──これはもしもの物語。
作者が入社研修の途中なのにありがたいお言葉を半分聞き流しながら生まれた物語。
本当はエイプリルフールネタでやりたかった物語。投稿日時を見てわかるように完全に時期を外した物語。
なんていうか、書いててちょっとイラっときた物語。研修中先のホテルに缶詰状態で毎晩寝るまで書いてる物語。
そして、
緋色の眼シリーズの女の子の大半と恋愛フラグがマックスになっちゃった主人公の物語。
※本来のお話では主人公とある二名以外にはモテません。
※基本クールを気取った感じで今回は描かれてますが、本編ではもっと根暗ですぐキれます。
※あくまでAFネタです。かなりキャラの違う人が大半です。
※本編は中二病要素の強い、現代ファンタジーです。地味に暗い話です。
千島蒼二。年齢16歳。身長は175センチと若干高め。体は引き締まった細身。
黒い髪に悪い目つき。顔はどちらかといえば中性的。簡単に言ってしまえば、イケメンの部類に入る。
そんな恵まれた容姿を持つ男だ。家族は四人家族。両親に双子の妹。
現在は柳学院高校一年生。交友関係は狭く深く。趣味は読書と筋トレ。そんな、典型的なリア充だ。
「お兄ちゃん。起きて」
「うーん……」
「おにいちゃーん!」
体をゆさゆさと揺さぶられ、千島蒼二は目を覚ました。目に映ったのは見慣れた白を基調とした部屋。
そして、少しだけ照れたような顔で自分を覗き込んでいる妹──千島遥緋の顔だった。
「……うぃす」
「おはよ。ママがもう朝ごはん出来てるって。一緒に行こ」
「ああ……」
遥緋に手を握られて蒼二はベッドから起きた。そのまま手を引っ張られ、階段を下りて一階のキッチンまで
連れて行かれる蒼二。すると、二人の母親である千島遥が丁度朝食を並べ終えた所だった。
「おはよう、蒼二。遥緋。二人は今日も仲良しさんねぇ」
ニコニコ笑いながら遥が言うと、遥緋は顔を赤くして蒼二の手を離した。
何時もの事なので、蒼二は特に反応を見せる事なく、席について牛乳を飲み始めた。
「もう、お兄ちゃん。口の周りに牛乳がついてるよ!」
「あ」
遥緋がティッシュを手にとって蒼二の口を拭いた。どことなく、楽しそうなのは気のせいか。
「それで、お兄ちゃん。昨日は何時まで夜更かししてたの?」
「秋月先輩と部活の件で話してたら、遅くなっちまってな。それから宿題やったから、寝たのは三時だ」
「ふぅん……部活ねぇ」
途端に不機嫌な顔になる遥緋。意味がわからない蒼二は若干緊張しながらも会話を続けた。
「お前も一応、図書部なんだから顔出せよ」
「てゆーか、お兄ちゃんが無理やり私を入部させたんじゃない。数あわせとして」
「仕方ない。そうでもしなきゃ潰れてたからな」
「何? そんなに秋月先輩がいいわけ?」
「何の話だ? 秋月先輩は変わってるけど悪人じゃないぞ」
「ごちそーさま!」
強引に遥緋は話を区切って、さっさと部屋に戻ってしまった。これだから、女は難しい。
何処か遠い目で、母が置いていったコーヒーを飲みながらぼんやりと蒼二はそんな事を考えた。
●
怒った遥緋がさっさと学校に行ってしまったので、仕方なく蒼二は学校への道を一人で歩いていた。
季節は夏。日差しが強い。暑いのがあまり好きではない蒼二はフラフラと頼りなく歩く。
すると、背後からたったか元気よく走る音が聞こえた。それと共に、
「蒼二さーん!」
声をかけられた。よく知った声なので蒼二も足を止めて振り向く。
「よぉ、梨香。今日も元気だな」
目の前にいるのはセミロングの髪の小柄な少女だ。名は浅葱梨香。蒼二達の両親の親友の子供である。
中学、高校、大学まである柳学院の中等部に通っており、蒼二達ともよく遊ぶ。
梨香は走ってきたのに、息一つ乱さず今日も元気にニコニコ笑いながら、カバンから袋を取り出した。
「これ、昨日焼いたクッキーです! よかったら休み時間にでも」
「おー。梨香の作った菓子は美味いからな。大事に食べさせてもらうわ」
「ありがとうございます! じゃ、私今日日直なので先に行きますね」
それだけ早口で言うと「きゃー」と変な声を上げながら梨香は去っていってしまった。何も知らない蒼二は
