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  魔性の瞳 作者:冬泉
第一章「舞踏会」
魔性の瞳-29◆「自壊」
■ヴェロンディ連合王国/王都シェンドル/庭園

「あなたが、誰であるかはわかりました。しかし、我々がこちらに参ったとき、確かにあなたはエルド男爵に襲いかかっていた。これをどう説明されるつもりか?」

 騎士達は、その長剣こそ切っ先を地面に向けていたが、油断無くエリアドの動きを警戒している。

「私を殺そうとしたんだ!」

 ここぞとばかりに、エルド男爵は声高に相手を非難する。

「“殺すつもりはない”とか言っているが、とんだ詭弁だ! みよ、私のこの有様を! 貴公らも、先程アヤツの殺意を感じたであろう! 早く、この犯罪者を拘束してくれ!」

「・・・それにしても、『酔い覚ましに奥庭を散策していたら、いきなり襲いかかってきた』・・・とは。ずいぶんと大胆に省略した説明だな。」

 男の言葉を思い出して小さく嘲笑わらう。

「・・・その男は、自らの愚かしい言動にふさわしい対価を払ったに過ぎぬ。」

 私は静かに言った。

「・・・いや、ふさわしいかどうかは、まだわからぬか。いずれにせよ、それが嫌なら言動を選ぶのだな。私は面と向かって侮辱された時、それに耐えることには慣れていない。」

 彼女レムリアの姿が消えているのが気になった。気にならぬはずがない。一切の痕跡を残さぬその消え方には、魔導の匂いさえ感じられる。
 問題は、その魔導を使ったのは誰かということだ・・・。
 彼女自身か、それともこの愚か者の関係者なのか。あるいは・・・。
 しかし、その時の私は、それを確めるすべを持たなかった。

「・・・剣を抜かなかったのは、アーサー新王陛下に対する敬意ゆえだ。だが、不満とあれば、いつでも相手になろう。忘れるな。私とて、まだ不満は残っているのだからな。」

 冷やかにそう言うと、冷たい闘気をまとったまま、警邏の騎士たちを見る。

「・・・で、貴公らとしてはどうするつもりだ?」

 これで、ある程度、警邏の騎士たちの質が見えてくる。
 私はもう一度、冷やかに笑った。

「ソヤツの戯れ言に耳を貸すんじゃない! 貴公等っ! 己の職務をはたすのだ!」

 口角泡を飛ばす、そんな表現がまさにぴったりの状況だった。
 先程の“小競り合い”で着衣が乱れ、おまけに顔を真っ赤にした酷いご面相で、二人の中間に割って入る騎士達の表情にも、微かに呆れた様な色が見えていた。

 
 エルド男爵との精神戦闘(笑)も佳境です。あと三回でシーンが変わります。


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