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#三 下校
「こんな時間まで何やってんだ?」
 俺は朝倉に声を掛けた。
 朝倉と話すのは初めてではないが何となく緊張した。
「え!ちょっちょっと調べ物を…」
 明らかに動揺している声で俺の問いに答えた。
「ふ〜ん…俺は忘れ物を取りになっ」
 俺は朝倉の動揺に気付かないふりをして言い、自分の机から昼間豊に借りたDVDを取り出した。
「じゃあ俺行くけど、いくら日が長いとはいっても遅くまで居ると帰り危ないぞ」
 俺は朝倉にそう言って教室を出ようとした。普段は明るい朝倉だが今は何だか暗かった。あくまで普段遠目に見ていての判断だが。
「待って!!」
 突然朝倉が俺を呼び止めた!
「そっその…あ、あの…」
「?」
 朝倉は色白の顔を真っ赤にしながら、
「一人で帰るの?」
 訊いてきた。
「ん!?一人だけど…」
 俺がそう答えると、朝倉は何か意を決した様に勢いを付けて、
「一緒に帰らない?」
「!」
 朝倉からの思いもしない申し出に俺は絶句した!
「あ…別にいいけど…」
 今度は自分が動揺した。
「ありがとう」
 朝倉は俯いてはいたが微かに微笑んでいるのを確認できた。
 まさか…同学年一の女子と帰ることになるとは…。
 朝倉は去年の文化祭で密かに行われていた企画、ほぼ全男子生徒の投票で決まるミスコン。それで見事にグランプリに輝いた経歴の持ち主である。
「じゃ、じゃあ帰ろうか?」
 まだ動揺している俺…。
「うん」
 朝倉は明るく返事をした。

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 

 校舎を出ると周囲はすっかり夕暮れに染まっていた。
 さすがにこの時間になると下校している者はいない。その事に俺は安心した。学年一の女子と一緒に帰るという事は同学年、いや全男子生徒の敵になるかもしれないのだから、誰にも見付からないにこした事はない。
「柊君…」
 先に口を開いたのは朝倉だった。
「なに?」
 俺が答える。
「その…嫌じゃない?」
「何が?」
「その…私と一緒に帰るのって…」
 朝倉はとんでもないことを訊いてくる…。
「何で?別に断る理由もないし、全然嫌じゃないよ」
 と答えると、朝倉はすぐさま明るい口調で、
「うれしい…良かった…」
 と答えた。
 うれしそうな顔をしている朝倉を見ると、昨年のミスコンに選ばれた理由が何となく解かった気がした。すごく笑顔が似合う子だ。普段は眼鏡をしているが、おそらく外せばまた違う美女の素顔になるんだろう。
 実は俺は、あのミスコンには投票しなかったのだが、あの時にこの朝倉笑顔を知っていたら間違いなく朝倉に一票投じていただろう…。
「朝倉」
「ハイッ」
 急に声を掛けられ、驚いたように返事をする朝倉。
「家…こっちで良いのか?」
「えぇ…」
 まだ何か言いたそうな朝倉。
「どうした?」
 すかさず俺は訊いてみた。
「…あのね、ちょっと寄り道しない?」
 朝倉が不安そうに問いかけた。
「いいけど」
 俺が笑顔で答えると朝倉はテンションを上げて、
「うふっ、じゃあこっち」
 言って朝倉は俺の右手を掴んだ!突然の朝倉の行為に俺はドキッとしたが、そんな俺の動揺など知らない朝倉はそのまま少し早足で歩き出し、十字路を右に曲がった。
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