能天気に梨香は今日も元気だなぁと感心している。そのまま梨香に元気を貰ったような気がしたので
ちょっと走ってみる気になった。気合を入れて、全力で走っていると、
「うわっ」
「ひゃあ!」
曲がり角から急に曲がってきた人と走っていた蒼二は見事にぶつかった。
慌てて謝ろうとする蒼二だったが、それよりも早く、ぶつかった相手の罵声が飛んできた。
「ちょっとアンタ! 何処に目ぇつけて歩いてんのよ!」
「いや、走ってたぞ」
「そういう問題じゃなーい!」
何なんだコイツは。蒼二は目の前でぎゃんぎゃん喚く少女を見た。童顔でショートカットのチビ。
それが第一印象。何処か舌足らずな声で喋る事から、蒼二は中等部の生徒だろうと判断した。
「確かに俺が悪かった。だがな、お前。先輩にはある程度敬語使わなきゃ駄目だぞ」
「うーる-るーさーいー! 私はちゃんと人を見るもんねー!」
それだけ言って嫌味ったらしく笑うと、少女は物凄い速さで学校の方へと走って行った。
何故だか、屈辱感だけが残り、
「あのガキ……次会ったらただじゃおかねぇ」
そう毒を吐いて蒼二も学校へと小走りで向かった。
そして、始業チャイムギリギリで教室の前まで辿り着くと、黒髪をポニーテールにした
背の高い女子がドアの前で仁王立ちしていた。
「おっす、由加」
「おはよう、蒼二。……まぁ、今日の遅刻はギリギリ見逃してあげる」
「流石だ!」
珍しく機嫌よく蒼二は笑うと、由加の横を抜けて教室へと入った。すると、それとほぼ同時に
髪を金色に染めて制服を着崩した生徒が慌てて教室に駆け込もうとした。
「いえー! ギリギリセーっぷげ!」
だが、教室に入ろうとした瞬間由加の蹴りが顔面に炸裂し、金髪の生徒──榛名神璽は廊下で沈黙した。
「相変わらずえげつねぇな。幼馴染なんだろ?」
「それはそれ。これはこれ。蒼二は特別だよ」
由加はそう言うと、唇に指を当てて悪戯っぽく笑った。
●
神璽が半泣きで廊下に立たされている中、蒼二達のクラスの担任が来てHRが始まった。
蒼二達の担任はまだ若い。24歳の物理教師だ。名前は、八神律。柳学院高校でも飛びぬけて変な教師だ。
何故かというと、
「やぁ、生徒諸君おはよう。今日もいい天気だね。では、HRの前に先生は一言言いたいわけだ。
実は今日、私の旦那様。八神時雨の22歳の誕生日だ。
皆、是非今日中に一回はハッピバースデーの歌を歌ってくれたまえ。ディア時雨じゃなくて時雨さんな。
やはり時雨を呼び捨てにしていい女性はこの世界で私と時雨のお母様だけだと思うんだよね」
こんなんでも立派な教師だから困る。クラスメイトの一人が引きつった笑顔で、
「先生は本当に旦那さんが好きなんですね」
というと、律は更にテンションを上げて今度は熱弁を振るい始めた。
「好きなんてレベルじゃない。もはや我々は魂同士で結びついているというレベルだ。
たとえ、この世界が多元世界の一つだと過程しよう。だが、私は断言する。どの世界においても
私は時雨と結ばれる運命を選択するだろう。もし、選択しなければそれはもはや私ではない他の何かだ!」
律はそう熱弁を振るうと、もはやHR等どうでもよさそうに教室の外へ出て行こうとした。
そして、ふと止まり思い出したように教室の扉をドアを開けた。そこに居たのは先程の生意気な中等部の生徒。
「いや、すまない忘れていたよ。皆、今日からこのクラスに転校してきた、天美命だ。仲良くしてやってくれ」
そう律に紹介されると、先程までの威勢は何処へやら人懐こそうな笑みを浮かべて天美命は挨拶を始めた。
「はじめまして。今日から転校してきた天美命です。よろしくお願いしまっす!」
ニコニコ笑いながらクラスを見渡す命。そして、蒼二と目が合った瞬間、
「あーっ! アンタ朝から爆走してた目つきの悪い男!」
「何だお前、同級生だったのか。チビすぎて年下だと思っていたわ」
実際、本心だった。命も命で図星を突かれたのが気に入らないようでうぬぬぬと唸り、にらむ。
蒼二も負けじと睨み返した。すると、ようやく状況に追いついた律がやれやれと手を広げた。
「何だ蒼二。もう転校生と知り合いだったのか。丁度お前の隣が空いてるし、面倒を見てやる事!
