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Eternal Truth

作者: 宗像竜子

 ── 世界を構成するあらゆるものが『はじまり』と『おわり』で出来ている。

 そんな御伽噺を知っているかい?


+ + +


 『変わらぬもの』があるのだとすれば。

 それは常に繰り返される開始と終焉の営みと、平等に流れ行く時の重み位だと僕は思っていた。

 それは違うわ、と彼女は言った。


「『時』が変わらないなんて有り得ないわ。…時であろうと、いつかは終わる。動き始めたものは、必ず何らかの形で終わりを迎えるの。── ほら、もうすぐ一年が『おわる』わ」


 数多存在する生命の、ほんの一握りに過ぎない人類が定めた単位に何の意味があるのだろう?

 時だけは絶えず流れている気がする。昨日、今日、そして明日へと。

 時が一つの概念である事は認めよう。

 けれど、その概念が『死』── 『おわり』を得るなど、有り得るのだろうか?

 忘れてはいないかしら? と彼女は微笑んだ。


「『概念』もまた、人の定めた一つの枠組みよ。…わたし達が過去になってしまったものに再び触れる事が出来ないのは、それが『おわり』を迎えたものだから。未来を掴めないのは、まだそれが『はじまり』を迎えていないものだから」


挿絵(By みてみん)


 世界は黄昏色に染まっていた。

 赤と言うよりは朱、黒と言うよりは群青。白というよりは黄金。

 それらの色彩が混じり合った複雑な空を背に、彼女の長い黒髪が風を受けてひるがえる。


「…ねえ、そんな事を考えていて楽しい? 『今』という時間はすぐに終わってしまうのに。そしてまた、新しい『今』が始まるんだわ。『はじまり(あなた)』と『おわり(わたし)』が一緒に居られるのはこの瞬間だけなのに、あなたはいつも新しい『はじまり』の訪れを恐れてばかりいるのね」


 そうさ、と僕は認めた。


「この瞬間がとても楽しくて素晴らしいものだから。これがすぐにでも終わってしまう事が嫌なんだ。『はじまり』さえ来なければ── ……」


 『はじまり』には彼女はいない。そして、『おわり』には僕がいない。

 それが概念的なものであろうと、『おわり』を前に僕は為すすべもなく消える。

 そしてまた次の『はじまり』に僕が目を開いても、そこに彼女はいないのだ。

 『はじまり』と『おわり』が混在する『今』以外に、僕等は互いに触れ合う事も許されない。


「大丈夫よ」


 伸ばした僕の手を取り、彼女は言い切った。


「あなたがいて、わたしがいる── それだけは絶対に『変わらないもの』だから」


 そう言いながら僕に向ける彼女の顔には、淋しげな笑顔。

 ああ、そうかと僕は気付く。

 いつも── 必ず僕が消えて行くのを、彼女は見届けなければならないのだ。何度も何度も、果てる事無く繰り返される別離を、彼女だけが味わわねばならない。


「…ごめん」

「謝らないで」


 息苦しさすら感じて呟いた謝罪を、彼女は跳ね除ける。こんな時、僕は彼女の強さを思い知る。


「いいのよ。これはわたしが『おわり』である限り逃れられない宿命だもの。あなたがわたしを見出すまで、ずっと孤独でいる事と同じ」


 けれども、僕の孤独は決して辛いものではない。何故ならいつか必ず、彼女は僕の前に現れるのだから。

 待ち人が来るとわかっている孤独は、むしろ幸せなものではないかと思う。でも、それを伝えた所で彼女の味わう淋しさが減る訳ではない。

 僕は思いを込めて、彼女の手を握り返す。その身体を引き寄せ、抱き締める。


「また、必ず会えるもの」


 彼女の何処か祈るような呟きに、僕は黙って頷いた。

 ── ゆっくりと世界が遠ざかってゆく。『おわり』が訪れる。


 世界は『僕等』が創り出す。それは概念を越えた真理。

 幾多の世界が生まれ、そして消えていっても。

 数多の時間が流れ、そして去ってしまっても。

 『はじまり』と『おわり』は常にそこに存在する。


「…また、会おう」

「うん…またね」


 出来る約束はたったそれだけ。

 『おわり』に僕はいない。続く『はじまり』に彼女はいない。

 けれども── 僕達はまた必ず出会う。



 『はじまり』と『おわり』の狭間で。

これはそもそも数年前の大晦日に、今はもうないイラスト専用サイトのお年賀TOP用に書き下ろしていた話でした。

元々、大晦日と元旦それぞれ一日限りの限定TOPを考えていたのですが、イラストの方が片方仕上がらずに結局ポシャってしまったという(笑)


この話はニパターン存在していて、片方はこの現代(?)版、もう片方はファンタジー(?)版でした。

前者は現代にしてはFT要素が高いし、後者はFTにしてはSFくさかったのでどちらにも(?)がつくという…(笑)

順番的にはファンタジー版を先に書いたのですが、若干そちらの方が恋愛風味が強かったものの、何となく自分で気に入らず、設定をそのままに恋愛風味を減らして書き直したのがこちらです。

FT(?)版の方も気が向いたら何処かにアップしようかなと思ってますー(ブログか拍手おまけにでも…)


挿絵も当時のものをそのまま使いました。

絵柄的にはあまり変わってないけど描き方があからさまに違う(笑)

移行に伴って「はじまり」くんくらい描けばよかったかと後で思いました(思っただけでした・笑)

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― 新着の感想 ―
[一言] 小説というより詩に近いイメージを持ちました。 もちろん褒め言葉です。 こういう幻想的な雰囲気大好きですよ。 いろいろ奥深い解釈ができるし。 イラストもいい雰囲気を出していますね。 宗像さんの…
2011/07/11 17:33 退会済み
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