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  魔性の瞳 作者:冬泉
第二章「惑う夢」
魔性の瞳-79◆「要求」
■ヴェロンディ連合王国/王家の森(湖)

 やがて彼女レムリアは何かを決意したかのように唇を噛み締め、涙を拭う。
 しかし・・・、そうして紡ぎ出された彼女の言葉は、少しも自分の胸に響いてはこなかった。

「・・・」

 幾分冷やかな、そして、自嘲気味にも見える小さな笑みが、私の唇の端に戻ってくる。

「・・・残念だが、他の女性に興味はないな。・・・私は貴女あなたに興味を持ったのだ。私が興味を持ったのは、貴女あなたが女性だからではなく、貴女あなた貴女あなただからだ。・・・私とどこの姫君の釣り合いが取れようが、そんなことは関係ない」

『わたくしも、エリアドさまに興味がありますから──ふしだらな女でしょう?』

 艶然と笑おうと努める彼女の言葉に、なぜだか急におかしくなり、唐突に私は大きく笑った。

「あはははははっ」

 私が笑ったのをどう受け止めたのだろうか。堅い表情を浮かべながらも、彼女は平板な声で言う。

『戯れ言を申し上げすぎましたね。聞き流してくださいませ。さぁ、城に帰りましょう』

 そう言って“風の囁き”に跨った彼女の手を引き、なかば強引に馬から降ろす。
 そのまま、呆気に取られたような表情を浮かべている彼女に、

「失礼。」

 短く言って唇を重ねた。

「・・・では、“夜”もお付き合いいただきたい」

 唇の端には、小さな──しかし、不敵な──笑みが浮かんでいた。


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