春眠暁を覚えず
俺日付を覚えず
処処啼鳥を聞く
隣の山田に訊く
夜来風雨の声
山田の驚き顔(口が半開き)
花落ちる事知りぬ多少ぞ
明日が始業式とは初耳だぞ
「山田ぁ!マジかよ?」
「マジも何も常識だろ!おまえ何年学生やってるんだ。」
「2…2年?」
あ、でも俺4月から3年生だし…。学生3年目か?
「義務教育も計算に入れろっ!」
そっか、俺高校生だ。…プラス9年で…
「真剣に悩むなっ!」
…だって俺、計算苦手だし。まだ高校2年目か3年目かが解決してねぇし。
『シューーート!』
観客が沸く。
「よっしゃあぁっ!」
山田が拳を天に突き上げる。
あ、マネージャーから勝利の笑顔貰いやがった。
俺と話しながらちゃっかりロングシュートを決めるなんて…器用なヤツは見ていて腹が立つ。
よぉし、腹いせだ。
『ブチッ』
「っておい!何するんだよ?」
「つまらねぇ。…俺、帰る。」
くるりと背を向けると、たちまち山田が足にまとわりついてきた。
やっぱ、俺がいないと困るとか?仕方ねぇなぁ…。
「分かったよ。もう少し居といてやる。」
「いや、別に帰ってもいいけどよぉ…」
な、何っ!?俺は必要とされない人間なのか…?
俺らの友情ってそんなもんなのか?山田、おまえは会社が経営不振に陥ったらさっさと社員をリストラするタイプだろっ。
「川井。」
はい?川井とは俺の名字ですが?
「口が半開きだ。」
マジで?
俺が半開きの口を慌てて閉じると、山田がさっきの続きを喋った。
「勝手に帰るのはいいけど、勝手に電源を切るなっ!」
「いてっ!」
ゲームのコントローラーって、打ち所によっては凶器になるって知ってた?
「山田ぁ、俺を殺す気か?」
「いっそ死んじまえっ!」
って、ケーブルで絞めるなっ!この使い方は最も重罪だぞ。
こうなったら正当防衛だ。
腕を伸ばしたら、たまたま固いものにぶつかった。引き寄せてみる。殴るには十分だ。
「これでも食らえ。」
しっかり山田を引き付けて、顔面に高速パンチ。物で人をぶつのはよくないが、これくらいしないと、俺が殺られちまう。
ドンっ!
鈍い音がして、山田が引っくり返った。顔に政経の資料集が乗っかっている。
政経の資料集…?
ここで生まれた一つの疑問。
「なぁ山田。その本、どこから持ってきた?」
「く〜っ!いってぇ〜。」
高速パンチの感想はどうでもいいから、質問に答えてくれよ。
部屋を見渡せば更に驚き!政経の教科書はもちろん、新編理科総合Bやら日本史まであるじゃあないか!山田、おまえは生物兵器を作りつつ、日本の地理を攻略して、汚い政治家になって日本を征服するつもりだな?…いや、おまえは平気で友をリストラするヤツだ。だから、日本だけにとどまらず…
「…い、川井!」
俺が日本の行く末を心配している間に、未来の悪どい政治家が新編理科総合Bを取りあげた。
政治家の前に、まずは悪の生物学者か?
バシッ!
強烈な平手打ち!と、思いきや、教科書で叩きやがった。背表紙(の角)がこめかみ直撃だ。もろにダメージ。
教科書も使い方によっては凶器じゃねぇの?
「俺の教科書に触んじゃねぇ。」
俺の=山田の、だよな。これで一つ、確認は取れた。問題は…
「3年の教科書なんて、どこで手に入れたんだ?」
もしや、闇市?やっぱりコイツは悪の…
「教科書販売日に買った。」
へぇ、闇市に教科書の特売日があるんだぁ。
「…学校で。」
はい?
「川井、口が半開き。」
そりゃ半開きになるワ!俺は初耳だぞっ!
「なぁ山田、買い忘れた人はどうすればいいかなぁ?」
「自分で買いに行くしかねぇだろうな。」
そ、そんな他人事だと思って!
「山田ぁ、おぉ心の友よ!助けてくれ!」
「別に良いけどさ…
…一昨日貸した宿題、返してくれよ。」
宿題!?
まだ『春眠』しか答え写してねぇよ! |