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#五八 体育祭・最高の瞬間
『ただ今より、体育祭最後のプログラム、男女混合リレーを始めます。出場選手の入場です』
 放送部が担当するアナウンスが第一グランドにこだますると、見ている生徒から大歓声が起こった。優勝の行方を左右する最後の種目だけにほとんどの生徒達が注目している。
 一周二〇〇mのトラック。そこに正面と、むこう正面の二手に出場選手が分かれる。七番手走者の俺は正面で待機した。
 全校生徒が見守る中、スタートを告げる号砲がグランドに響いた!
 俺の眼前でスタートを切ったファースト走者達!ウチのクラスの一番手走者はスタートは決まったものの、コーナー出口で一人にかわされ、3番手で二番手走者の伴城にバトンタッチした。
 トモは絶好のタイミングでバトンを受けると猛チャージを見せ、一気に2番手をかわすとその勢いで先頭走者の女子に並び掛けた!正直、トモがこんなに足が速かったとは思わなかった。
 数秒間のデッドヒートの末、ついに先頭に立ったトモ!
(いいぞ、トモ!)
 近付いてくるトモに俺は心の中で賞賛の言葉を送った!そのままトモは先頭で三番手走者にバトンを繋いだ。
「お疲れっトモ!」
 肩で息をするトモに俺は声を掛けた。
「あぁ…やったぞ…ぜぇぜぇ」
 そう言いながら渾身のガッツポーズを見せてくれたトモ。
 そのトモの姿を確認して直ぐにレースに目を移した。しかし、そこには二人にかわされてしまい3番手で四番手にバトンを渡そうとする、三番手走者の女子の姿があった。
 四番手走者は亜津!
 実は、亜津は中学時代、陸上部で、短距離走者として県大会ベスト一六に入ったこともある隠れた俊足。
 その亜津は一人をかわし、先頭とほぼ同時に五番手走者にバトンを渡した。
 五番手走者は先頭に差を空けられたものの、3番手との差は広げて順位を保ったまま六番手走者の朝倉にバトンを託した。
 朝倉がバトンを受け取る頃、俺はその反対側のコースに陣取った。
 懸命に先頭を追う朝倉!
 朝倉が近付いてくるにつれ、今から自分が走るという緊張感とは違う別の緊張感を同時に感じていた。
(な、なんだ!この感覚は?)
 俺は無意識に昨日朝倉から貰った、左手首に巻いているリストバンドを右手で掴んでいた。
 いよいよ朝倉がバトンタッチの体勢になった!
 僅か数十秒間の“待ち時間”が数分間の様に感じた。
「おねがいっ!」
 俺の左手に朝倉からのバトンが手渡された!
「任せとけっ!」
(よーし!あとは月島を目指して走るだけだっ)
 順位は2番手!前を走る背中が徐々に近くなってくる!
「イケる!」
 しかし、俺はコーナーで足を滑らせてしまった!
 だが、コケるわけにはいかない!皆が繋いできたこの順位とバトン。懸命に片足を踏ん張り転倒を免れることが出来た!ロスにはなったが、順位は変わっていない。
 コーナーを抜け前との距離を少し詰め、アンカー月島にバトンを渡した!
「ごめん、頼む」
 俺の声に月島は振り向き、
「大丈夫、まかせて!」
 笑顔で言った。
 その月島を観た瞬間、『月島ならやってくれる!』そう確信した!
 先頭を行く、男子陸上部員にコーナーで並びかけると、コーナーの出口であっさり抜き去った。最後の僅かな直線はまさのにウイニングラン状態!
 最高潮に達した大歓声の中、両手を高らかに上げてゴールのテープを切る月島!一斉にざわめき出す我が三年G組!
 月島は凄い!凄すぎる!全校生徒が注目する中で見事に主役の座に就いた。
 

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・  


『発表します!総合優勝は・・・三年A組です!』
 全ての競技が終わり、傾いた太陽がオレンジ色に輝き、熱戦が繰り広げられたグランドを染めている。
 そのグランドでは体育祭の総合表彰式が行なわれている。優勝は三年A組だった。俺たちの三年G組はたった一ポイント差で総合準優勝だった。A組が最後のリレー二位でなければG組が優勝できていたのだが…。
 最後の体育祭がこの結果…残念でたまらない結果だったが、皆は清々しい顔をしていた。やりきったという充実感が皆をそういう表情にしているのだと思った。
 これだけの人数で、同じ目標に向かって共に力を併せる事なんかこの先もうないかもしれない。なんとも言えないこの感覚をこの三年G組の皆と体感できて本当に良かった。悔いのない終わり方だと俺は思った。
 でも、本音を言うと優勝したかった。



 こうして、最後の体育祭が終わった。
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