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  魔性の瞳 作者:冬泉
第二章「惑う夢」
魔性の瞳-55◆「希望」
■ヴェロンディ連合王国/王都シェンドル/宮殿/正面玄関

 レムリアは自分の馬の脇腹をそっと撫でると言った。

「“風のささやき”(WIND WISPER)が名前です。その名の通り、音もなく、風のように走ります。・・・国王陛下から、賜りました。」

 その口調は、嘆息たんそくをするかのようだった。
 想いを吐露とろ仕掛けた自分の弱い心を叱咤すると、気を取り直すように笑顔を浮かべた。

「ふむ。・・・“風の囁き(WIND WHISPER)”か。似合いの名かもしれぬな。・・・君もよろしく頼むよ。」

 エリアドは呟くように言うと、二頭の馬の鼻面をそっと撫でる。
 そして、彼女レムリアが“風の囁き”に乗るのに手を貸しながらこう続けた。

「・・・このあたりの道はあまり詳しくないので、案内をよろしくお願いする。」

 エリアドは彼女レムリアに続いて“月光”に乗ると、彼女の横に馬を並べた。

「行きましょう。」

 想いを断ち切るかのように言うと、レムリアは“風のささやき”の促してゆっくりと進み始めた。
 その胸中には、まだ先ほどのエリアドの言葉が渦巻いていた。

『私にはむしろ貴女あなたのような女性ひとの方が好ましく思える』

“そんなこと・・・”

 自分が他人に魅力的に映るなど、レムリアには信じられない事だった。これまで、“魔性の瞳”と忌み嫌われ、近づいてきた者も自分の地位にの興味が有った――

“でも・・・”

 でも――もしかすると、今までとは違うかも知れない。
 仄かな希望を胸に、レムリアはエリアドを伴い、宮殿を後にした・・・。





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