表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
現代書記  作者: 赤木梓焔
第四章
25/26

四ノ四

「アルテミスちゃん、この色でいいかしら?」

「うんうん、この色のダウンシャツがいいわ」

「あのー……、本当に僕が着て似合うんですか?」

「いいから、黙って試着室に行く!」

「は、ハイ!!」

 この日アルテミスは須戸河を連れて、狐小路商店街にある「ニシムラ洋品店」に来ていた。

 そして戸惑う須戸河を引きずって、次々と服を選び出すと須戸河を試着室に押し込めた。

「あの……着替えました……」

「あらぁ~、お兄さん素敵よぉ」

 ニシムラ洋品店の店長がうっとりとした声で試着室から出てきた須戸河を褒めまくる。

 ネイビー色のボタンダウンシャツ。

 薄いグレー色のTシャツ。

 グレー系のタータンチェック柄のカーゴパンツ。

「ホント、アルテミスちゃんはセンスがいいわぁ」

 口に手をあて、体をくねらせながら今度はアルテミスを褒める店長だが、40歳になる立派な男性だ。

「あっ、そうだわ。ちょっと待ってくれる」

そう言って店の奥に入っていった店長は数分後、何か箱のようなものを持って来た。

「店長、何ですかこれ?」

「これわねー、先日イタリアに服を買い付けた時に買ってきたのー。たぶんそのお洋服に似合うと思うわぁ」

 そう言いながら店長が開けた箱の中には、スェードのハイカットブーツと細身のシルバーのネックレスが入っていた。

 それを須戸河に着けると店長は両手を頬に当てて、その場で小さく飛び跳ねた。

 何度も言うようだが、女性なら可愛い仕草ではあるが店長は40歳男性である。

「いやーん、素敵。もう私、恋しちゃいそう」

「うん、恋はしないけど、よく似合っているよストーカー」

「アルテミスさん、す、と、が、わ、です!」

 須戸河はすこし諦めた口調でアルテミスに話しかけた。

「どうでもいいわよ。店長、これ、このまま着て行きたいんだけどいいかな?」

「ええ、もちろんいいわよん。その靴とネックレスは私からプレゼントするわ」

「店長ありがとう。じゃあこれ」

 アルテミスは茶色い財布から一万円を取り出すと店長に渡した。

「ああっ、その財布!? それ、僕のぉ!」

「なんで私があんたの為に自腹を切るのよ。ちゃんと自分で払う!」

 アルテミスの態度にガックリと肩と落とす須戸河を余所に、アルテミスと店長は精算を済ませるためレジカウンターに向かっていた。その二人の後ろ姿を見ながら須戸河は情けない声で呟く。

「こんなことになるならアルテミスちゃんの下着を盗むんじゃなかった~」


「お買い上げホントにありがとう。今度はカグツチくんも連れて来てね、ウフッ」

「うん、また来るね。行くよストーカー」

「だから僕は……もう、いいです」

 ニシムラ洋品店を後にしたアルテミスは須戸河を引きずるように次の目的地へ移動する。

「さっ、ここよ! って何しているのストーカー?」

「僕の名前はすとがわです! それに僕もうお金ありましぇん」

 須戸河は歩道にある電信柱にしがみついて店に入ることを拒否する。するとアルテミスは顔を左右に振り、ため息をついた。

「ここは料金がかからないから大丈夫。さっ行くわよ」

「えっ、ここタダなんですか? もう、早く言ってくださいよ~」

 そう言うと須戸河は電信柱から手を離し、目的の店の中へ入っていった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
よろしかったら↓クリック↓をお願いしますm(_ _)m
小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