■ヴェロンディ連合王国/王家の森(湖)
「・・・いや。たぶん、私はずっと誰かに聞いてほしいと思っていたのだろう。・・・だが、話せる相手がいなかった。・・・貴女になら、理解して(わかって)もらえるのではないかと、・・・そう思えた。」
彼女の言葉に、私は言う。
「・・・すまない。私は、また貴女に、一人善がりの勝手な“想い”を押し付けようとしていたのかもしれぬな・・・。」
彼女の小さな嘆息に、私はこう続ける。
「・・・美しい想い出はより美しく、そして、苦い想い出はより苦くなるものさ・・・。もう、ずっと昔のことだ。・・・正直に言うが、私はもう彼女の名前さえ覚えていない・・・。もし本当に会えたとしても、わかるかどうか・・・。」
小さく自分を嘲笑して、服を着る。
「・・・たとえ、誰一人に理解され得ず、この世界でたった一人になるとしても・・・。私は、それをせねばならぬ。そして、その先にある場所に辿りついてみせる。・・・ずっと、そんな風に思ってきた・・・。だが・・・。」
“・・・もし、ともに歩いてくれる人がいてくれたら・・・。”
私はじっと彼女の横顔を見つめる。
それは、彼女と知り合うまでは、一度として抱いたことのない“想い”であった。
だが・・・、それが相手のことを考えぬ、一人善がりの愚かな“想い”に過ぎないこともわかっていた・・・。
ゆえに・・・。私にはそれを口にすることはできなかった・・・。
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