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  魔性の瞳 作者:冬泉
第一章「舞踏会」
魔性の瞳-39◆「仮面」
■ヴェロンディ連合王国/王都シェンドル/宮殿/奥の部屋


「・・・同情ではない。私がいかに貴女あなたを理解したいと望んでも、私は貴女自身あなたではありえないのだから、貴女あなたと同じ想いなど抱けようはずもない。・・・本当の意味で同情など、できようはずもないのだ。」

 私は感情を無理やり抑えた低い声で言った。

「・・・しかし、私はそれでもそう想わずにはいられなかった。ただ、それだけのことだ。・・・そのような私の想いが貴女あなたを苦しめてしまったのなら、今はすまないと謝ることしかできないが・・・」

 少し躊躇いながらこう続ける。

「・・・私は、光の下で貴女あなたの仮面の笑顔を見るよりも、闇の中であっても貴女あなたの本当の顔を見ていたい・・・。」

 薄闇の中、少しだけ間を置いて、私は彼女レムリアの顔をもう一度じっと見つめる。

「・・・だが、貴女あなたがそう望むのなら、今宵は引き取ろう。」

 ゆっくりと扉へ向かう。

「もし貴女あなたが望むなら、私は・・・」

・・・私に(彼女のために)何ができるのだろう。

 それは、私がそれまでに感じたことのない“想い”であったことは間違いない。

               ☆  ☆  ☆

「・・・明日の朝。陽の光の元で、またお逢いしましょう・・・」

 その囁くような声は、相手に聞こえたのだろうか。
 ゆっくりと頭を下げると、レムリアは黙って相手が部屋を立ち去るのを見送った。
 パタンと小さく音を立てて扉が閉まると、ほっと溜息を付く。

「闇の中の素顔・・・ですか・・・」
 
 その言葉に他意が無いことを頭では理解していたが、それでも相手のの言葉が小さな棘のように、じくじくと心を苛んだ。

「わたくしは、わたくし以外の者になろうと思ってはならない・・・そう言うことなのでしょうか?」

 その独り言を聞いた者は、誰もいなかった・・・。



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