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偽・竹取物語
作:白山菊理



燕巣スープ?いや、子安貝。石上の中納言(一)


 さてさて、中納言石上麻呂足何て言う長ったらしい名前の持ち主が頼まれたものは「燕の子安貝」でした。こんな漢字ばかりの名前もややこしいので石上の中納言と呼ぶ事にしましょう。
 石上の中納言は「燕の子安貝」と聞いて、

―なんか簡単そうだなー。子安貝って安産のお守りだったような…はっ!?もしかして僕に気があるからこのようなものを頼むのでは!?―

なんて思っていました。
石上の中納言は酷い妄想壁があるようです。
他の貴公子達と同様、自分で動くのは億劫なので、家来のいる所へ行き

「あのさ、燕が巣を作ったら僕に教えて欲しいんだけど」

と言いました。
家来達はそれを聞いて首を傾げて

「何にお使いになるんですか?日本で取れる燕の巣はスープには出来ませんよ?スープにするのは種類の違う燕のようですから……」

「違う!違う!」

家来の言葉を聞き、石上の中納言は首を大きく横に振りました。

「ち・が・う・の・!!いいかい?僕の丈夫な子を産もうとしている人がいるんだよ!是非ともその子に燕の子安貝を取って持って行ってあげたいんだよ!」

と、妄想をたっぷり練りこんだ説明をしました。
家来達は、

―あぁいつもの妄想が始まったよ―

と思いつつ、せめてもの慈悲で石上の中納言に燕の子安貝なんてあるわけが無いという事を教えてあげることにしました。

「いいですか?たとえ燕を殺しても何処にも見当たらないものなのですよ?子安貝というのは。子供を産む時に何処から子安貝をだすのでしょうか?」

「そうです、それに噂によると人が見ようとすると無くなってしまうとか」

そんな微妙に遠まわしな説得をしている最中に、偶然家来ではないけど面識のある人が通りがかりました。

「何の話ですか?おや燕の巣?もしやスープに…え?違う?子安貝をお探しなんですね。そういうことでしたら、諸国から集められた米や穀物を扱う役所の炊事場の建物のところに毎年沢山の燕が巣を作るところがあります。家来達に頼んで見張らせておけば、よろしいでしょう。沢山の燕ですから、子を産まないということはないかと…」

と言いました。
それを聞いた石上の中納言はぱぁっと目を輝かせ

「ナイスアイディーア!!いいよ、それグッドだよ!!いい事教えてくれたよ!!」

と、喜ぶのでした。
家来達の説得も通じることなく、石上の中納言は他の家来達を20人くらい呼び寄せて「ちょっと、これこれこういう事情なんだけど行って来い」ということで遣いに出しました。

 家来達は足場を組んだものの、そのあまりの高さに怯えてしまい、誰一人巣の中を覗こうとは思いませんでした。
有るか無いか分からないものの為に危険なことをするなんて誰だってやりたくありません。
そんな事は露知らず、石上の中納言は「取ったか?子安貝取れたか?」としつこいくらいに屋敷から遣いを出して聞いてきます。
家来達はどうしようかと迷った挙句

「そんなこと言われても、こんなに人が居たら燕だって怯えて来ません」

と返事を出しました。
石上の中納言はこれを聞いて大層悩んでしまいました。












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