■ヴェロンディ連合王国/王家の森(湖)
『涙なんて・・・枯れ果てたと思っていたのに・・・。変・・・ですわよね、わたくし・・・』
その言葉と共に彼女が見せた涙に、私は一瞬だけ言葉を失った。この意志の強い少女が、平常心を失う程に落涙しているとは・・・。
・・・しかし、私にはその涙がけして否定を意味するものではないのだろう、ということは感じられた。彼女を見つめているうちに、私の表情にも穏やかな微笑みが戻っていた。
「・・・“涙”というものは、“心”が動いた時に流れるものさ。・・・少なくとも、私の言葉は、貴女の“心”に届いたらしい・・・」
私は、そっと彼女の頭を覆うフードを下ろす。
泣き濡れてはいたが、それでも、けぶるような深い双眸が姿を現す。その黒い瞳は、自信なげに私を見上げていた。
「・・・今、答えが見つからないなら・・・、いや・・・、心のうちをうまく言葉にすることができないなら・・・、焦らずとも構わない。
・・・貴女はまだ私という人間のことをよく知らぬだろうし、私もまた、貴女のことをよくわかっておらぬ。
・・・ゆえに、互いのことをもっとよくわかるための機会がほしい。
・・・私と一緒に、旅をしてみないか?」
それは、とても当たり前のことであるかのように、自然に出てきた言葉だった。だが、その言葉を聞いた彼女の表情には、僅かながらも、影が差し込んできていた。
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