#一五八 ここから始まった…
途中の自販機でコーンスープを買って、朝倉の家の近所の公園のベンチに座った。周りを住宅に囲まれている小さな公園で、寒風が吹き抜けない良いコンディションの公園だ。
「お!これ結構イケるなぁ」
俺は一口飲んだ缶スープの感想を言った。すると朝倉は、
「コーンスープ好きなの?」
「まぁ、冬になると良く飲むなぁ。ホラ、粉のやつ」
「へ~。ふふっ、じゃあ今度私が作ってあげる」
「マジ!楽しみにしてるよ」
俺がそういうと朝倉は俺の持っている缶を要求して、それを一口飲んだ。
「…こういう味が良いのね、解かった」
「いや、こんなのより、俺は君のオリジナルの味付けのが飲みたい」
「ありがと」
夜空には、多くはないが星が綺麗に瞬いている。
「この公園…あのブランコに座って…告白したね、私」
俺たちが今座っているベンチの斜め向かいにあるブランコを見ながら朝倉が言った。そう、この公園は五月に朝倉に告白されたあの公園。
「…そうだな…そっか、ここから始まったんだな…俺たち」
「あの時私泣いちゃったね…思えば私、いっつも泣いてるね」
「あれは…ホラ、俺が不躾に変な事を訊いたのが悪いんだから」
朝倉の言葉から俺はあの時の事を思い出していた。まだ半年前の事なのにずいぶんと昔の出来事のような気がする。そう、何年も前の様な気。
「違うの…」
さらに朝倉の話は続く。
「あの時泣いちゃったのは自分への不甲斐無さからからなの…」
「え!」
「本当は教室で言いたかったの…『好き』って。でも勇気が出なくて…。結局口から出た言葉が『一緒に帰ろう』だった…」
彼女はテレ笑いしながら言った。
「俺はそれで良かったよ、一緒に帰ろうって言われて時メチャクチャ焦ったもん!あの時いきなり告られてたら、俺その場で倒れてかもよ」
少し笑わせようと言う気持ちで言ったが、実際あの場で告られていたらそうなっていただろう。
「えへっ、私…あの時のチャンスを逃したら次は無いと思って必死だったの…そしたら…泣いちゃって…」
あの時の朝倉はよほど切羽詰った状態だったのだろう。
「でも、あれから本当にいろいろあったなぁ…」
俺は再度この半年間を思い出しながら言った。
「永かった…。告白した時、あなたは別の女性が好きで…それが自分の妹だった…」
(ズキッ)
朝倉の言葉に胸が痛んだ…。
「あの時は…今のこの状態なんてまったく想像できなかったけど…今思えば片想いの頃も良い思い出よ。今が幸せだからそう思うのかもしれないけど…」
何かをかみ締めるように朝倉はそう言った。
「朝倉…これから、もっと良い思い出、いっぱい作ろうな」
「うん」
彼女を引き寄せ、口づけを交わした。
「なんかこうしてると満足しちゃった…」
晴れやかな顔で朝倉が言った。
「え?」
「ごめんね、帰りたくないとか言って困らせちゃって」
「え?あっあぁ…」
なんなら彼女の家に泊まらせてもらおうかとか思いはじめていたのに…。
「だ、大丈夫なのか?」
彼女の気を変えようと無駄な質問をしてみる。
「うん。…明日も逢える?」
「も、もちろん…」
「じゃあ、また明日ね」
「あぁ…」
こうなるんだったら早く言っておけば良かったと後悔する俺…。
二人しか居ない小さな公園を包む夜空を星が一つ滑り落ちた。
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