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  魔性の瞳 作者:冬泉
第二章「惑う夢」
魔性の瞳-61◆「心鎧」
■ヴェロンディ連合王国/王家の森(湖)

 透き通る様な湖水の水は、気持ちの良い冷たさで肌に心地よかった。
 どの季節でも、ここの水温は一定で変わらない──それは、この湖水と周囲を取り巻く森が、いにしえからの魔法で守られているからであった。

レムリアは抜き手を切って湖岸から大分先まで泳いでいくと、振り返って岸に残したエリアドに呼びかけた。

「エリアドさま! あなたもいらっしゃいませんか!」

莫迦なことを――自分の行動をそう思うこともある。
 傍目で見れば、未婚の女性、それも高貴の出である自分が、初見の相手に肌を晒すなど、正気の沙汰ではなかった。相手は、さぞかし呆れていることだろう。

 レムリアのこのような突飛な行動はしかし、今に始まった事ではなかった。彼女は、しばしば世間の常識では計り知れない行動を取る。超然と構えているように見えるその態度も、“魔性の瞳”という得体の知れない力も、レムリアを一層人々から遠ざける方向に働いた。

“理解されないものは仕方がない”

 レムリアも、この頃はそう思う様に自分を律してきた。
 理解こそされないが、それが結果として人々の為になるのであれば、自分の行動には意味がある、と。
 世間から、人々から弾き出されてしまった娘が、その哀しい経験から止む無く覚えた心の自衛手段だった。そうでなければ、人々のくちさがない誹謗中傷にレムリアの繊細な心はとうに壊れてしまっていただろう。


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