ちなみに、転校生を見捨てるような真似をしたら、薙刀で尻を百回は私は殴ってしまうだろう」
もはや脅迫の域だ。だが律はやる。絶対にやる。そんな確信があったので、蒼二は
「わかりました……」
とどうにか仏頂面を作ってそう返事をした。
●
「どういう事なの!?」
「喋ったほうが身のため!」
HRが終わるや否や、遥緋と由加が詰め寄ってきた。何でこの二人に怒られなければならないのだろう。
蒼二はそう思ったが、反論しても無駄そうなので諦めたように今朝あった事を話した。
ようやく二人の誤解が解けただろう。そう安堵するが、何故か遥緋と由加は転校生の話題にはもう触れなかった。
「梨香ちゃん……油断も隙もない」
「食料で釣るとはルール違反」
「お前ら何話してんだよ……」
二人の会話は聞こえなかった。すると、由加と遥緋は何時もの様子に戻り、再び話題を戻した。
「いやーごめんごめん。どっかの神璽君みたいにお兄ちゃんが早速転校生チェックしたかと思っちゃってさ。
いくらなんでも、お兄ちゃんがそこまでクズなわけないよねー。うん。妹として安心した」
「全くだよ。神璽みたいのと一緒にしてごめんね。蒼二」
「いや、俺はいいんだけどよ……」
蒼二は教室の隅で落ち込んでいる神璽を気の毒そうに見る。心なしか、何時もよりも金髪が褪せて見えた。
だが、由加は神璽の下までカツカツと歩き、首を掴んで引きずって戻ってくると、神璽に問うた。
「それで、転校生についてどこまで知ってるの?」
「ああ、彼女は天美命。この前まであの名門神代女学園に通っていた生粋のお嬢様だ。
家族構成は兄が二人に姉が一人。両親とは死別していて、兄妹で莫大な財産を受け継いだみたいだ。
そんな天美家の末っ子がどうしてこんな高校に来たかってと。どうやら姉と喧嘩して家出同然みたいだぜ」
「そういえば、お前はそういう奴だったよ……」
そうだったと蒼二は頭を抱えた。榛名神璽はそういう奴だった。先程までの落ち込み具合は何処へ
行ったのか、テンションマックスで律と共に教室を一旦出て行った命を待ちわびている。
「はっやくこないっかなー!」
わくわくしていた神璽だったが結局、命が戻ってきたのはチャイムが鳴る直前だった。
学級委員たる由加の号令の下、その時既に神璽は自分の席に強制送還されており、
今は蒼二を射殺すような目で睨んでいる。それを軽く流し、蒼二が外を向いてグランドを眺めていると、
「ちょっと、教科書見せてよ」
「机の上に乗ってるから、勝手に持ってけ」
今は命より外の風景を見てるほうがいい。夏の日差しが照りつける午前の校庭。その向こうの町並み。
綺麗で平和な光景だ。命は憮然としながらも、蒼二の机から教科書を取ると授業に集中し始めた。
(飽きた……)
ものの十分ぐらいで平和な光景には飽きが来た。そろそろ授業を受けようと思い、椅子だけを
命の方へと移動させ、斜め横から教科書を覗き込む。すると、命はうっとおしそうに蒼二を睨んだ。
「いきなり何よ」
「俺にも見せろって」
「見せるからもう少しあっち行きなさいよ」
「つーか、そもそもそれは俺の教科書だ!」
ぎゃんぎゃんと言い合い、蒼二と命は教科書を取り合った。もはや二人に勉強する意思はない。
二人に共通していたのは、コイツにだけは負けたくないという思い。その思いは高ぶり続け。
ついに二人が同時に武力行使に出ようとした途端、
「お前達、ちょっと外で立ってなさい」
引きつった笑顔を浮かべた律の拳骨が炸裂し、いがみあっていた二人は仲良く廊下に立たされた。
●
「くっ……足が痛ぇ」
「アンタの所為よ……」
蒼二と命は疲れたような声を発した。というのも、立たされた後の二時限目も三時限目も四時限目も
