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  魔性の瞳 作者:冬泉
第二章「惑う夢」
魔性の瞳-54◆「乗騎」
■ヴェロンディ連合王国/王都シェンドル/宮殿/レムリアの居室→正面玄関

 女性の着替えというものには、それなりに時間が掛かるものが普通だが、エリアドが玄関につくと、レムリアはすでに支度を終えて待っていた。

「・・・これは失礼致した。女性の着替えというものには時間がかかるのだろうという先入観にとらわれて、少しのんびりし過ぎたようだ。お待たせして申し訳ない。・・・妙な先入観にとらわれぬよう、気をつけねばならぬな。」
「お気になさらずに。不調法ゆえ、支度も早いのでしょう」

穏やかな表情で、レムリアはさらりと言った。

「・・・少なくとも私には、貴女あなたが不調法であるとは感じられないな。・・・まぁ、たしかに、この王宮にいる他の御婦人方と比べれば、いろいろと違うところはあるのだろうが、そうした点に関して言えば、私にはむしろ貴女あなたのような女性ひとの方が好ましく思える。・・・まぁ、それは単に、私の好みの問題なのかもしれないが。」

 エリアドは薄く微笑わらって言った。
 レムリアはちょっと小首を傾げながらも、口元に小さな笑みを浮かべて聞く。それ以上、装いの事には触れず、連れてきた二頭の馬をエリアドに指し示した。

「・・・良い馬のようだ。お貸し戴けるとはかたじけない。・・・遠乗りに戦馬を連れ出すのも無粋に思えて、正直どうすべきか迷っていた。お気遣いに感謝する。
 ・・・彼ら(馬)の名前を教えてもらってもよろしいか?」
「この馬は、“月光”と申します。エリアド様によく合う名前だと思い、選びました。お気に召されましたか。」
「ふむ・・・。“月光”か。良い名だ。・・・今日は、よろしく頼むよ。」

 エリアドはレムリアから手綱を受け取ると、スッと手を伸ばして、たてがみを静かに撫でる。

「よろしければ、貴女あなたの馬も紹介してもらえぬか。」


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