#二 放課後の教室
教室の窓からあの下級生を見てから一ヶ月が経とうとしている。
あれ以来胸にモヤモヤしたものを抱えながら季節は夏になろうとしていた。
制服も冬服から夏服に衣替えした六月の頭。今一学期の中間テスト真っ只中。
「どうだった?」
豊と共に中学時代からの友人、亜津が訊いて来た。
「んっ?まぁまぁかな」
そう答えた俺に亜津は、
「い〜よなぁお前らは。俺なんか他の大学に行くから受験勉強もしないといけないんだぜ」
この学校は、中、高、大のエスカレーター式なっているから大学入試というものは実質無いも同然だが毎年何人かの生徒は他所の大学を受験するらしい。
亜津は工業系の大学に進学を希望している。
「僻むなよ。自分で決めたんだろ?」
俺がそう言うと亜津は軽く微笑んで、
「そうだな。ちょっと愚痴っただけだ」
と言って少し足早に教室を出て行った。
しかしエスカレーター式といっても三年間の成績が悪ければ当然進学は出来ないため、うかうかしていられないのだが…。
未だにあれ以来見つける事の出来ないでいるあの一年生の事で今の俺にはテストどころではなかった。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
どうにかこうにか三日間の中間テストを終えた。
これでしばらくは自由な時間を過ごせる。部活をやっている者なら高校生活最後の総体に向けて練習も本格化してくるので自由に過ごせる時間は無いのだが、今の俺には関係のない事だ…少しさみしい気もするが…。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
テストから数日経ったある日の放課後。
忘れ物に気付いた俺は家に着く直前で教室に戻った。
下校時間が過ぎて数時間。教室にはもう誰も居ないだろうと思っていたが、教室のカギが開いていた。
(閉め忘れか?)
そう思いながら俺は戸を開けた…。戸の間から教室の中を窺うと、そこには一人の人影があった。
戸を全開にしその人影を確認した。オレンジ色が混ざった逆光に女性のシルエットが浮かび上がった…。俺はそのシルエットが誰なのか確認しようと近付いた。
その時!
「柊…君…」
シルエットの女性が俺の名を呼んだ。その声には聞き覚えがあった。クラスメイトの朝倉麻梨子だった。
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