二人は何かといがみ合い、張り合ったのだ。体力は限界に達し、今は栄養補給も兼ねて
律に言われた通り、命の面倒を見るため、更には学校案内も兼ねて学食へと向かっているのだ。
「つかよぉ。何で俺らこんな初日から張り合ってんだ?」
「知らないよ……私だって、別にアンタともめたいわけじゃないよ。普通に生活したいだけ」
「そうか……じゃ、もうめんどくさいから休戦な」
「うん。私も流石に疲れたよ。ま、改めてよろしくね。えっとアンタ名前何だっけ?」
「千島蒼二だ。んで、後ろからこっそり見てる馬鹿は千島遥緋。俺の双子の妹」
「よくあんな尾行の仕方でバレてないと思ってるよね。私は天美命。よろしく」
二人は振り向かずにガラス越しに背後の物陰から顔を出している遥緋を睨みつけると、学食へ向かった。
食券の買い方や、お勧めメニュー等を紹介していると、何時もの面子が白々しい顔でやってきた。
「よぉ、もうかくれんぼは終わりか」
若干の怒りを込めて蒼二が遥緋に言うと、遥緋は目を逸らして口笛を吹いた。どうやらバレてないと
思い込んでいたらしい。由加も神璽も目を合わせない所から、同様なのだろうと判断した。
すると神璽が一歩前に出て、命にどこからともなく取り出した花束を渡した。
「俺、榛名神璽。16歳。身長178センチの今一押しのラッキーボーイさ。
人は俺の事をこう呼ぶんだ。舞浜の白き貴公子と。というわけで、今日の放課後どっか行かない?」
一気に周囲の空気が悪くなった。命は笑顔を引きつらせ、
「うん。学校終わったら病院行こうか」
「っしゃあああああああ!! 病院で何する? はっはーん。わかったぞ、お医者さんごっこだな!」
ビシッと指を突きつけ神璽は楽しそうに小躍りした。それにイラっときたのか、由加が神璽を蹴り飛ばす。
哀れ神璽はラグビー部の先輩方の群れに激突、玉砕、おばちゃん先生を押し倒し、悲鳴が学食に響いた後、
体育教師に拳骨をくらって生徒指導部屋へと引きずられていった。それを見て命は、
「台風みたいな人ね……」
と呟く。その場に居た全員が同意を示した。そして、場の空気をとりなすように遥緋は言った。
「とりあえず、天美さんの歓迎会も兼ねて皆でお昼食べようよ」
「賛成。天美さんもいい?」
「ええ、いいですよ」
先程までとは違い、優しく命は微笑んだ。そして、皆で食券をカウンターに出しに行こうとすると、
ドタドタと足音が聞こえた。見ると、長い黒髪の女子生徒が猛スピードへこちらへ向かってきていた。
「あ、」
「秋月先輩!?」
彼女の名前は秋月罪歌。とんでもない名前を持つ、蒼二達の所属する図書部の部長である。
ちなみに由加も神璽も一応は部員であった。春に勧誘されて入って以来の付き合いになる変な先輩は、
よっぽど急いでいたのか、ぜぇぜぇ息を吐きながら蒼二の手を掴むと、
「全員ついてきなさい!」
といい、再び猛スピードで走り始めた。罪歌は力が強いので蒼二はなすがままに引っ張られていく。
それに由加が仕方ないとばかりに続き、遥緋は命をチラリと見た。そして、
「天美さんもくる?」
「いいの?」
「勿論。あの人達何しでかすかわかったもんじゃないからさ。協力してくれるかな?」
「うん!」
命は強くそう頷くと、遥緋と共に蒼二達を追いかけ始めた。
●
そして、五人は図書部の部室である、屋上入り口付近のとある一角に辿り着いた。
雑多に本が積まれており、中心には五人は座れそうなぼろっちいソファーが二つとパイプ椅子がその辺に
立てかけられている。罪歌は本以外を蹴飛ばしてようやく止まると、蒼二の手を離した。
「蒼二、ついに解読したわよ!」
「ま、マジですか。それ、昨日言ってた本物らしい魔道書っすよね」
「そうよ。昨晩ずっと寝ないで解読し始めて、さっきようやく解読に成功したってわけよ!」
