2時を過ぎていた。
「ちゃんとした物にすると時間が…」
朝倉はボソッとつぶやいた。
おそらく彼女は今の状態を1秒たりとも無駄にしたくないのだろう…。朝倉は今日のこの状況をどう思っているのだろう?もしかしたらこれが最初で最後になるなんて思っているのだろうか?俺はこれっきりにする気なんて全く無いのだが…。何を考えたところで所詮は俺の予想の範疇でしかない。今すべき事は彼女の悩み解決してあげる事だ。
「よし、ファストフードでも良いか?」
俺が提案すると、朝倉は大きく頷いた。
(速いって事で思い付きで言ったが、何にするか…あ!)
俺はある好奇心を抱いてしまった!
「朝倉、牛丼屋って行った事あるか?」
朝倉はキョトンとして首を横に振った。
「よし、行こう!」
「えっえ!?ちょっ」
朝倉に何も言わせず少し強引にショッピンセンターを出て向かいにある牛丼屋に入った。
朝倉にとって初めての牛丼屋は新鮮だったのか?辺りをキョロキョロと見回している。
「いらっしゃいませっ」
歯切れの良い口調で店員がお茶を置いた。
「じゃー、牛丼並、つゆだくでギョク」
俺が注文すると、朝倉は俺を見て、
「じゃ、同じのを…」
朝倉も注文した。
「ハイッ。牛丼並つゆだくふたちょう!玉ふたちょう!」
注文を受けた店員が奥に向かって声を挙げた。
その光景を朝倉は少し呆然として見ていた。
「ねぇ…」
すると朝倉は小声で俺に話し掛けた。
「何?」
俺も小声で返す。
「今の注文、どういう意味なの?」
やはり解からずに注文したようだ。
「あれはね〜〜」
俺は一つ一つ教えてあげた。
「ふ〜ん…」
一通り説明を聞いた彼女だが、イマイチ理解しきれていない様だ。
「ヘイ、おまたせっ」
そうこうしている間に、目の前に二つの牛丼が運ばれてきた。
俺がやる仕草を真似る朝倉。この光景が見たくて牛丼を選んだのだ!普段見る事が出来ない朝倉を見たかった。少し前に生まれた好奇心が達成された瞬間に俺は酔狂した。
ボ〜っと彼女を見詰める俺に気が付かず、朝倉は最初の一口目を口にする。まるで子猫が初めて毛糸の玉に触れる様で、たまらなく愛らしい。
「・・・・・・おいしい…」
朝倉の一言で俺は我に返った!そうだ、彼女が気に入ってくれなければ本末転倒。
「良かった、口に合って」
内心からホッとしながら言うと、朝倉はニッコリと微笑んでくれた。
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