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  魔性の瞳 作者:冬泉
第二章「惑う夢」
魔性の瞳-64◆「応酬」
■ヴェロンディ連合王国/王家の森(湖)

 私は思わず彼女レムリアの屈託のない笑みにつられるように笑みを返す。普段よく浮かべる幾分冷やかな笑みでも、唇の端を歪めるような薄い笑いでもない。あるいは、それは何年かぶりの“心からの笑み”であったのかもしれない。

「・・・種明かしをしようか。」

そんなことを言うと、軽く握っていた左手を開いてみせる。
そこには、銀の鎖に繋がる小さな台座の上で仄かな輝きを発する一粒の真珠。

「“サイレンの真珠(pearl of the Sirines)”と呼ばれるものだ。これの宿した魔力のお陰で、私は水中でも息をすることができるし、人並み以上に泳ぐこともできる。
 ・・・まぁ、なくても人並み程度には泳げるつもりだが・・・。けれど、正直に言って、あるとなしとでは大違いだろうな。
それに・・・」

 いたずらっぽい笑みを浮かべてスッとレムリアの傍らに近づくと、彼女の手を引いていきなり水中にもぐる。
 そう、手の届く程度の範囲であれば“真珠”の魔力は周囲にも及ぶ。

「・・・気分はどうかな? なかなかこんな深いところを自由に泳ぐ機会はなかっただろう?」

               ☆  ☆  ☆

“こんな表情も、出来るのね”

 軽い驚きを感じる。エリアド「の第一印象から考えると、想いも寄らぬ事だった。

「ずるいわ。」

 だから──思いもよらぬことながら、自然な感想が口をついてでてしまう。
 相手に顰めっ面をしてみせると、手を振り解いて身を翻す。

「浜に向かって、競争っ!」

 一声掛けると、抜く手を切って泳ぎ出す。スピードには自信がある。例え魔導具を使われても──負けはしない。


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