第04話:木之本姉妹の悲劇!(前編)
夏の暑い日、ミーン、ミーン、ミンミンミンミンミーンと蝉が鳴いている。
空は雲一つ無い快晴。
だが、そんな日にも事件は起こる・・・。
プルル、プルル
電話が鳴る。
「はい、黒崎。」
俺は電話に出た。
「警視庁の者だが、木之本 アスカと思われる女性が自宅で首を吊っているのが発見された。身元の確認がしたいから、至急、被害者の自宅に来てくれ。」
アスカが死んだのか・・・。
「な、何だってぇ!?」
俺は叫んだ。
兎に角、直ぐに行かなくては!
俺は電話を切ると、木之本家に向かった。
「あ、来たんだ。
待ってたよ。」
と、現場で待っていた久住が言った。
「全く、朝っぱらからトーン低くして起こすなよ。
で、第一発見者は?」
「それが、匿名だから解らないのよ。」
「あ、そう。
じゃあ死因と時間だけ教えてくれ。」
「死因は、木之本 アスカが窒息、妹さんが首の骨を砕かれて死んでるわ。
死亡推定時刻はまだ報告待ちよ。」
「ふーん・・・二人死んでんの?」
「二人だよ。
兎に角、中に入りなよ。」
「あ、あぁ。」
俺は久住に促されて中に入った。
「この部屋で遺体が発見されたわ。」
と、久住は部屋を示した。
俺は部屋を一通り確認した。
部屋の中央には椅子が倒れていた。
「成る程・・・。」
と俺は呟やき、真剣な表情で考え込んだ。
沈黙が暫くの間続いた後、
「このロープには誰が?」
と、垂れ下がってる輪の出来たロープを差して言った。
「木之本 アスカさんよ。」
俺は倒れた椅子を見て、
「遺書・・・無かったか?」
と、久住に聞いた。
久住は遺書を取り出すと、
「何であるって事が解ったの?」
と、聞いてきた。
「何となくだ。」
「そうなの?じゃあ、当てず、むぐっ!」
俺は久住の口を手のひらで押さえ、
「一々五月蠅えんだよ。おめえは俺の質問にだけ答えてろ。」
と言い放った。
久住は手をどかし、
「年上のお姉様に向かってその態度は何かなぁ?」
と、怖い顔と微笑んだ顔の中間の顔で聞いた。
「お、お姉様?おばさんじゃないの?」
俺はからかった。
「誰がおばさんですってえ!?」
久住はそう言うと、握り拳を俺の腹に思い切り叩き込んだ。
「ぐえっ!」
と発して、俺は前屈みになって腹を抑えた。
「痛えな。何すんだよ?」
と、顔を上げながら言う。
「私をおばさん呼ばわりした罰よ。」
「だからって・・・して良い事と・・・悪い事がある・・・。」
俺が久住に言うと、
「京ちゃん。お取り込み中悪いんだけどさ、周辺の聞き込み言って来てくれる?」
と、釈 由美子に似た長髪の美人で可愛いお姉様が言った。
「な、何で私が?」
久住は嫌そうな顔をして言った。
「あんたみたいな子が現場にいると邪魔なのよ。」
「ひっどおい小百合。」
久住はふくれて言った。
「はいはい。
ふくれてる暇があったらとっとと行って来る!」
「嫌だ。
小百合、お前が行け。」
久住は怖い顔で言った。
俺は久住のケツに蹴りを入れ、
「お前が行け。」
と、睨み付けて言った。
久住はケツを抑えながら、
「痛いわね。何するのよ?」
と、振り向いて言った。
俺は久住の向きを変え、玄関まで押して行き、
「姉貴の言うことは絶対だ!
解ったらとっとと行って来い!」
と言って、背中に蹴りを入れて外に突き出し、靴を投げ捨てた。
「か、薫!?
そ、それはいくらなんでも可哀想よ!?」
「良いんですよ。いつもの事ですから。」
俺はそう言うと、お姉様に顔を向けて微笑んだ。
そうそう。言い忘れていたが、小百合と呼ばれる女性は血の繋がった俺の実のお姉様だ。
俺はこのお方の事を婆ちゃんの次に慕っている。
因みにお姉様は、久住と一緒で警視庁捜査一課の見習い刑事だ。
それなのに、犯人検挙率No.1で、刑事になって二日で警部に昇進したそうだ。
「所で、何で貴方が此処にいるのよ?」
と、お姉様は聞いた。
「だって俺、木之本 アスカの知り合いですから。」
そう言い、俺はスマイル顔を見せた。
「へぇ、そうなの。」
お姉様は妙に納得するかの様に言った。
「お、お姉様?まさか、俺を疑ってるんじゃ・・・ありませんよね?」
「疑ってる。」
お姉様はギロッとした顔でストレートに答えた。
「ま、待って下さいお姉様。
俺にはちゃんとアリバイが・・・。」
「何処にいたの?」
「あの、何時のアリバイを言えば良いのでしょうか?」
「二日前の午後1時頃よ。」
「お姉様・・・その時間帯は婆ちゃんのお通夜に・・・。」
「え・・・お婆ちゃん死んじゃったの!?」
お姉様は驚いて言った。
「どうして連絡してくれなかったのよ!?」
お姉様はもの凄い剣幕で聞いた。
「電話しても出なかったじゃないですか。」
「え、電話くれたの?」
お姉様は携帯を取りだした。
「携帯じゃなくて、自宅の電話ですよ。」
「自宅の電話?
