■ヴェロンディ連合王国/王都シェンドル/庭園→宮殿/奥の部屋
夜が更けていき、空の雲も散ってきていた。
闇に輝く宝石が如く、白く、蒼く、紅く・・・星々が夜空に煌めいている。
星明かりの差し込んだ部屋は、静けさの中にまどろんでいた。
部屋の中央に置かれた天蓋の付いたベッドに、白い姫君は静かに横たわっていた。その表情は陶磁器の様に白く、儚げだった。
予め、申し送りがあったのだろう。侍女が扉を開けてエリアドを中に通すと、一礼して静かに扉を閉め、控えの間に下がった。
後は、静寂だけが残された。
「・・・」
ただ己の心の示すままこうしてここまで来てはみたものの、目の前で横たわる彼女に、いったい何と声をかけてよいものやら皆目見当もつかず、私はただ逡巡するのみであった。
ただ黙って扉のところで立ち尽くす。
「・・・起きておられるか?」
我ながら陳腐な言葉だと思いはしたが、しばしの沈黙の後、私の口をついて出てきたのは、そんな言葉に過ぎなかった。
「・・・はい・・・」
静かな、澄んだ声。
しかし、感情の欠片も込められていない声。
白い姫君は、ベッドの上で身動ぎもせずに、じっと天蓋に虚ろな視線を向けていた。
「・・・わたくしに、御用・・・でしょうか・・・?」
彼女は、感情の欠片も感じさせぬ声で私に応じた。しかし、それはけして彼女が何も感じていないことを意味するわけではない。おそらくは驚くべき自制心によって自らの心を押し殺しているのだろう。私にはそんな風に思えてならなかった。
残念ながら、彼女が何を感じているのかまではわかりはしなかったが、このような時にさえ(いや、このような時だからこそ、なのか)自らの心を押し殺してこらえようとする彼女が不憫でならなかった。
「・・・貴女に会いに来た。・・・もし迷惑でなければ、しばし貴女の傍にいる許しをもらえまいか。」
私はやや躊躇いがちに、そう問いかけた。
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