罪歌のテンションは高い。見ると、髪はボサボサで目の下にもクマがある。
本物の魔女みたいだ。と蒼二は思ったが、本気で殴られそうなのでそっと心にしまった。
それと同時に、由加が部屋に入ってきて最後に遥緋と命が入ってきた。罪歌は見ない顔の命を見ると、
「貴女、本は好き?」
と聞いた。命は暫く黙って俯いていたがようやく顔を上げる。何故か、その表情は赤い。
「実は、舞川舞さんとか結構……」
「はっはん、なるほど。あの恋愛小説の神様のような人ね。良いわ。良いわよ。
というわけで、遥緋。彼女の入部届けを本日四時までに律先生に出しておきなさい」
「わ、私まだ入るとは……」
命が抗議の声を上げたが、もう既に罪歌は聞いていなかった。持っていたぼろっちい本を高く掲げ、
とても良い笑顔で、最高に不吉な事を言い放った。
「じゃ、魔道書の実験を始めるわよ」
「先輩。また危険な実験ですか? だったら人柱に神璽を連れてこないと」
「それは好都合ね。今回は恋愛関連の魔道書だから。彼が居たらしょうもない結果になるわ」
恋愛の魔道書。それを聞いてその場に居た蒼二以外の人間全てが様々な反応を見せた。
蒼二は冷静に、罪歌が何時になくテンションが高いという事を冷静に観察していた。
「んで、恋愛のどんな魔道書何ですか?」
「あ、それわかんなかった。とりあえず、呪文だけはわかったのよ」
「それ、凄い危険なんじゃ……」
「だから、蒼二に使って貰うんじゃない。あんた、恋愛なんてこれっぽっちも興味ないんでしょ?
だったら、良い機会よ。そういう人間には全く聞かないらしいし、あんたもちょっとは青春ぐらいしなさい」
「はぁ……」
「もしかしたら、蒼二にも恋ってものがわかるかもね」
その言葉がダメ押しだった。何処かよそよそしい笑顔で遥緋と由加までもが使用を薦めたのだ。
その真意に気づかず、蒼二は自分がそこまで浮世離れした人間だと思われているのかとショックを受けた。
でも、表には出さない。罪歌からぼろっちい本を受け取り、
「あqswでfrtgyhじゅきぉって唱えなさい」
「無理っす」
罪歌の拳が炸裂。蒼二は痛みに耐えながらぼそっとした声で、先程の呪文を唱えた。
正直、魔道書と言われてもそこまで信じてはいなかった。ただ、罪歌とこうやって本について語り合うのが
蒼二は好きなのだ。で、今回も失敗して由加と神璽と遥緋と一緒に馬鹿話をまたするというのが日課だった。
だが、今回は違った。本が本当に黒い光を放ち、ブルブルと震えだした。
「成功だわー!」
罪歌が歓喜の声を上げるが、蒼二には笑えなかった。本は振動を超え、バタバタと動き始めているからだ。
ついに、蒼二の手から本が離れた。本は華麗に部屋の中を飛び回り、最後にページを開くと蒼二の顔に張り付いた。
「うべっ!」
そして、本はすぐに蒼二から離れたと思うと、そのページの中から何と女の子が窮屈そうに出てきた。
初対面だろう。見た事が無い。だが、蒼二は彼女を知っていた。覚えていないが、知っていた。
「毎度御召還ありがとうございます。私、恋愛を司る神、アカネと申します。あらあら、随分と懐かしい顔が揃ってますね」
この日から、再び始まった。
蒼二と遥緋の忘れ去られた過去。覚えていないのに知っている恋愛の神、アカネ。
春が終わり、夏が始まろうとしているこの季節。蒼二の明日は何処へ向かう──
緋色の眼~LOVE×LIKE×LIFE~ ──今、始まる。
※続きません。
評価
ポイントを選んで「評価する」ボタンを押してください。
ついったーで読了宣言!
― お薦めレビューを書く ―
※は必須項目です。
+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。