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  魔性の瞳 作者:冬泉
第二章「惑う夢」
魔性の瞳-53◆「迷想」
■ヴェロンディ連合王国/王都シェンドル/宮殿/レムリアの居室→正面玄関

 館の玄関へと向かう廊下の途中。エリアドはふと立ち止まり、窓の外に広がる空を見た。北国特有のどんよりした曇り空の切れ間から、ところどころ青い空が顔をのぞかせている。

“・・・私は、いったいここで何をしているのだろう・・・”

 エリアドは思った。

“・・・けして、この国に長くとどまるつもりはなかった。ふとした経緯いきさつから、奈落の淵に囚われているのを助け出すことになったアーサー・フリヨンディという人物をこの国に送り届けたら、私はすぐにでも旅立つつもりでいたはずだ。
 ・・・にも関わらず、その戴冠式を見届けた今も、私はなぜかこうしてこの国にいる・・・”

“アーサー・フリヨンディという人物の人と為りに惹かれて、というわけではないのは確かなことだ。むろん、かの御仁のまとうオーラにも似た強烈なカリスマに、何も感じるものがなかったわけではないが、どちらかというと人嫌いの気のある私は、それほど彼と親しく話したことがあるわけではなかったし、何よりかの御仁は、私には眩し過ぎた。
 そうしたわけもあって、それが実際に受け入れられるかどうかはまた別の問題として、私はかの御仁に剣を捧げてはいなかったし、また捧げるつもりも持ってはいなかった”

“・・・ならば、なぜ私はここにとどまっているのだろう・・・”

 しばし空を見上げ、エリアドは小さくため息をついた。

“・・・考えても、わからぬものはわからぬ・・・か”

 エリアドは気を取り直すと、館の玄関へと向かった。


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