それじゃあ出られないわね。」
「何故です?」
「休み貰って家族三人でアメリカへ旅行に行ってたのよ。
て言うか、何で携帯に連絡くれなかったの?」
お姉様は携帯を指差して言った。
やれやれ・・・。
お姉様を敬うのが段々バカらしくなって来た。
「お姉様・・・海外で携帯は使えませんよ。」
俺は呆れながらそう言った。
お姉様は目を点して、
「そ、そうなの?」
と、言った。
「機械音痴目・・・。」
俺は聞こえない様に呟いたが、お姉様は極度の地獄耳である為、
「何か言った?」
と、ギロッとした目つきで普通に聞き返した。
「い、いや、何も言ってませんけど?」
俺は慌てて誤魔化したが、
「確か・・・機械音痴って聞こえた様な・・・。」
と、お姉様は睨みながら言った。
俺はお姉様の気迫に負け、素直に白状した。
此処までは、何の問題も無いのだが、この先が一番の大問題なのだ。
お姉様は、自分の短所を言われると、敏感に反応し、我を忘れて暴力魔になるのだ。
「許さない・・・許さない・・・。」
と、お姉様は連呼し、握り拳を俺の腹に思い切りぶち込んだ。
「ぐはっ!」
そして更に、膝蹴り、背負い投げ、四の字固めと色々して来た。
「い、いててててて!」
俺は涙を流しながら喚いた。
「謝りなさい!」
お姉様はそう言った。
「ご、御免なさいお姉様!俺が、俺が悪かったです。お願いだから許して下さい!」
俺は泣きながら懸命に謝った。
だがお姉様は、
「こんなんじゃ私の気が済まないわ!」
と言い、ひたすら俺に暴行を加え続けた。
それから1時間後、漸く暴行が修まった。
「はぁ、すっきりした。」
お姉様は笑顔で言った。
全く、この女はSかよ!?
俺は心の中で怒鳴った。
「あの・・・どいてくれます?」
と、俺が上に乗っているお姉様に言うと、
「あら?そんな所で何やってるの?」
と、お姉様は言った。
こ、こいつ・・・自覚症状ねえな。
それから暫くすると、久住が現場に戻って来た。
「さ、小百合!?旦那様がいるのに何やってるの!?」
久住は今の状況を見て言った。
「きょ、京ちゃん!?こ、これには深い訳があって。
決して浮気とかそう言うんじゃなくて。」
お姉様は懸命に言い訳をしていた。
「いい加減にどきやがれえ!」
俺はぶち切れ、お姉様を持ち上げて放り投げてしまった。
「お、お姉様ぁー!?
だ、大丈夫ですかぁ!?」
俺はお姉様に近付いて様子を見た。
お姉様は気絶していた。
「あらま。」
と、久住が後で呟いた。
「久住、遺書貸せ。」
俺はお姉様を放置して久住に手を差し出した。
久住は遺書を取り出し、
「はい。」
と、俺に渡した。
遺書にはこう書いてあった。
『私は妹が憎いと言う理由で妹を殺してしまいました。死んでわびます。ニュースにはしないで下さい。』
と・・・。
何だこの遺書・・・不自然だな。
その時、
「あのー。」
と、一人の男性が入って来て言った。
「あ、和茂。」
久住は男の名を言った。
和茂・・・木之本のマネージャーの宮本 和茂か。
ん、何で久住が知ってるんだ?
「紹介するね。
彼は、元彼の宮本 和茂。
木之本 アスカのマネージャーよ。」
「知ってるから。」
「え、知ってるの?」
久住は目を点にして言った。
「前に一回、事件でな。」
「そ、そうなの?」
久住は宮本に聞く。
宮本はそれに対して首を縦に振った。
「それはそうと、二日前の午後1時頃、何処で何を?」
俺は宮本に尋ねた。
「な、何でそんな事を?」
「殺人の可能性があるからだ。」
「で、俺を疑ってる訳か。」
「べ、別に疑ってる訳じゃない・・・。
ただ、アリバイを確認しておきたいんだ。」
宮本は少し間を置き、
「自宅にいたよ。」
と、答えた。
「それを証明出来る人は?」
「証明は・・・出来ないな・・・。」
「質問を変えよう。
あんたの前での被害者の行動を教えてくれ。」
ダン!
宮本はテーブルを叩き、
「全く、あの女にはムカ付くぜ!」
と言った。
「ほぉ。あんたは被害者を恨んでいたのか。」
「殺したいほどな。」
「で、勢いで殺してしまったと?」
「こ、殺してなんかいねえよ!」
宮本は激怒した。
「落ち着けよ宮本。」
俺は取り敢えず宮本を落ちつかせて話を続けた。
「彼女の何処にムカ付いていたんだ?」
「色々とだよ。」
「と言うと?」
「あの女、気に入らない事があると直ぐに暴力を振るうんだ。」
「そうなのか?
俺の前では随分とおしとやかだけど?」
「そうか。
兎に角、俺は恨んではいたけど、殺しちゃいない。」
宮本は殺害を断固否定。
じゃあ誰が殺したんだ?
二日前、木之本に会った奴か?
俺は携帯を出し、河野に電話を掛けた。
「俺だ。
二日前、木之本に会わなかったか?
・・・・・・・・・。
そうか。じゃあな。」
俺は電話を切ると、今度は礼水に電話を掛けた。
「黒崎か。何か用?」
「お前、二日前にアスカと会ったよな?」
「会ったけど?」
「別れたのは何時だ?」
「12時半頃だけど?」
「そうか。他に会った奴は?」
「知らないわ。じゃ、私忙しいから。」
ブチッ、プー、プー、プー
ったく、切りやがった。
はぁ、振出か・・・。
俺は電話をしまった。
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