#一七八 あの時の真相
「実は…さ」
「ん、何?」
昼食を終えたところで俺が切り出した。別に今しなくて良い話だが、先刻の朝倉の話を聞いてどうしても言いたくなった…。
「文化祭の時にさ…起こしてもらったじゃん」
「あっ!」
思い出したのか?驚く朝倉。
「あの時…君の夢を見てたんだ…」
改めて言葉にすると…やっぱ恥ずかしい…。
「・・・・・・・」
朝倉は何を話してくれるのか心待ちにしている様に黙って俺の次の言葉を待っている。
「その時見てた夢が真っ暗な空間に俺と君の二人が居て…でも、君は俺から逃げて行くんだ…。で、俺は必死に君を追うけど、思う様に前に進めなくて…。でも君はそんな俺とは違ってスイスイ去って行くんだ…。どんなにもがいても差は広がっていって…もう君に逢えなくなるんじゃないかって思った瞬間、自然に『好きだ、朝倉』って叫んでた…」
「…うん…知ってた…」
「え!!」
思いがけない朝倉の言葉に俺は絶句してしまった。
「実はね…あの日もっと早くあなたの家に行ってたの…。あなたの寝顔を見たくて…」
絶句している俺に代わって朝倉が話し出した。
(マジ…)
朝倉は笑顔でそう言うが、俺はだんだん背筋が寒くなってきた…。
「そしたら、『好きだ、朝倉』って言われて、びっくりしてあなたを覗き込んだ瞬間…抱かれちゃった…」
その瞬間、俺の背筋がゾクッと凍りついた!
「や!あれはワザとじゃないよ!」
もしかしたら聞かれていたんじゃないかとは思っていたが、実際に聞かれていたのかと思うと恥ずかしい!
「うんわかってる。でも、あの時は嬉しかった…もしかしたら舞衣のことを言ってたのかもって思ったけど、朝倉って言われたから…」
(やっぱり聞かれてたのか…もっと早く言えばよかったか…)
「そんな…寝言なんかで…じゃあ改めて言うよ!好きだ、朝倉っ」
「私も好きよ、柊君」
少しの間見詰め合っていたが、急に恥ずかしくなってきた。
「そっそろそろ買い物に行こうか?」
「うん」
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
それから二人で歩いて近くのスーパーへ買い物に行き、夕食の食材を買った。
何にするかなかなか決まらなかったが、朝倉がオムライスをリクエストしたのでオムライスに決定した。たぶん簡単なものをあえてリクエストしてくれたのだろう。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
「大丈夫?手伝わなくて良い?」
朝倉の家に帰り、料理の支度中彼女に二度も言われた。
だが作り始めればその言葉もなくなった。俺の手際のよさに驚いたのだろう。親が留守がちだから自分で料理を作ることもしばしば。そこで何とかこれくらいは出来る様になった。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
「おいし~」
「だろっってか、夏休みにも作ったじゃん」
「次はもっと複雑なのをリクエストしよ」
「ハハハッ…」
ともかく彼女の誕生日はなんとか喜んでもらえた様だ。
こうして高校最後の冬休みが終わっていき、高校最後の三学期が始まる…。
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