■ヴェルボボンク子爵領/子爵館/庭園
「あれから一年・・・。私の中で、何が変わっただろう・・・」
意識せずに、レムリアは声に出していた。誰も聞いてはいない。誰も聞くはずがない。早朝の庭園には、レムリア以外の誰の姿もなかった。
「私は、自分の何を変えられたのだろう・・・」
これまで、繰り返してきた問いがまた心に響く。
「何も変わってなんかいない。何も、忘れてはいない・・・」
習慣にもなってしまった自問を繰り返す。心に浮かぶ問いかけに、自然と想いが言葉となって零れてくる。
──わだかまっているの?
「・・・えぇ。許したいのだけど・・・」
──忘れられないの?
「・・・えぇ。忘れたいけれど・・・」
──どうしたいの?
「・・・判らない・・・」
子爵や子爵の友であるラルフ、テッドは、レムリアにとても優しく、良くしてくれる。ヴェルボボンク子爵領の誰も、レムリアを悪し様に言うものはいない。
「・・・」
それでも、レムリアは孤独だった。誰にも理解されない。誰にも理解できない。受け入れる人も、受け入れられる人も・・・誰もいない。
「私は・・・おかしいの? 私だけ、普通の人とは違うの?」
堂々巡りの考えが、また出口の見えない闇の中で行き惑う。
折からの涼風が、庭園に漂う朝靄を吹き払っていく。幻想的な庭園を包むベールが消えてゆく。もうすぐ、館の人たちが起きだしてくるだろう。部屋にいないと、お付きの女官が慌てて自分を捜すだろう。
レムリアは溜息をつくと、踵を返して部屋に歩いて行く。そして、また新たな長い一日が始まる・・・。
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