ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
  魔性の瞳 作者:冬泉
第二章「惑う夢」
魔性の瞳-44◆「提案」
■ヴェロンディ連合王国/王都シェンドル/宮殿/レムリアの居室

 いつの間にか、言葉が途絶えていた。見つめ返す瞳はその眩い輝きを失い、代わって、深い深淵がその姿を垣間見せていた。

「退屈・・・させてしまいましたね。」

 その言葉は、自然と零れ出たかのようだった。小さく溜息を付くと、心持ち肩を落とし、視線を窓の外に振る。

「・・・それに、お気も悪くさせてしまいました。こちらからお誘いしましたのに、本当に不調法なことですね。大変失礼しました。」

 丁寧ながら、どこか他人行儀な口調だった。その白い横顔には、何の感情も浮かんでいない。

「今朝は、お付き合い下さってありがとうございました。一人で朝を食べるのに退屈してましたので・・・ご気分、ご都合も考えずに短慮に走ってしまいました。」

 向き直ると、ゆっくりと頭を下げた。

「・・・いや、貴女あなたが謝る必要はない。私の方こそ、招待していただいたにも関わらず、貴女あなたの気持ちも考えず、自分の想いに囚われてしまっていた・・・。謝らなければならないのは、むしろ私の方だ。」

 私は低い声で言った。

「・・・申し訳ない。・・・私にとってこの国は、良くも悪しくも、普段は心の奥底に眠らせているいろいろな想いが掻き立てられる場所なのだ。・・・けして、それを言い訳にするつもりではないが、そのせいで貴女あなたの気分まで悪くさせてしまったことは、本当に申し訳なく思う。
 ・・・どうやら、私は自分の気になることがあると、そこから思考が抜け出せぬ性質たちらしい。せっかく、貴女あなたの方から声をかけていただいたというのに、私は気の利かぬ男だな・・・」

 ふぅとため息をついて、少し口調を変える。

「・・・気晴らしに、と言っては何だが、もし貴女あなたさえよろしければ、どこかに遠乗りにでも出てみないか?」


+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。