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#六八 自然な会話
「先輩に何も言えず、気付いてもらうなんて出来ないままお姉ちゃんと先輩は高校へ進学してしまって先輩を見ることも出来なくなって…でも去年、本屋で先輩が載ってる本を偶然見付けてすごく嬉しくなって買ったりもしました…」
(それであの本が舞衣の部屋にあったのか)
 あの時の疑問が解消された。
「今年やっと自分も高校生になって、一年間だけだけど先輩の近くに居れる事が嬉しかった…。そう思うとまた先輩の事が頭から離れなくなって…。7月に先輩を偶然学校の玄関で見掛けた時は胸が張り裂けそうなくらいドキドキして気が付いたら…先輩の方へ向かって行ってて…」
「あ~!」
 あの時の事を思い出して俺は思わず叫んだ!
「あの時かあの玄関で俺とぶつかった…」
「はい…あの時私はワザと先輩に…先輩に私の事を知って欲しくて…」
「知って欲しくてもなにもあの時にはもう、君の事…」
 その続きを言おうとしたが朝倉の事が気になり言えなかった。しかし朝倉はそんな俺を尻目に会話を聴いている様だった。
「え?」
 舞衣はその続きを望んでいた…。
「俺、舞衣の事を五月から知っていたんだ。初めて教室の窓から君を見た時から……好きになっていたんだ…」
 意を決して俺の本心を舞衣に告げた。自分でも驚くほどあっさり言えた気がした。だがその時朝倉が見せた表情が激しい痛みとなって俺の胸に突き刺さった様に感じた。
 その激痛を抱えたまま俺は話を続けた。
「あの玄関で会った時、俺は凄く後悔したんだ。どうして引き止めてでも君と話しなかったんだって」
「…私も…もっと先輩と話をしたかったんです…でも恥かしくて…逃げるようにして…」
「それも驚いたけどもっと驚いたのはその後だよ、君が朝倉の妹だって分かったんだから…それまで名前も知らなかったんだから」
「私も驚きました。家に帰ると先輩が居て。お姉ちゃんが見事に片想いを実らせたんだって驚きました」
「ははは…」
 いつの間にか自然な会話をしている俺と舞衣。
 が、
「舞衣、ありがとう…話してくれて、ここから先は私が居ちゃだめね。部屋に行くわ」
 言って朝倉が席を立った。
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